業務プロセス
プロセス標準化力
「標準化すれば20〜30%」の出どころを、四か所さがして見つけられなかった
品質責任者1,150人・924組織への調査は、標準を入れる段と使う段を分け、操業面での優位が出たのは日々の実務で使い変化の触媒として使ったときだけだったと報告する。しかも操業が良くなっても事業の業績が自動的に良くなるわけではない、とも書いている。
役割・責任の明確性
「役割をはっきりさせれば速くなる」は、三つの誤りを同時に動かす
米国の投資信託609本・15万件を超える銘柄選択の判断を調べた2012年の研究は、合意の閾値を上げると、通る案が減り、通しすぎの誤りが減り、見落としの誤りが増えると報告した。三つが同時に動く。これはトレードオフであって、改善ではない。
バリューチェーン設計力
流れを描くと満足度は上がる。業績のほうは、測り方しだいで消える
医療現場の引き渡しを標準化した36研究のメタ分析は、四つの成果すべてで正の効果を報告した。ただし最も小さいのは組織の成果で、著者たちは同じ要旨に、有意な出版バイアスがあること、手順が引き渡しの時間と抜け落ちの誤りを増やしうることも書いている。
プロセス可視化・計測基盤
計測の二大標語は、どちらも名前を貸した本人が書いた文ではない
英国の公的医療で導入された4時間の待ち時間目標について、イングランドの155すべての病院トラストのデータを使った2009年の研究は、2003年から2006年に劇的な改善が見られ、仮説として挙げられてきた逆機能のいずれについても証拠は見つからなかった、と報告する。
フロー効率・リードタイム管理
失敗の報告は1件も見つからなかった、とその論文自身が書いている
2003年に *International Journal of Operations & Production Management* 23(6):568-595 に出た集計は、80件を超える適用事例を扱い、要旨に「広く探したが、失敗の報告は見つからなかった」と記している。同じ要旨は、報告の大半が製造業からのものであることも書いている。そして「リードタイム50%短縮」の出どころは、査読の手続きを通っていない一般書だった。
意思決定スピード
速いほうがよい、を支持する研究はある。誰が「速い」と答えたのかを見るまでは
2003年の *Strategic Management Journal* 24(11):1107-1129 は、318人の経営者から4年かけて集めた測度で、速い意思決定がその後の成長と利益を予測すると報告した。2021年の *European Management Review* 18(2):119-140 は、117社の英国企業で「速さと判断の質」を測り、従来の説を大きく書き換えると述べている。1991年の研究は、速さが高い業績と結びついたのは変化の速い環境だけだったと書く。
リソース配分・優先順位実行力
2026年8月に探した範囲では、目標の枠組みの導入と成果を対照群つきで測った研究に、主要な査読誌で到達できなかった。一次資料に到達できたのは1954年8月19日の演説のほうで、そこには2×2の図も、引用元の人名も無い。2011年の *Strategic Management Journal* 32(13):1465-1483 は、配分額が事業の中身ではなく「いくつに区切ったか」で動くと報告している。
調達・外部連携プロセスの品質
2005年の *Production and Operations Management* 14(1):35-52 は、1989年から2000年の827件の公表を集め、公表1年前から2年後までの平均の異常収益がほぼ−40%だったと報告する。2022年の *Manufacturing & Service Operations Management* 24(2):846-863 は、供給元を分散させているほど中断からの回復が遅いと測った。頻度と回復で、同じ手が逆に働く。
品質管理・ばらつき低減力
米国企業200社を統制群と比べた2012年の事象研究は、総資産利益率の改善が主に間接費の削減から生じ、直接費と資産生産性には有意な改善が認められないと書いている。売上成長には小さな改善がある。効果は先行するISO 9000認証と負の相関を持つ。オンタリオ州の手術室で確認表を義務づけた2014年の研究では、死亡も合併症も有意には減らなかった(標本は手術室である)。
財務・経理プロセスの正確性
広く流通する「1件あたり12万5,000ドル」は中央値で、同じ年版の平均は150万9,000ドル。しかもそれは2020年版の数字で、2022年版の中央値は11万7,000ドル、平均は178万3,000ドルである。標本は組織の無作為抽出ではなく、回答者が自分の担当した1件について答えたものである。
リスク検知・異常感知力
よく引かれる「重大事故が何分の1」は、一般書にも査読側の原典にも見当たらない。原典にあるのは、事例と事故調査から帰納した五つの過程で、その五つめは一般書のものと違う。そして1994年の一つの号には、シンポジウムの表題と4本が掲載順に並び、そのうち1本の題名は文字どおり再応答である。
法務・コンプライアンス管理
米国の大企業1,000社の調査は、倫理方針の採用は高いが実行の度合いには大きなばらつきがあるとし、大多数が低費用でおそらく象徴的な側面に取り組んでいると書く。豪州の999社の調査は、仕組みの要素は実務に転換されうるが、経営の関与・監督と計画・資源も同じくらい重要だと結論する。2018年のレビューは、研修だけでは有意に減らす可能性は非常に低いとしている。
継続的改善文化(カイゼン)
「成功要因」の一覧は、成果ではなく432人の意見からできていた
改善が続く条件を扱った代表的な査読論文は、5社の事例研究から命題を立てたものであって効果の測定ではない。成功要因の一覧の出どころは、2つの多国籍企業の83工場に属する実務家432人への意見調査である。
実験・検証サイクル(Build-Measure-Learn)
1,450件の実験を数えたら、平均という言い方が使えなくなった
ある検索事業の実験基盤を2013年1月から2016年6月まで数えた1,450件の分析は、測られた効果の分布が極端に裾の厚い形をしていると報告している。多くは差がとても小さく、一握りが大きな利得を示す。
BCP・業務継続力
2011年の震災を扱った査読研究は、影響が上流にも下流にも、直接と間接の取引先にまで広がったとし、翌年の日本の実質GDP成長率を0.47パーセントポイント押し下げたと推計している。これは模型を通した推計値である。
プロセス革新力(BPR・デジタル化)
「70%が失敗する」を辿ったら、著者自身が非科学的な見積もりだと断っていた
1993年の一般向けの著書の元の文は、50〜70%の組織が意図した劇的な成果を達成しない、というものだった。しかも著者自身が非科学的な見積もりであると断っている。1995年のよく併記される記事に、70%という数字は無い。