「合っている」という量は、データを増やさずに .21 から .35 超まで動く
適合度は測れる量ということになっている。1987年のメタ分析は、41件・77の相関から一致度と満足の平均相関を .21 と報告し、続けてこう書いた——環境の参照の仕方と一致度の測り方で分けると、.35 を超える。データは1件も増えていない。
前の単位で、職場そのものをどう見積もるかを扱った。ここでは対象を一段細かくして、その職場のなかの一つの職務を見る。
持ち場を狭めておく。「適合」という概念そのもののメタ分析は、組織の基盤の棚が扱った。ここで扱うのは、興味と職務の一致度という一つの量が、どうやって作られ、どこまで動くか——それだけである。ついでに一言だけ断っておくと、以下の研究の多くは、すでにその職務に就いている人に一度だけ訊いて測っている。この順序の問題は、この棚の最後の単位で正面から戻ってくる。
.21 と「.35 超」は、同じデータから出ている
出発点は1987年、*Journal of Vocational Behavior* に出たメタ分析である。要旨は、41件の異なる研究から77の相関係数をまとめた、と書いている。得られた値はこうだ。一致度と達成の相関が .06、一致度と在職の安定が .15、そして一致度と満足の平均相関が .21。
そして次の一句が、この単位のすべてである。「環境をどう参照するか、および一致度をどう測るかで分けると、.35 を超える」。
同じ41件、同じ77の相関である。データを増やしたわけでも、対象を変えたわけでもない。分け方を変えただけで、値がおよそ1.7倍になった。そして満足以外——達成 .06、安定 .15——は、ほとんど動いていない。動いたのは、自己申告どうしで測られている満足だけである。
「一致度」という量は、一通りではない
なぜ分け方でそこまで動くのか。一致度は、直接に観測される量ではないからである。本人の側の並びと、職務の側の並びを突き合わせて計算する。突き合わせ方は一通りではない。差を足すのか、相関を取るのか、上位が一致した数を数えるのか。環境の側の並びをどこから持ってくるかも一通りではない。職業分類の表から取るのか、その職場の人たちに訊くのか、本人に訊くのか。
つまり「適合度 .43」のような一つの数字は、どの計算式と、どの環境の参照を選んだかを書かないかぎり、再現できない量である。
18年ぶん足しても、指標の選び方が効き続けた
2005年に *Journal of Career Assessment* へ出た追試メタ分析は、1988年から2003年までに報告された26件を集め直した。53の標本、6,557人である。
結果はこうだった。以前のメタ分析が報告していた調整変数のうち、環境にいる他者・満足の出どころ・コードの型については、支持が見つからなかった。一方、一致度の指標が調整変数として効くという以前の知見は確認された。さらに、どの興味検査を使ったかも調整変数であることが新たに分かった。文化についても、米国で行われた研究とイスラエルで行われた研究のあいだに差が出ている。
18年ぶんの研究を足しても、生き残ったのは「測り方で値が変わる」という知見のほうだった。なお、この論文の平均相関の値は原典の要旨に載っておらず、他誌の引用からしか取れなかったので、ここには書かない。
成果のほうは、補正をどこで止めるかで割れる
満足ではなく、実際の仕事ぶりとの関係はどうか。2011年に *Journal of Applied Psychology* へ出たメタ分析は、74件の研究・141の独立した標本を集めた。報告された妥当性の推定値は、職務遂行 .14、訓練の成績 .26、離職意図 −.19、実際の離職 −.15 である。
ここに、この単位でいちばん大事な括弧書きが付いている。「基準側の測定誤差については補正したが、範囲制限については補正していない」。
翌2012年、*Perspectives on Psychological Science* に出た別のメタ分析は、60年ぶんの文献からおよそ568の相関を集めて同じ問いを扱い、一致度の指標のほうが、興味の得点そのものより成果をよく予測すると結論した。二つの推定値のあいだにある主な違いは、補正をどこまでかけるかである。
この応酬には続きがある。2017年に *Journal of Vocational Behavior* 98巻へ出た再検討がそれだ。やりとりは誌をまたいでいて、同じ号での往復ではない。なお、この2017年の論文の要旨には到達できなかったので、そこに載っている数値はここには書かない。補正の手続きそのものが主題になるのは、この先の段である。
同じ人に訊くと膨らむ、という一般則が当てはまらない例
前の段で、同じ人に同じ日に訊いた相関には偏りが乗る、という話をした。ところがこの領域では、逆向きの実例が出ている。
2007年に *Journal of Managerial Psychology* へ出た研究は、カリブ海のキュラソー島にある1社の従業員94人に、自分の価値観・組織の価値観の見え方・離職意図を答えてもらった。そのうえで、適合度を二通りに作った。同じ人の回答どうしから作る場合と、組織側の並びを別のところから取って作る場合である。要旨の結論はこうだ——「別ソースの適合度のほうが、同一ソースの適合度よりも、離職意図と有意に強く関連していた」。
自己申告どうしだから膨らむ、という直感は、ここでは当たらなかった。一般則は、当てはまる場所を確かめてから使うものである。
時間・変化:38年かけて、生き残ったのは「動く」という知見だった
1987年の41件・77相関で .21 と「.35 超」が並んだ。2005年に18年ぶんを足しても、確認されたのは指標が効くことのほうだった。2011年と2012年には、成果との関係が補正の扱いで割れた。2017年にも再検討が出ている。
38年のあいだに増えたのは、値の精度ではなく、値が動く理由の数である。これは失敗ではない。測っている量が、そもそも作り方に依存する量だった、ということが分かってきたということだ。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるものの筆頭は、適合度を一つの数字として受け取ることである。「.43」も「.21」も、計算式と環境の参照を書かなければ再現できない。第二の妨げは、補正の有無を確かめないことだ。同じ関係が、補正をどこで止めるかで別の顔になる。
標本の偏りを断っておく。ここで挙げた研究の対象は、米国とイスラエルと、カリブ海の1社の従業員である。日本の労働市場を対象にした査読研究はごく少ない。しかも大半は、すでにその職務に就いている人に訊いている。就けなかった人、途中で離れた人は、最初から入っていない。そして、こうした関連からは、もともと選択肢の多い人ほど、その方法を試せる、という逆向きを排除できない。合いそうな職務を選んで応募できる人と、選べる幅が狭い人では、そもそも測られている状況が違う。
助けるのは、適合を量ではなく件数で見ることである。募集要項に書かれている業務のうち、自分が実際にやったことがあるものは何件か。これは計算式を選ばずに数えられる。
最初の一歩は5分。関心のある職務の募集要項を1件開き、書かれている業務を箇条書きに並べ直して、そのうち自分がやったことのある件数を数える。
次の単位は 088「組織文化・価値観の見極め力」——ここでは一つの職務を見た。次の段では、その職務が置かれている集団のほうを見る。
- Assouline & Meir 1987(Journal of Vocational Behavior 31(3):319-332)は41件の研究から77の相関係数をまとめ、一致度と達成の相関 .06、一致度と在職の安定 .15、一致度と満足の平均相関 .21 を報告した。そのうえで、環境をどう参照するかと一致度をどう測るかで分けると .35 を超える、と書いている。データは1件も増えていない
- 動いたのは満足との相関だけである。達成 .06 と安定 .15 は、分け方を変えてもほとんど動いていない。満足は、一致度と同じく本人の自己申告で測られている量である
- 一致度は直接に観測される量ではない。本人の側の並びと職務の側の並びを突き合わせて計算する量であり、突き合わせ方(差を足す・相関を取る・上位の一致数を数える)も、環境の側の並びの持ち出し方(職業分類の表・その職場の人・本人)も一通りではない。計算式と環境の参照を書かない数字は再現できない
- Tsabari, Tziner & Meir 2005(Journal of Career Assessment 13(2):216-232)は1988年から2003年までの26件・53標本・6,557人で追試した。環境にいる他者・満足の出どころ・コードの型が調整変数だという以前の知見は支持されなかったが、一致度の指標が調整変数だという知見は確認され、どの興味検査を使ったかも調整変数だと分かった。米国とイスラエルの研究のあいだにも差が出ている。なお平均相関の値は原典の要旨に載っていない
- Van Iddekinge, Roth, Putka & Lanivich 2011(Journal of Applied Psychology 96(6):1167-1194)は74件の研究・141の独立標本を集め、妥当性の推定値を職務遂行 .14、訓練の成績 .26、離職意図 −.19、実際の離職 −.15 と報告した。要旨には「基準側の測定誤差については補正したが、範囲制限については補正していない」と明記されている
- Nye, Su, Rounds & Drasgow 2012(Perspectives on Psychological Science 7(4):384-403)は60年ぶんの文献からおよそ568の相関を集め、一致度の指標のほうが興味の得点そのものより成果をよく予測すると結論した。二つの推定値の主な違いは補正をどこまでかけるかにある。応酬は誌をまたいでおり、2017年の再検討は Journal of Vocational Behavior 98:138-151 に出ている(同じ号での往復ではない)
- van Vianen, De Pater & van Dijk 2007(Journal of Managerial Psychology 22(2):188-202)は、カリブ海のキュラソー島にある1社の従業員94人で、適合度を同一ソースと別ソースの二通りに作って比べた。要旨の結論は「別ソースの適合度のほうが、同一ソースの適合度よりも離職意図と有意に強く関連していた」で、自己申告どうしだから膨らむという一般則が当てはまらない実例になっている
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 職務との適合度は職業満足の強力な予測因子で、相関は .43 くらいある | 1987年に41件・77の相関をまとめたメタ分析では、一致度と満足の平均相関は .21 だった。同じ論文が、環境の参照の仕方と一致度の測り方で分けると .35 を超えると書いている。データを増やさずに、分け方だけで値が動く量である。しかも動いたのは満足との相関だけで、達成 .06 と在職の安定 .15 はほとんど動いていない。計算式と環境の参照を書かない適合度の数字は、再現できない |
| 興味に合った仕事を選べば、仕事の出来もよくなる。これはメタ分析で確かめられている | 確かめられているのは、値が補正の扱いで割れるということのほうである。2011年に74件・141標本を集めたメタ分析は、職務遂行との妥当性を .14 と報告し、要旨に「基準側の測定誤差については補正したが、範囲制限については補正していない」と明記した。翌2012年に60年ぶん・およそ568の相関を集めた別のメタ分析は、一致度の指標のほうが興味の得点より成果をよく予測すると結論している。応酬は誌をまたいで続いており、決着していない |
| 適合度も満足も同じ人が答えているのだから、この種の相関はどれも膨らんでいると考えておけばよい | その一般則が当てはまらない実例がこの領域にある。カリブ海のキュラソー島にある1社の従業員94人で、適合度を同一ソースと別ソースの二通りに作って比べたところ、別ソースの適合度のほうが離職意図と有意に強く関連していた。一般則は、当てはまる場所を確かめてから使うものである |
測れるものは管理できる、とよく言われる。適合度はその言い方によく似合う量で、小数点以下二桁まで書けるし、資料に並べれば比べられているように見える。皮肉なのは、この量が、比べる前に何をどう突き合わせたかを書かなければ再現できない量だったことである。38年かけて増えたのは値の精度ではなく、値が動く理由の数のほうだった。
Q1. 1987年に41件・77の相関をまとめたメタ分析が報告した三つの値を挙げ、そのうえで「.35 超」という値がどこから出てきたのかを説明せよ。一問一答
Q2. 「一致度」という量が、計算式と環境の参照を書かないかぎり再現できないのはなぜか。突き合わせ方と参照先の選択肢を、それぞれ具体的に挙げて説明せよ。一問一答
Q3. 2011年に74件・141の独立標本を集めたメタ分析が、妥当性の推定値について要旨に明記していた補正の扱いはどれか。選択
Q4. 2005年の追試メタ分析(26件・53標本・6,557人)で、以前の知見が確認されたのはどれか。選択
Q5. カリブ海のキュラソー島にある1社の従業員94人を対象にした2007年の研究が示したのはどれか。選択
関心のある職務の募集要項を1件だけ開く。応募するかどうかは今日は決めない。まず、そこに書かれている業務内容を、箇条書きの1行が1つの業務になるように並べ直す。長い一文に3つ入っていれば3行に割る。次に、その1行ずつについて、自分が実際にやったことがあるかどうかだけを判定し、あるものに印を付ける。できそうか、向いていそうかは判定しない。最後に、全部で何行あって、そのうち何行に印が付いたかを数字で書く。たとえば「8行のうち3行」と書けばよい。判定の理由や自己評価の言葉は書かない。いま働いていない場合や、これから初めて働く場合も、仕事以外の場面(学び直し、家事、介護、地域の役割)でやったことがあれば印を付けてよい。応募先や、そこで働いている人を評価する課題ではない。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
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- Assouline M., Meir E.I. (1987) 'Meta-analysis of the relationship between congruence and well-being measures', Journal of Vocational Behavior 31(3):319-332 — eric.ed.gov
- Tsabari O., Tziner A., Meir E.I. (2005) 'Updated Meta-Analysis on the Relationship Between Congruence and Satisfaction', Journal of Career Assessment 13(2):216-232 — journals.sagepub.com
- Van Iddekinge C.H., Roth P.L., Putka D.J., Lanivich S.E. (2011) 'Are you interested? A meta-analysis of relations between vocational interests and employee performance and turnover', Journal of Applied Psychology 96(6):1167-1194 — doi.org
- Nye C.D., Su R., Rounds J., Drasgow F. (2012) 'Vocational Interests and Performance: A Quantitative Summary of Over 60 Years of Research', Perspectives on Psychological Science 7(4):384-403 — journals.sagepub.com
- Nye C.D., Su R., Rounds J., Drasgow F. (2017) 'Interest congruence and performance: Revisiting recent meta-analytic findings', Journal of Vocational Behavior 98:138-151 — doi.org
- van Vianen A.E.M., De Pater I.E., van Dijk F. (2007) 'Work value fit and turnover intention: same-source or different-source fit', Journal of Managerial Psychology 22(2):188-202 — doi.org