就職・職業
価値観の明確化
「いちばん大切なもの」は、二度目に測ると10人に4人で入れ替わる
米国・1999年に公開された O*NET の技術報告は、213人に同じ質問紙を二度配り、最も重視する価値が両方で一致したのは62%、上位2つまで一致したのは52%と報告した。個々の必要についての再テスト相関の中央値は .63、価値尺度では .62 である。集団の平均は動かない。動くのは個人の順位のほうである。
強み・スキルの把握
「強みを毎日使う人は仕事に没頭する確率が6倍」という一文は、米国・2014年の業務誌記事に実在する。ただしその記事は査読論文を1本も引用していない。査読側で強みへの介入を集めた2019年のメタ分析は、29効果量・14論文で、幸福 g = 0.32、抑うつ低下 g = 0.21、生活満足 g = 0.42。仕事の成果は測られていない。
性格・傾向の自己認識
米国・2005年の総説は、4週間の間隔をあけた再検査で35%が別の4文字型になり、5週間では50%が別の分類を受けたと報告している。型の前提である二つの山は観測されず、得点はどの次元でも連続に分布する。次元で測り直しても、職務遂行との観測された相関は .13 である。
動機・エネルギー源の認識
米国・1997年の研究は、二つの大学の職員に質問紙を配り、分析に使えた196人のうち単一の構えに分類できた135人を、44人・43人・48人と報告した。同じ標本の管理事務職24人の内訳は9人・7人・8人である。示されたのは分布の普遍性ではなく、職種が同じでも構えは割れるということだった。
嫌悪・回避パターンの認識
合わない職場の代償として配られている二つの数字は、どちらも出どころが無い
合わない環境を先に知っておけ、という助言に付いてくる二つの数字は、査読誌の索引をたどっても一次情報に届かない。査読誌の側にあるのは別の量で、しかも同じ人に同じ日に訊いた相関には 26% の偏りが乗る(1998年・米国、6誌12年分の集計)。そして回顧の歪みは、72人・534件の経験サンプリングでは良かった側に、810人の一日再構成では嫌だった側に出た。向きを決めているのは、思い出す枠のほうである。
労働環境評価力
「高要求・低裁量」という短い言葉は、支持された主張と支持されていない主張を一緒に運んでいる
1979年の原典が測っていたのは、燃え尽きではなく精神的緊張と職務不満であり、分析は男性に限られていた。2010年の総説(83件・1998〜2007年)は、足し算の効果は標本が十分ならほとんどいつも見つかるが、緩衝を予測する交互作用の証拠は全体として非常に弱いと判定した。確実に効いているのは時間そのもので、世界保健機関と国際労働機関の2021年の共同推計は、週55時間以上への曝露に74万5,194人の死亡を帰している。ただし同じ事業は、心の側については判定を保留した。
職務適合性の評価力
「合っている」という量は、データを増やさずに .21 から .35 超まで動く
一致度は直接に観測される量ではなく、本人の側の並びと職務の側の並びを突き合わせて計算する量である。突き合わせ方も、環境の参照の仕方も一通りではない。1987年(米国・イスラエル、41件)の .21 と「.35 超」は同じデータから出ており、2005年に18年ぶんを足しても確認されたのは「指標で値が動く」という知見のほうだった。成果との関係は、74件・141標本で .14、翌年の別のメタ分析では一致度のほうが強いとされ、違いは補正をどこまでかけるかにある。
組織文化・価値観の見極め力
文化に合わせて減らせているのは、自分から辞めることではなく、辞めさせられることのほうだった
「人と組織の適合は離職意図を有意に下げる(β=−.35)」と「文化適合が高い入社者は1年後の評価が平均22%高い」は、公開されている範囲では一次情報に到達できない。査読誌の側でもっとも細かく測った研究は、米国の技術系企業1社の従業員601人が5年間に交わした1,024万通の社内メールから文化的な適合を推定し、それが効くのは人脈の制約が小さい人だけだと示した。続きの研究の結論は、すみやかな適合が下げるのは非自発的な離職の危険であって、自発的な離職の危険ではない、というものである。
労働市場の現実認識
47%と9%は、けんかをしていない。数える単位が職業から業務に変わっただけである
「47%の仕事が自動化される」の47%は、米国の702職業を単位にした推計である。同じ問いを業務を単位にして解き直すと、OECD加盟21か国の平均で9%になった。予測が外れたのではない。数える単位が変わっただけである。日本の有効求人倍率も、平均賃金も、同じ種類の狭さを持っている。
適合性の統合判断力
四半世紀ぶんの順位表が2022年に書き換わった。動いたのは選考ではなく、補正のかけ方である
1998年の表では一般知能の検査が .51、ワークサンプルが .54 だった。2022年の再推定では .31 と .33 になり、構造化面接が首位に立った。理由は範囲制限の補正の入れ方である。ところが同じ論点をめぐって、一般知能を .65 へ引き上げる別の版が、未公刊のまま出回っている。
認知バイアスの管理
最良を探し続けた人たちは、高い初任給を得ていた。低かったのは満足のほうだけである
最大化志向の高い卒業予定者は、低い人より20%高い初任給の職に就いた。同時に、就いた職への満足は低く、探索中の否定的な感情も多かった。企業の知名度も憧れも、この研究の変数には入っていない。そして「決まったあとの気持ちを人は読み違える」という命題自体が、同じ雑誌の同じ号で係争中である。
複数選択肢の並行保持
「保険をかけておけ」の根拠として引かれる実験が測っていたのは、内定ではなく実験課題の成績である
予備の案を考えた人は本命の課題の成績が下がり、その効果は本命を達成したいという欲求の低下によって媒介されていた。三つの実験室の実験である。もう一方で「複数案を検討すると成功率が上がる」という一般命題は、よく引かれる論文の要旨のどこにも書かれていない。
自己呈示・表現力
見せ方は、面接という装置には確かに効く。米国・2009年のメタ分析で、印象管理と面接評価の補正後の相関は .47。ところが同じ印象管理と職務成果の相関は .15 である。効く先が、思われているのと違う。
情報収集・ネットワーク活用力
人づての就職が良いのは本当だった。良くなっている場所が、言われているのと違う
採用する側の目利きを実験で抜いても、紹介経由の人は継続の仕事に再応募する割合が20パーセントポイント高い。効いているのは、履歴書に出てこない情報と、紹介者と組んだときの噛み合い方だった。
応募・選考プロセスの実行力
米国・2021年の378標本・165,933人の集計で、職探しの強度と面接の数の補正後の相関は .23、就いた仕事の質とは .06。同じ書類で名前だけを変えた実験では、コールバック率が10.08%と6.70%に割れる。
不確実性への耐性と修正力
12.9 が数えているのは、転職ではない。同じ雇用主に戻っても2つになる
合うかどうかを就く前に当てることはできない。この棚の証拠は、ほとんどが就いた後に集められたものだった。できるのは、外れたと分かるまでを短くすることと、外れたときにどこへ戻るかを決めておくことである。