芸道
身体感覚精度
固有感覚と内受容感覚——この棚のすべての技が乗る土台を、最初に点検する。ついでに、内受容の正確さを測る標準課題とされてきた心拍カウント課題を解体する。その成績は、心拍を検出する能力とは無相関(r = −.04)だった。
知覚弁別能
放射線科医は0.25秒で異常を当てる。ただし、どこにあるかは指させない
音の高さの弁別では、音楽家の閾値は非音楽家の6分の1以下だった。ただし4〜8時間の訓練で、非音楽家はその差を埋めた。一方、同一ボトルから注いだワインを同じメダル区分で再現できた審査員は、およそ10人に1人だった。
運動協調性
初心者が身体を固めるのは、下手だからではない。関節が多すぎるからだ
人体の関節と筋の組み合わせは、課題が要求するより桁違いに多い。だから最初は固める。腕の運動学習では、練習が進むにつれ共収縮が下がり、関節トルクの波形はほぼ同じまま筋の活動だけが減っていった。そして「マッスルメモリー」という一語は、二つのまったく別の現象を取り違えている。
タイミング精度
人はメトロノームより先に叩く。しかも、自分の楽器を持たせると先に叩かなくなる
非音楽家の先行はおよそ50ミリ秒、プロのドラマーは13から20ミリ秒。ところが音楽家に自分の楽器を持たせると、ずれは2ミリ秒まで縮む。野球の打撃で許される衝突タイミングの誤差は、平均で9.36ミリ秒だった。
意図的練習の質
88研究・11,135人のメタ分析では、意図的練習が説明する成績の分散はゲーム26%、音楽21%、スポーツ18%、教育4%、専門職1%未満だった。1993年のバイオリン研究の追試では、最上位群の18歳までの累積練習は8,224時間、次点群は9,844時間で、差は統計的に有意でなかった。チェスでは、同じ段位に達するまでの練習時間が3,000時間から23,600時間まで開いていた。
フィードバック処理
58人・192試行の実験で、フィードバックを毎回もらった群と半分に減らした群は練習中まったく差がなかったが、24時間後の保持テストでは減らした群の誤差が35%小さかった。要約の長さを1・5・10・15試行と変えた実験では、練習中の成績と2日後の成績の順位が完全に逆転する。自分でフィードバックを要求する方式の利点は、52効果量を集めたメタ分析でバイアスを補正すると g = .44 から g = .107 まで縮んだ。
変動練習設計
絵画のスタイルを学ぶ実験では、78%の参加者が混ぜた条件で成績が良かったのに、78%の参加者がまとめた条件のほうが良いと答えた。一方この効果は、61研究・139効果量のメタ分析で基礎研究の効果量 .57 に対し応用研究では .19、年少の学習者では .10 まで落ちる。応用場面を集めた総説では、60%の研究が効果を見いだせなかった。
表象の精緻化
熟達者の記憶の優位は、意味のある配置に限られる。マスターがひとかたまりとして扱える最大の駒数は、対局局面では平均11.2個だが、でたらめな配置では4.1個に落ちる。イメージ練習の効果は35研究・3,214人のメタ分析で d = .527、身体練習の d = .782 には届かず、しかも約14日で半減する。1995年以降の37研究をまとめ直すと、効果量は r = 0.131 まで下がる。
技術の自動化
40人の学習を脳活動ごと追った研究は、技能習得を3つの局面に分けた。熟達したゴルファーに自分の打ち方を説明させると、そのあとの成績が落ちる。一方、言語化の害を測った有名な効果は、31研究室の追試で -4.01% まで縮んだ——ただし条件を変えると -16.31% に戻った。両方が本当である。
フロー誘発能
フローは狙って入る部屋ではない。入ったあとで名前がつく状態だ
ポケベルを1週間持たせて78人を追った研究は、没入の条件が揃った時間が余暇の17%に対して仕事で54%だったと報告した。一方、挑戦と技能が釣り合ったときに最も没入するという仮説は、経験サンプリングでも、311人の事前登録実験でも支持されなかった。
即興・適応能
即興は無から生まれない。手持ちの型を、その場で並べ替えているだけだ
ジャズピアニスト6人のfMRIでは、外側前頭前野が広く沈み、内側前頭前野が焦点的に立ち上がった。フリースタイル・ラッパー12人でも向きは同じ。ただし39人の研究では、即興の経験が長いほど前頭の活動はむしろ減っていた。標本は6人から39人である。
本番再現性
本番で崩れるのは緊張のせいではない。丁寧にやろうとしたせいだ
熟達した技は、注意を向けられると壊れる。4つの実験がその境界を引き、後の研究は課題の種類によって2つの壊れ方が使い分けられることを示した。一方、外的焦点は73研究1,824人で g = 0.264、プレッシャー下練習は14研究394人で g = 0.67。性格による説明は、そこまで具体的ではない。
自己観察精度
「下手なほど過信する」というあの図は、乱数でもだいたい描ける
医師の自己評価と客観評価を突き合わせた17研究・20比較のうち、13で関係はほとんどないか逆だった。一方、心理学でいちばん有名な過信の図は、乱数を入れてもよく似た形が出る。この単位は、その両方を同時に持ち帰る。
稽古設計力
一晩で20%速くなる。ただし34論文・1,296人が、その20%を値切った
運動課題を学んだ直後に別の課題を学ぶと、最初の技能は壊れる。4時間空ければ壊れない。一晩の睡眠で速度は20%上がると報告された一方、34論文・88実験群・1,296人の統合は、その伸びの相当部分が測り方と疲労と時刻の産物だと結論した。この単位は、その隙間に稽古を設計する。
モデル分析力
上手い人の動画を100回見るより、上手い人と下手な人を並べて見たほうが学べた
観察の効果量は、動きの形については0.77、動きの結果については0.17だった。熟達したモデルだけを見るより、熟達と初学者を混ぜて見たほうが学習が良い。そして、見る前に何を見るかを告げられた人のほうが伸びた。守破離を、この3つの語彙に翻訳する。
技術的創造性
「型を壊せるのは型を持つ者だけ」——ただし、型を持つほど壊さなくなる
現代作家215人が最高作に達するまでの平均は10.6年、デビュー作が最高作だった37人を除くと12.8年。作曲経験と達成の関係は山なりで、頂点は27年から37年あたりにある。制約は創造性を上げるが上げ続けない。そして発散思考テストと実際の創造的達成の相関は0.216しかない。