調達・供給
需要を予測するには?
「AIで需要は当たる」の実測は、単純な目安に勝てた人が7.5%だった
M競技という公開の実測がある。2018年の論文はM3競技の月次1,045系列で機械学習が統計手法8種に全期間で劣ったと報告し、同年のM4では複数手法の組み合わせが上位を占めた。機械学習が上位に立った2022年報告のM5でも、いちばん強い単純な目安を超えられたのは7.5%だけだった。
在庫を最適化するには?
在庫の「最適量」を出す式は、著者自身が「これは仮の数字だ」と断っていた
EOQは√(2DS/H)で最適な発注量を出す式とされる。だが1990年にOperations Researchが復刻した1913年の原典で、著者ハリスは在庫維持費10%も単価一定も仮の値だと書いていた。最適なのは式ではなく、仮に置いた費用構造の下での最適である。
欠品を防ぐには?
最適なサービス水準は、切らす費用Cuと売れ残る費用CoからCu÷(Cu+Co)で決まる。だが分子のCuは、2006年のManagement Scienceの論文が測りにくいと明言する量である。世界調査では切らした客の約4割が店の外へ出て、その需要はPOSに記録されない。
過剰在庫をなくすには?
「在庫は悪」の線は、実測すると途中で折れて、減らしすぎると業績が下がる
2011年にJournal of Operations Managementへ出た論文は、リーン度と業績の関係が上に凸で、54業種の約3分の2で最適点があり、それを超えて減らすと業績が悪化すると実証した。滞留在庫は道徳問題ではなく、取得原価と回収見込みの低いほうで評価する会計事象である。
良い仕入先を選ぶには?
2003年の Journal of Purchasing & Supply Management 9(5-6) の論文は、1983年に Harvard Business Review へ出た二軸の枠(利益インパクト×供給リスク)の測定問題を文献横断で整理し、重み付けは実装の要でありながら主観的だと述べた。区画を判別できなければ分類も推奨も恣意的になる。ただし同論文は、経験ある実務家がこの批判に対処していることも認めている。
仕入先と共に強くなるには?
2011年の Journal of Operations Management 29(6) の研究は、社会関係資本と成果の逆U字を報告した。明るい側(協働の正の効果)は既存の文献のとおり確かめられ、暗い側(過剰な近さの害)が付け加えられた。1996年の自動車産業の実証や関係にもとづく見方は明るい側を支えるが、深めるほど良いとは言っていない。
調達コストを下げるには?
1995年の International Journal of Physical Distribution & Logistics Management 25(8) の論文は、総保有コスト(TCO)を価格の先を見る方法と定義し、11社の事例でそれが仕入先の選定と評価に使われることを示した。2009年の研究は、有効な集約契約があるのに現場が契約外で買うマーベリック購買を探り、集約の価格の節減が実現しない形を明らかにした。
調達先を分散するには?
2006年の Management Science 52(5) の解析は、途絶対策が在庫・信頼できる一社からのシングルソース・受け入れの一つに絞られること、最適戦略が稼働率と途絶の性質で決まることを示した。1998年の事例研究では単一調達の部品が火災後およそ二日で回復し、複数調達でも上流を共有すれば相関が残る。この単位は災害や国際情勢を予測しない。
供給網の全体を見渡すには?
2002年の Journal of Operations Management 20(5) の研究は、中央コンソールという一部品の完全な網を、ある自動車メーカーの3つの製品ラインで描き、費用への配慮が構造を形づくる最大の力だと報告した。2015年の Journal of Supply Chain Management 51(1) の研究は、網の位置ゆえに重要になる結節点の仕入れ先が多層の網のどこからでも現れうると示した。業界調査の「一次の先まで見える企業はごく一部」という数字は、可視化できていない証拠であって、道具で解決できる証拠ではない。
供給の滞りに早く気づくには?
1995年の Ergonomics 38(11) の心理実験(学生138名、航空機警報の模擬)は、約90%の人が応答率を真の警報の見込みにマッチさせ、全部には反応しないと報告した。2013年の Journal of Operations Management 31(6) の研究は、協働的な計画・予測・補充の効果が学習曲線を描くと示した。監視に映るのは自分が受け取る側の下流の指標で、滞りの源はしばしば見渡せない上流にある。
供給リスクに備えるには?
2008年の Risk Analysis 28(2) の研究は、典型的なリスクマトリクスがランダムに選んだ危険の対の1割未満しか正しく比較できず、負の相関の領域ではでたらめより悪い判断へ導きうると報告した。2014年の SPE Economics & Management 6(2) の研究は、順位が区切り方という恣意的な選択に依存すると示した。ISO 31000は認証規格ではなく指針で、リスクマトリクスを義務づけていない。
需給を合わせ込むには?
2012年の International Journal of Production Economics 138(1) の体系レビューは、271本を集めても業績への効果を推定した研究は相対的に少なく、成熟度・測定・業績に統一された枠組みが無いと総括した。2021年の Review of Managerial Science の研究は、292本をレビューし、実証はまず実務者に得られ学術は近年追いかけたと報告した。成熟度モデルの出所は探索的研究や実務誌である。
調達の不正を防ぐには?
1993年の Journal of Political Economy 101(3) の研究は、州の高速道路工事の入札で、談合が一社の本命と複数の「偽の高値」で構成されていたと報告した。2022年の同誌の研究は、日本の国が発注した建設約42,000件のうち約37%が、競争的でない挙動の業者に落札されていたと推定している。
調達で社会的責任を果たすには?
2007年の ILR Review 61(1) の研究は、ある大手スポーツ用品企業の51カ国・800超の工場を1998〜2005年に追い、監査だけでは限られた成果しか出なかったと報告した。2016年の Strategic Management Journal 37(9) の研究は、17,000件近い監査で、監査費用を被監査側が払うと報告される違反が減ると示した。
契約と発注を確実に回すには?
詰めても、契約には必ず余白が残る。発注はその余白で回っている
1963年の American Sociological Review 28(1) の研究(Macaulay)は、事業者が交換関係を完全には計画せず、紛争を法的制裁に照らさずに解決することが多いと報告した。契約理論の側では、将来を書き切った完備契約は作れず(Hart & Moore 1988 ほか)、書き切れない部分は関係と再交渉が支えている。
止まらない供給網を作るには?
「止まらなかった」の教訓は、止まらなかった会社からしか集まらない
2015年の Interfaces 45(5) の研究は、強靭化が備える低頻度・高影響の途絶は予測も定量化も難しいと述べ、確率評価を後回しにする設計に切り替えた。2006年の Management Science 52(5) は在庫積み増しが普遍の正解ではないと示し、2012年の POM 21(1) は効果測定の方法がまだ確立していないと指摘する。