顧客
市場機会設計力
「失敗の42%は市場が無いから」の42%は、そう死んだ会社の割合ではなかった
母集団は「失敗した事業」ではない。「終わりの物語を世に共有する勇気を持った創業者」が書いた101件である。そして成否そのものを測ったメタ分析では、24の候補のうち、競争の激しさも創業者の起業経験も、有意でなかった5つの側に入っていた。
差別化ポジショニング力
「差別化すれば勝てる」の根拠は、二十五年やっても決着していないと、当事者が書いている
分類できることと、業績を説明できることは別である。そして人の頭の中で実際に測った実験では、強く違いすぎた銘柄は差別化されるのではなく、隙間の箱に入れられていた。
価値提案の明確性
「価値提案を明確にせよ」の価値提案は、2017年のレビューに「いまだよく理解されていない」と書かれている
文献は断片的で、強い理論的基盤を欠いている——レビュー自身の言葉である。一方、何が差別化に効くかを実際に測った研究はあり、そこでいちばん弱かったのは価格だった。
ブランド知覚基盤
「星1つで売上5〜9%」は本物だった。落ちていたのは「系列店ではゼロに近い」のほうである
もっと手前の問いもある。その平均点は品質と一致しているのか。1,272製品を調べた研究の答えは、収束しない・標本が不十分なことが多い・再販価格を予測しない・高価な銘柄ほど高く出る、の四つだった。
需要創出・認知拡大力
同じ広告費について、+4,100%と−63%が、同じ表の同じ行に並んでいる
自社名の検索広告を止めると、失われた押下の99.5%は自然検索に回収された。押下は増える。だが、その押下は広告が無くても起きていた。
リード育成・資格化能力
「育成がうまい会社は見込み客を50%多く33%安く作る」の出どころに、五系統たどって行き着けなかった
数字が追えないなら、数えている対象のほうを見る。営業に渡せる見込み客の境目は組織ごとに違い、同じ組織でも期によって動く。境目を動かせば、実際の商いが何も変わらなくても件数は動く。
商談設計・提案力
「この型が売れる」の原データには届かなかった。届いた側では、顧客志向は自己評価の成果しか上げていなかった
確かめられている側では、四十年ぶんの蓄積がある。そこで上位に来るのは型ではなく、売ることに関わる知識と、相手に合わせて変えることだった。そして役割の曖昧さは、負の符号を持っている。
クロージング・契約転換力
「LTVがCACの3倍なら健全」の3を四段さかのぼると、実務ブログと、落ちた前提に行き着いた
3という閾値を検証した査読研究には行き着かなかった。代わりに行き着いたのは、この比の分子と分母そのものを問う研究のほうである。
オンボーディング成功力
同じ組織の中で、これから使う人とすでに使っている人を比べると、判断の材料は入れ替わるのではなく、五つから二つへ減っていた。
製品活用定着力
この分野でいちばん引かれる r=.85 の相手は、「自分で予測した将来の利用」だった
六年後、自己申告の利用と計算機が記録した利用を測定モデルで比べた論文は、予想に反して二つは強く関連していないと報告し、主観的な測度に依拠した研究は人工物かもしれないと書いた。
顧客成功の継続保証力
解約は予測できる。ただし「危険度がいちばん高い相手に手を打つのが最適か」を調べた研究は、無かった
当たるかどうかの話と、当てた相手に打つべきかの話は、別である。前者には十年以上の蓄積があり、後者は2018年に初めて実験された。
顧客期待値管理力
「期待を超えろ」の期待は、望ましい水準か、当然の水準か、予測される水準か——決まっていない
接客の連なりで測り直すと、頂点の体験は効いていたが、平均的な出来も重要だった。最後だけ良くすればいい、ではない。
収益拡張・アップセル力
「維持率5%で利益25〜85%増」——発行元の公開ページには「ほぼ100%」と書いてある
査読の側では、契約に縛られない状況を三年ぶんの日次データで調べた研究が、長く続く顧客が必ずしも儲かる顧客とは限らない、と報告している。四つの命題すべてに異議を唱えた。
顧客ロイヤルティ・愛着形成力
「成長を予測できる唯一の数字」を六つの指標と並べて比べたら、予測価値がほとんど無かった
予測価値がもっとも大きかったのは、平均の満足度である。そして21社・15,500件超の聞き取りによる追試は、他の測度に比べた明白な優越性という主張を再現できなかった。
紹介・リファラルループ設計力
400万人が50万点について1,600万件の推薦を行った記録では、推薦は平均すると購買をあまり引き起こさず、遠くまで広がりもしなかった。効いていたのは、特定の共同体・商品・価格の区分である。
成長ループ・PMF深化力
「40%を超えれば達成」の40%は、定めた本人が「いささか恣意的」と書き添えていた
増え方のほうにも、査読された定義は見つからなかった。そして、伝染だと思われていたものは、売り込みを統制すると消え、似た者どうしのつながりで半分以上が説明された。