4文字の型は、5週間のうちに半分が別の型になる
性格を4文字の型で名乗るのは、便利である。短いし、覚えやすいし、飲み会で話が続く。ただし型というものは、二度測っても同じ型が出ることを前提にしている。皮肉なことに、その前提だけが、この枠組みでいちばん検証されてこなかった。
前の単位で、強みという言葉が売られるときの数字と、査読を経た数字の落差を見た。ここでは、できることではなく、どう振る舞うかのほうを見る。
4週間で3割、5週間で半分
性格を4文字の型に分ける枠組みは、いまも就職の場面で使われる。この枠組みについての米国・2005年の総説は、再検査の結果を並べている。
4週間の間隔をあけると、35%が別の4文字型になった。5週間の間隔では、50%が別の分類を受けた。 二人に一人である。
型を名乗ることの前提は、二度測っても同じ型が出ることである。半分が入れ替わるなら、名乗っているのは自分の型ではなく、その日の自分の答え方ということになる。
同じ総説は、もうひとつ書いている。選抜の判断にこの枠組みを用いることを推奨できるデータは、存在しない。 枠組みを否定しているのではない。判断に使うだけの根拠がまだ無い、という書き方である。
この一文は、読者の場面にそのまま下りてくる。選考の途中で適性検査を受け、後日、結果を印刷した紙を渡されることがある。四文字の記号なり、いくつかの傾向の名前なりが並んでいる。そこに書かれているのは、あなたがその日そう答えた、という記録である。 その紙を選抜の材料にしてよいかどうかについて、推奨できるだけのデータは存在しない——総説はそう書いている。紙を破り捨てる必要はない。ただ、その紙を根拠に自分の行き先を狭めるのは、根拠の無いところに根拠があるふりをすることである。渡されたら日付を書いてしまっておき、数週間後にもう一度受ける機会があれば、二枚を並べる。それがいちばん安上がりな検証になる。
型の前提である、二つの山が観測されない
なぜ入れ替わるのか。分布を見ると分かる。
型に分けるという考え方は、得点が二つの山に割れていることを前提にする。外向の山と内向の山があって、そのあいだの谷で線を引く。この二峰性は、型の枠組みにとって本質的な特徴である。 ところが、同じ総説によればそれが顕著に欠けている。複数の資料が示しているのは、どの次元でも得点が連続に分布するという事実だった。
山が一つしかないところに線を引くと、何が起きるか。線のそばにいる人が、測るたびに右へ左へ動く。 4週間で35%、5週間で50%という数字の正体は、これである。
二峰性を報告した研究のほうも、追いかけられている。米国・2002年、1万人を超える研修参加者のデータを項目反応理論で解析した研究は、以前に報告された二つの山が、推定に使う数値積分の既定設定から生じた見かけであることを示した。設定を細かくすると、分布はどの次元でも中央に寄った。ただし設定を変えても得点どうしの相関はきわめて高く、実務上の順位はほとんど動かないとも書いている。見かけの山だけが消えた、ということである。
317の検証が出した答え——次元が5対1
型か次元か、という争点そのものに、2020年の集計が答えを出している。人の個人差が本当に類型的なのかを調べる手法を使った研究を集め、183論文から317の知見を検討したものである。
結果はこうだった。次元モデルを支持する知見が、類型モデルを支持する知見を5対1で上回った。 性格や個人差を扱う17の領域のあいだに系統的な違いはあったが、類型モデルが総体として支持された領域は、一つも無かった。
この317という数が何を数えているかは、押さえておく価値がある。集計の対象は、性格の類型だけではない。 気分や不安をめぐる精神病理の類型、質問紙への答え方の癖、男女差——人の個人差を「あるか、ないか」で切ろうとしてきた領域が、まとめて並べられている。 つまりこれは、ある一つの診断ツールの出来不出来をめぐる話ではない。人を型に分けるという発想そのものが、どの領域で試されたかを問わず、数の上では劣勢だったという話である。だから「もっと新しい類型なら大丈夫だろう」という逃げ道も、ここでは塞がれている。新しさが足りないのではなく、型という形のほうが持たない、と報告されているのだから。
さらに同じ論文は、比較適合の指標を使った研究は、使わなかった研究より4.88倍、次元的な結論に至りやすいと報告している。手法が整う前に出た類型的な結論の多くは、見かけだったということになる。
次元で測り直すと、観測された相関は .13
では型をやめて次元で測ればよいのか。測れる。ただし小さい。
1991年のメタ分析は、5つの次元と職務成果の関係を集計した。よく引かれるのは誠実性で、「最強の予測因子(r = .23)」という形で紹介される。表を開くとこうなっている。
- 職務遂行:52の相関・10,058人、観測された相関 r = .13、補正後 ρ = .22 - 訓練の遂行:21の相関・2,263人、観測 .09、補正 .22 - 人事データ:25の相関・4,588人、観測 .12、補正 .23
「.23」は補正後の値である。実際に観測されたのは .13、.09、.12 だった。 補正とは、測定の誤差や標本の偏りを見込んで値を推定し直す手続きで、手続きとして正当なものである。ただし補正前と補正後を区別せずに引くと、同じ研究から倍近く違う数字が流通する。この補正そのものが何をしているかは、090「適合性の統合判断力」で正面から扱う。ここでは、引くときにどちらの値かを書く、というところまでにしておく。 この段でやることは、一つの研究に二つの値があるという事実を手元に置くことだけでよい。置いておけば、後の段で「妥当性は◯◯ある」という数字を渡されたときに、まずどちらの値かを訊ける。訊けるかどうかで、その数字の読み方は変わる。
2000年には、Big Five を明示的に測った尺度だけに絞ってメタ分析をやり直した研究も出ている。課題遂行についての結論は、先行するメタ分析と平行だった。 測り直しても、桁は変わらない。
時間・変化:型ではなく、性格そのものが動く
再検査で入れ替わるのは、測定の揺れだけではない。性格そのものも動く。
92の縦断標本を集めた2006年のメタ分析は、生涯にわたる平均的な変化を並べている。20歳から40歳のあいだに、社会的な主導性・誠実性・情緒の安定性が上がる。 経験への開放性と活力は青年期に上がり、後年に下がる。協調性は生涯を通じてほぼ動かない。6つの特性のうち4つで、意味のある変化が確認された。 追跡期間が長い研究ほど、そして若い人を含む研究ほど、変化は大きかった。
並べ直すとこうなる。数週間では、型の3割から5割が入れ替わる(測定の揺れ)。数年から数十年では、いくつかの特性が一方向に動く(本当の変化)。そのあいだの「いま自分はこういう人間だ」という感覚だけが、動かない。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるものの筆頭は、例外を数えないことである。「自分は人前で話せない」と思っている人は、話せなかった場面をよく覚えていて、話せた場面を「あれは例外」として数えない。分母を作らないかぎり、型は反証されない。
ここでこの棚として毎回断ることがある。ここまでの数字は、ほぼすべて米国と欧州の、すでに働いている人か大学生を対象に採られている。 日本の労働市場を対象にした査読研究はごく少ない。実験室の課題と実際の選考は別物である。効果は短い期間で測られたものが多い。そして何より、就職の研究に協力できるのは、調査に答えられる状態にある人だけである。とりわけ——もともと選択肢の多い人ほど、その方法を試せる、という逆向きを排除できない。
助けるのは、型を主語にせず、場面を主語にすることである。「自分は慎重な人間だ」ではなく「先週、確認を2回した場面が3回、しなかった場面が5回あった」。後者は数えられる。数えられるものは、次の段で職務の条件と突き合わせられる。
最初の一歩は5分。今日の自分の行動で「自分はいつもこうだ」と思ったものを1つ書き出し、直近1週間でそうでなかった場面が何回あったかを数える。 0回でもよい。数えたことが記録になる。
次の単位は 084「動機・エネルギー源の認識」——型が測るたびに入れ替わるなら、何に没入するかという構えのほうはどうなのか。 段はまた一つ進んで、まだ自分を見る側にいる。
- 性格を4文字の型に分ける枠組みについて、米国・2005年の総説は、4週間の間隔をあけた再検査で35%が別の4文字型になり、5週間の間隔では50%が別の分類を受けたと報告した。型を名乗ることの前提は二度測っても同じ型が出ることであり、半分が入れ替わるなら名乗っているのは型ではなくその日の答え方になる
- 同じ総説は、選抜の判断にこの枠組みを用いることを推奨できるデータは存在しないと書いている。枠組みを否定しているのではなく、判断に使うだけの根拠がまだ無い、という書き方である
- 型の前提である二峰性——得点が二つの山に割れること——は、この枠組みにとって本質的な特徴のはずだが、顕著に欠けている。複数の資料が示すのは、どの次元でも得点が連続に分布するという事実だった。山が一つのところに線を引けば、線のそばの人が測るたびに動く
- 米国・2002年に1万人を超える研修参加者のデータを項目反応理論で解析した研究は、以前に報告された二峰性が推定に使う数値積分の既定設定から生じた見かけであることを示した。設定を細かくすると分布はどの次元でも中央に寄る。ただし設定を変えても得点どうしの相関はきわめて高く、実務上の順位はほとんど動かない
- 2020年に183論文から317の知見を集めた集計では、次元モデルを支持する知見が類型モデルを支持する知見を5対1で上回った。性格や個人差を扱う17の領域のあいだに系統的な違いはあったが、類型モデルが総体として支持された領域は一つも無かった。比較適合の指標を使った研究は、使わなかった研究より4.88倍、次元的な結論に至りやすかった
- 1991年のメタ分析の表では、誠実性と職務遂行の関係は52の相関・10,058人で観測された相関 r = .13、補正後 ρ = .22。訓練の遂行は21の相関・2,263人で観測 .09/補正 .22、人事データは25の相関・4,588人で観測 .12/補正 .23。よく引かれる「.23」は補正後の値であって、実際に観測された値ではない。2000年に Big Five を明示的に測った尺度だけで再集計した研究でも、課題遂行についての結論は先行研究と平行だった
- 測定の揺れとは別に、性格そのものも動く。92の縦断標本を集めた2006年のメタ分析では、20歳から40歳のあいだに社会的な主導性・誠実性・情緒の安定性が上がり、経験への開放性と活力は青年期に上がって後年に下がり、協調性は生涯を通じてほぼ動かない。6つの特性のうち4つで意味のある変化が確認された
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 性格タイプが分かれば、向いている仕事が分かる | 型そのものが安定しない。米国・2005年の総説は、4週間の間隔で35%が別の4文字型になり、5週間では50%が別の分類を受けたと報告している。しかも型の前提である二峰性——二つの山に分かれた分布——は観測されず、得点はどの次元でも連続に分布する。同じ総説は、選抜の判断に用いることを推奨できるデータは存在しないとも書いている |
| 分布が二つの山に割れるという報告があるのだから、型は実在する | その報告のほうが、計算の設定から生まれた見かけだった。米国・2002年に1万人を超える研修参加者のデータを項目反応理論で解析した研究は、以前に報告された二峰性が推定に使う数値積分の既定設定に由来することを示した。設定を細かくすると、分布はどの次元でも中央に寄った。なお、設定を変えても得点どうしの相関はきわめて高く、実務上の順位はほとんど動かない |
| 型ではなく5つの次元で測れば、職務成果はよく予測できる | 予測はできるが、大きくはない。1991年のメタ分析の表で、誠実性と職務遂行の関係は52の相関・10,058人で、観測された相関 r = .13、補正後 ρ = .22 である。訓練の遂行では21の相関・2,263人で観測 .09/補正 .22、人事データでは25の相関・4,588人で観測 .12/補正 .23。よく引かれる「.23」は補正後の値であり、実際に観測された値ではない |
4文字の型のいちばんよくできているところは、外れたときの逃げ道が本人の側にあることである。当たっていれば「やはり自分はこの型だ」、外れていれば「今日は例外だった」。**どちらに転んでも型は生き延びる。** 生き延びさせているのは検証ではなく、例外の数え方のほうである。数えはじめると、例外は驚くほど早く増える。
Q1. 性格を4文字の型に分ける枠組みについて、米国・2005年の総説は、4週間の間隔をあけた再検査で ____ % が別の型になり、5週間の間隔では ____ % が別の分類を受けたと報告した。穴埋め
Q2. 2020年の集計は、183論文から ____ の知見を検討し、次元モデルを支持する知見が類型モデルを支持する知見を ____ 対1で上回ったと報告した。類型モデルが総体として支持された領域は ____ だった。穴埋め
Q3. 型に分ける枠組みが前提にしている分布の形と、実際に観測される分布の形の違いを説明し、その違いが再検査の結果にどう表れるかを書きなさい。一問一答
Q4. 1991年のメタ分析における誠実性と職務遂行の関係について、相関の本数・人数・観測された相関・補正後の値を書きなさい。一問一答
Q5. 92の縦断標本を集めた2006年のメタ分析が報告した、生涯にわたる性格の平均的な変化として正しいのはどれか。選択
紙かメモアプリを開く。今日の自分の行動で「自分はいつもこうだ」と思ったものを1つだけ書き出す(先に確認してしまう、頼まれると断れない、一人で進めたがる、など)。書けたら、直近1週間を思い出し、そうでなかった場面が何回あったかを数えて数字で書く。0回でもよい。思い出せる範囲でよく、正確さより数えたという事実のほうが大事である。誰かに確認を取りに行かないこと。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
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- Pittenger D.J. (2005) 'Cautionary comments regarding the Myers-Briggs Type Indicator', Consulting Psychology Journal: Practice and Research 57(3):210-221 — doi.org
- Bess T.L., Harvey R.J. (2002) 'Bimodal Score Distributions and the Myers-Briggs Type Indicator: Fact or Artifact?', Journal of Personality Assessment 78(1):176-186 — doi.org
- Haslam N., McGrath M.J., Viechtbauer W., Kuppens P. (2020) 'Dimensions over categories: a meta-analysis of taxometric research', Psychological Medicine 50(9):1418-1432 — www.cambridge.org
- Barrick M.R., Mount M.K. (1991) 'The Big Five personality dimensions and job performance: A meta-analysis', Personnel Psychology 44(1):1-26 — doi.org
- Hurtz G.M., Donovan J.J. (2000) 'Personality and Job Performance: The Big Five Revisited', Journal of Applied Psychology 85(6):869-879 — doi.org
- Roberts B.W., Walton K.E., Viechtbauer W. (2006) 'Patterns of mean-level change in personality traits across the life course: A meta-analysis of longitudinal studies', Psychological Bulletin 132(1):1-25 — doi.org