採用
採用市場機会設計力
「採用コストが23%下がる」の出どころを、五系統さがして見つけられなかった
中核理論として掲げられる2005年の論文は、題からして別物であり、中身は標本も効果量も持たないパラダイムの提案である。そして統計の側では、「求職者」は働きたい人ではなく、探す行動を取っている人として定義されていた。
雇用主ブランド差別化力
「応募が50%増える」の根拠に、増えなかったと書いた論文が並んでいる
そして学術の側でこの主張の根拠としてよく並ぶ2003年の論文は、抄録に「評判広告は求職者の評判認知を動かさなかった」と書いている。反証が、根拠として引かれ続けている。
EVP(Employee Value Proposition)設計力
「働きがい」という概念の出発点は、二つの現場の、合わせて32人だった
そして「働く人が何を大事にしているか」を実際に選ばせて測った経済学の実験は、平均の求職者は短い予告で決まるシフトを避けるために賃金の20%を手放す一方、多くの人は柔軟さのために何も払わない、と報告している。
雇用主ブランド評判基盤
星の数が動いたとき、動いていたのが誰なのかを、査読論文は分けて書いている
評価の平均点が下がったとき、下げていたのが誰なのかを分解した論文がある。上場の前に入った人であって、後から入った人ではなかった。平均点を「職場が悪くなった」と読む前に、動いている層を見なければならない。
採用認知・パイプライン創出力
2004年に Personnel Psychology 57(3) へ出た研究の標本は99社、回収率43%。量は3指標、質も3指標で、その1つは知覚された質である。同じ著者の2007年の研究は123社と456名で、帰結変数は応募の意図と決定だった。2006年の Organization Science は採用過程を3種の段に分解し、同じ経路の効き方が段の種類で変わることを示している。
候補者ナーチャリング・スクリーニング力
落とした人のその後は、こちらのデータには最初から書かれていない
2018年に経済学の季刊誌へ出た論文は、釈放された被告についてしか犯罪の結果を観測できない、と書く。同じ問題を定式化した2017年の会議論文は、結果が観測される事例は母集団の無作為標本ではない、と書く。採用でも同じことが起きている。そして採用の選抜を扱った論文の推定値は、作業論文から掲載版に至るあいだに動いた。
候補者体験(Candidate Experience)設計力
2004年のメタ分析は86の独立標本・48,750人を統合したが、抄録が挙げる帰結は組織への好意的な評価と、承諾や推薦の「意図」である。2017年の総説は145本を対象にした記述的な総括で、新しい効果量の推定ではない。そして実務でよく引かれる38%は、四段さかのぼると2つの群の54%と39%の比較だった。
オファー設計・クロージング力
承諾率が20%上がるという数値の出典として書かれている刊行物を、5系統たどって探したが実在しなかった。査読を経た側では、232の研究・250標本・108,632人のメタ分析が、段が進むほど効く変数が入れ替わること、そして実験室で大きく出る変数と現場で大きく出る変数が違うことを報告している。
入社オンボーディング成功力
その数字は、書いてある団体のものでも、書いてある年のものでもなかった
「82%」「70%」の出どころは、発行元・年・査読の有無・数字の内容の四つとも、添えられている出典からずれている。いっぽう査読を経たメタ分析のほうは、まったく別のことを報告している——検討した関係の56%がデータ収集の型に左右され、同じ時点で測った変数のあいだで相関が大きく出る、と。
ロールフィット・早期戦力化力
複数の研究が示す、と書いてあった。開けたら、同じ会社の同じ7年に見えた
「25%」にいちばん近い出どころは、標本規模も調査年も参考文献も一切書かれていない、ある調査会社の記事である。数字の取れる側では、1社・5,260人・年次考課の1〜5点という条件のもとで、報酬の差が抄録では18%高く、本文では15%低いと書かれている。同じ差の、基準の置き方が違うだけである。
エンプロイーサクセス継続保証力
数字を出している側は、因果について明示的に留保している。そして、時間を空けて測った縦断のパネルだけを集めると、態度が業績に及ぼす効果はβ=.06まで落ちる。しかも、その効果は時間差が長いほど小さくなる、と原典に書かれている。
心理的契約・期待値管理力
辞めたい気持ちとは、はっきり結びついた。実際に辞めることとは、結びつかなかった
51研究を集めたメタ分析では、心理的契約の違反は離職の意図と ρ=.42(22件・6,268人)で結びつくが、実際の離職とは ρ=.06(5件・730人)で、信頼区間は −.12 から .23 とゼロを跨ぐ。気持ちは22本で測られ、行動は5本でしか測られていない。
人材成長拡張・昇進支援力
「離職が25%低い」の反対側に、+0.235 という値が座っていた
2017年の122標本・35,670人のメタ分析では、ジョブ・クラフティング全体と離職意図の相関は rc=−0.021(K=4・N=2,429、信頼区間 −0.066〜0.023)。唯一大きいのは「妨害的な要求を減らす」次元の rc=+0.235 で、向きが逆である。
組織エンゲージメント・ロイヤルティ形成力
「意味があいまいである」と書いたのは、その言葉を広めた側だった
2008年3月の第1巻第1号は、pp.3-30 に焦点論文、pp.31-75 にコメンタリー13本、pp.76-83 に著者の応答をページ順に載せている。「他の構成概念の詰め替えにすぎないのか」という問いは、著者自身が本文に書いたものである。
リファラル採用ループ設計力
3つの数字は、4つの別々の調査から集められて、1つの文になっていた
流通する3つの数字は、2011年の業界団体調査、2012年の年次指数、2011-2012年の年次調査、2008-2011年の自社調査という4つの別々の出所に由来する。合成されたあとの文には、どの数字がどの調査のものかを見分ける手がかりが残っていない。
組織人材PMF深化力
40年で6,000本超に引かれ、核心の仮説を直接検定した公刊研究は1本だった
この枠組みを引用した6,000本超のうち、仮説の根拠に使ったのが321本、そのうち実際に検定したのが77本(24%)、核心仮説を直接検定した公刊研究は1本。24%の分母は321であって6,000ではない。