練習中いちばん下手に見えた並べ方が、あとでいちばん残る
同じ球を100回続けて打つ。だんだん当たるようになる。気持ちがいい。ところが、3種類の球を順不同で打った人は、練習中ずっと下手なままで、後日になると逆転する。厄介なのはそこではない。逆転を体験した当人が、それでもまとめて練習したほうが良かったと答えることのほうだ。
前の単位から:配り方の次は、並べ方
前の単位で扱ったのは、ずれを知らせる回数だった。減らすと練習中は下手に見え、保持テストでは上回る。この単位では、同じ形の逆転が、もっと大きな規模で現れる場所を見る。フィードバックの配り方ではなく、課題そのものの並べ方である。
まとめてやるか、ばらばらにやるか
1979年、シーとモーガンが発表した実験が出発点になっている。参加者は3種類の動作パターンを覚える。片方の群は、1種類ずつまとめて練習する。もう片方は、3種類を順不同で練習する。総回数は同じだ。
練習中は、まとめた群のほうが速く上達した。差がついたのは、10分後と10日後に行われた保持テスト、そしてより複雑な課題への転移テストのほうである。順不同で練習した群が上回った。著者たちはこれをバティグの文脈干渉という考え方で説明した。ばらばらに練習すると、複数の課題が同時に頭の中に置かれるので、区別がより精緻になる、というものだ。
この現象には、はっきりした名前がついている。練習中の出来と、後日の出来は、逆転する。
逆転を、当人はほとんど信じない
運動だけの話ではない。コーネルとビョークが2008年に行った実験では、参加者が12人の画家の作風を覚える。1人につき6枚。片方の条件では同じ画家の絵を続けて見せ、もう片方では別の画家の絵を交ぜて見せる。そのあと、見たことのない絵を出して誰が描いたかを当てさせた。
交ぜた条件の正答率は .61、まとめた条件は .35。差は歴然としている。ところが実験1aでは、交ぜた条件のほうが成績が良かった参加者が78%いた一方で、まとめたほうが同じかそれ以上に良かったと答えた参加者も78%いた。同じ人が、自分の成績と正反対の判断をしている。
著者たちの読み方はこうだ。別の画家の絵が隣り合うことで、違いが見分けやすくなる。しかし本人の実感を作っているのは、その場での分かりやすさのほうであって、そちらはまとめたときに最大化される。
ここまでが、この概念の通常の宣伝文句である。ここから値切る。
実験室を一歩出ると、効き目は縮む
ブレイディが2004年に行ったメタ分析は、61研究から139個の効果量を集めた。全体の平均効果量は .38。それ自体は悪くない数字だが、内訳を見ると話が変わる。実験室で行われた基礎研究では .57、現場のスポーツ技能を扱った応用研究では .19。成人では .50、年少の学習者では .10。ちなみに、集められた研究の平均検出力は .43 しかなかった。
同じ方向の指摘が2007年にもある。バヘイロスらは応用場面を扱った文献を総覧し、実験室では高干渉条件が練習中の成績を下げて学習を促すのに対し、応用場面では研究の60%が効果を観察できていないと述べた。
差が生まれる理由の見当はついている。実験室の課題は単純で、頭を使う部分が大きく、そして退屈だ。現場の技能は複雑で、それ自体が面白く、しかも参加者はすでにある程度できる。まとめて練習しても、実験室ほど楽にはならない。
もう一つ、現場で差が出にくい理由の見当も付けておく。実験室の課題は、実験者が並べ方を変えないかぎり、同じ試行がそのまま繰り返される。ところが現場の技能は、まとめて練習しているつもりでも、相手も、風も、その日の体調も毎回違う。干渉は最初から混ざっているのだ。そこへ順番の入れ替えを足しても、増える分は実験室ほど大きくならない。応用研究の .19 という数字は、効き目が消えたというより、すでに一部を受け取ったあとの上乗せ分を測っている、と読むほうが実態に近い。ただしこれは解釈であって、そう設計して確かめた研究ではない。ここまでに挙げた文献は、どれも並べ方だけを操作していて、現場にもとから入っている変動の量そのものは測っていない。
新しいメタ分析でも、場所と年齢で割れる
最近のものを2つ並べる。
チジらが2024年に発表したメタ分析は、294研究を精査して54研究・延べ2,068人・194個の効果量を統合した。結論は、高い文脈干渉は保持に中程度の効果を持つ、というものだ。ただし内訳がある。実験室では有効だったが、応用場面での利益はほとんど無視できる大きさだった。高齢者では大きく、成人では中程度、年少の参加者では統合効果量が無視できる大きさで統計的に有意でなかった。
アンマールらが同じ2024年に発表した多水準メタ分析は、36研究・183個の統合結果を扱い、もっと辛い。獲得期には低干渉と高干渉に差がなく(効果量 0.1、p = 0.35)、保持後の比較では高干渉が有意に上回るものの効果量は −0.35 と控えめ、事前から保持までの長期的な利得では差が意味のある大きさに達しなかった(効果量 −0.13、p = 0.18)。著者たちの言い方を借りれば、体育やスポーツの場面で高干渉を推奨する根拠は、きわめて限られている。
読み替えるとこうなる。逆転は本物だが、実験室で見えるほど大きくはない。そして初心者と子どもには、ほとんど効かない。
では、何をばらせばいいのか
実務に落とすときに効くのは、全部ばらすか全部まとめるかの二択ではない。1回の稽古の中で、固定するものとばらすものを分けて決めることだ。
固定するのは、達成の判定基準である。何をもって成功とするかが毎回変わると、そもそも自分の出来が測れない。ばらすのは、条件のほうだ。順番、距離、速さ、高さ、相手、道具、立ち位置。料理なら火加減と分量、書なら紙と筆、話芸なら聴き手の数。
そして初心者ほど、ばらす幅を狭くする。年少者と初学者で効果が消えるという知見は、彼らにはまず基本の形を作る時間が必要だ、という当たり前の話に読み替えられる。
ばらし方には流儀の違いもある。同じ課題を条件だけ変えて反復する可変性練習と、毎回わざと動きそのものを少しずつ違えて二度と同じ試行をしない差分学習は、発想が異なる。後者を推す立場の研究者は、先ほどの多水準メタ分析の著者にも名を連ねている。ただし、どちらが優れているかを実技場面で決着させる証拠は、この単位で見てきたとおり、実験室で見えるほど強くない。当面は、判定基準を固定したまま条件をばらす、という最も保守的な形で十分である。
時間・変化:まとめから混ぜへ、切り替えの目安
並べ方は固定ではなく、上達とともに動かすものだ。
最初は、まとめてよい。まだ形が一つも安定していない段階では、ばらす対象そのものが存在しない。次に、一つの形が3回に2回できるようになったら、そこに2つ目を混ぜる。この時点で成功率は落ちる。落ちるのが正常だと知っていることが、続けられるかどうかを分ける。さらに進んだら、本番の並び方に近づける。本番は、あなたの都合で同じ課題を続けさせてはくれない。
効果が現れるまでの時間と、効果が確かめられるまでの時間は、そろっていない。この単位で見た研究の多くは、練習した当日ではなく、10分後と10日後の保持テストで差を測っている。アンマールらの多水準メタ分析が、獲得期には低干渉と高干渉に差を見つけられず(効果量 0.1、p = 0.35)、保持後の比較でだけ高干渉が上回った(効果量 −0.35)のは、この順序をそのまま映している。混ぜて練習した効果は、練習が終わってから遅れて出てくる。だから今日の稽古の出来では、今日の並べ方の良し悪しを判定できない。判定できるのは、早くても翌週の自分である。
逆に、その差がどこまで持つのかは、はっきりしていない。同じメタ分析で、事前から保持までの長期的な利得は意味のある大きさに達しなかった(効果量 −0.13、p = 0.18)。研究が追跡できているのは、長くても数日から数週間だ。年単位で稽古を続けたときに、混ぜた並べ方の差が残るのか、それとも両者が同じところへ収束するのかを言える証拠は、まだない。この単位が扱えるのは、その手前までである。
年齢による違いも、時間の話に読み替えられる。チジらのメタ分析では、効果は高齢者で大きく、成人で中程度、年少の参加者では統合効果量が無視できる大きさで、統計的に有意ですらなかった。ここから読み取るべきは年齢そのものではない。まだ形が一つも安定していない時期は、誰でも年少の参加者に近い、ということだ。切り替えの目安を年ではなく段階で決めるべき理由がここにある。ばらす幅は、形が安定するにつれて少しずつ広げるものであって、最初から本番と同じ並びにしてよいという話ではない。
芸道の通奏低音がここにも効く。試験も採点表もない領域では、練習中の手応えが唯一の指標になりがちだ。そしてその指標は、まとめて練習したときに最も良く見える。逆転が信じられないのは、判断材料が手応えしかないからである。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるのは、いま挙げた手応えの錯覚そのものだ。78%の人が自分の成績と逆の判断をしたという事実は、意志の弱さの話ではない。まとめて練習したときの分かりやすさが、そのまま学習の感触として記録されてしまう、という記憶の性質の話である。
もう一つは、この概念を万能薬として使うこと。効果量は応用場面で .19 まで落ち、年少者では .10、最近のメタ分析では長期的な利得が有意にならないものもある。混ぜれば必ず伸びる、という文が成り立つ場面は、思ったより狭い。
標本の偏りも断っておく。ここに挙げた研究の多くは、大学生を対象に、実験室の単純な運動課題や記憶課題を、数十分から数日の範囲で測ったものだ。年単位の稽古を対象にした証拠はほとんどない。応用場面で効果が縮むという知見自体が、その限界を示している。
偏りの中身を、もう少し具体的に書いておく。ブレイディが集めた61研究の平均検出力は .43 だった。効き目が実際にあったとしても、半分以上の研究はそれを検出できない設計だった、ということである。バヘイロスらが応用場面を総覧して、研究の60%で効果が観察されなかったと報告したのも、現場では効果が小さいことと、標本が小さいことの両方が効いている。数字が割れている領域では、大きく出た結果のほうが引用されやすい。宣伝文句がいつも実験室の値でできているのは、そのためだ。
対象者の偏りも同じ方向を向いている。参加者の多くは欧米の大学生か、記録の残る競技の選手で、課題のほうも、実験室で扱える単純な動作か、絵の作風の判別である。仕事の合間に週2回だけ道具を持つ大人は、どの標本にも入っていない。まして、同じ形を決まった順序で反復することが作法として定まっている領域では、混ぜること自体が段取りとぶつかる。ここから持ち帰ってよいのは、効果量の桁ではなく、練習中の手応えは当てにならない、という一行までだ。
助けるのは、成功率が下がることを事前に予告しておくことだ。今日の後半は成功率が下がる、と決めてから始めれば、下がった数字は失敗ではなく設計どおりの結果になる。
最初の一歩は20分。いま練習している技を3種類選ぶ。前半は3回ずつまとめて9回、後半は順不同で9回。それぞれの成功回数を数えて並べる。だいたい前半のほうが良い数字になる。それでよい。
次の単位は072「表象の精緻化」。この並べ方の効き目を裏で支えているもの——頭の中に置かれた正解の見本のほうへ話を移す。
- Shea & Morgan 1979(JEP: Human Learning and Memory):3種類の動作パターンを、1種類ずつまとめて練習する群と順不同で練習する群に分けた。練習中はまとめた群が速く上達したが、10分後と10日後の保持テスト、およびより複雑な転移課題では順不同の群が上回った
- Kornell & Bjork 2008(Psychological Science):12人の画家の作風を学ぶ課題で、交ぜた条件の正答率 .61 に対しまとめた条件は .35。実験1aでは交ぜた条件で成績が良かった参加者が78%いた一方、まとめたほうが同等以上に良かったと答えた参加者も78%いた
- Brady 2004(Perceptual and Motor Skills):61研究・139効果量のメタ分析で、全体の平均効果量は .38。ただし実験室の基礎研究では .57、現場のスポーツ技能を扱う応用研究では .19、成人 .50 に対し年少の学習者は .10。収集した研究の平均検出力は .43 だった
- Barreiros, Figueiredo & Godinho 2007(European Physical Education Review):応用場面の文献を総覧したところ、実験室と対照的に、応用場面では60%の研究が文脈干渉の操作による正の効果を観察できていなかった
- Czyż et al. 2024(Scientific Reports):294研究を精査し54研究・延べ2,068人・194効果量を統合。高い文脈干渉は保持に中程度の効果を持つが、応用場面での利益はほとんど無視できる大きさで、年少の参加者では統合効果量が無視できる大きさかつ有意でなかった
- Ammar et al. 2024(Educational Psychology Review):36研究・183の統合結果を扱った多水準メタ分析。獲得期には低干渉と高干渉に差がなく(効果量 0.1、p = 0.35)、保持後は高干渉が有意に上回るが効果量 −0.35 と控えめ、事前から保持への長期的利得は有意でなかった(効果量 −0.13、p = 0.18)
- 実務上は、達成の判定基準を固定し、条件のほう(順番・距離・速さ・相手・道具・立ち位置など)をばらす。初心者ほどばらす幅を狭くする。年少者と初学者で効果が消えるという知見は、まず基本の形を作る時間が要るという読み方に対応する
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 同じことをまとめて反復するほうが、確実に身につく | 3種類の動作を順不同で練習した群は、練習中は劣っていたが10分後・10日後の保持と転移で上回った。絵画の作風を学ぶ課題でも、交ぜた条件の正答率 .61 に対しまとめた条件は .35 だった。練習中の出来と後日の出来は逆転する |
| 自分の実感で、どちらの練習法が効いたかは判断できる | 実験1aでは、交ぜた条件のほうが成績が良かった参加者が78%いたのに、まとめたほうが同等以上に良かったと答えた参加者も78%いた。実感を作っているのはその場の分かりやすさで、それはまとめたときに最大化される |
| とにかく練習を混ぜてランダムにすれば、誰でも伸びる | メタ分析では効果量が実験室の .57 に対し応用場面で .19、年少の学習者では .10 まで落ちる。応用場面の総説では60%の研究が効果を見いだせず、36研究の多水準メタ分析では長期的な利得が有意にならなかった |
この単位の教えは、実行すると必ず短期的に損をする。今日の練習の数字は下がり、手応えは悪くなり、しかも見返りは10日後にしか現れない。おまけに研究のほうも、その見返りは実験室の外では思ったほど大きくない、と言っている。それでも並べ替える理由は一つしかない。本番は、あなたの都合に合わせて同じ課題を3回続けてはくれないからだ。まとめて練習した気持ちよさは、まとめて出題される試験でしか換金できない。芸道に、そんな試験はない。
Q1. Shea & Morgan(1979)の実験で、まとめて練習した群と順不同で練習した群の成績は、練習中と、その後の測定でそれぞれどうだったか答えよ。一問一答
Q2. Kornell & Bjork(2008)の絵画課題では、交ぜた条件の正答率が____、まとめた条件が____だった。しかし実験1aでは、交ぜた条件のほうが成績が良かった参加者が____%いた一方、まとめたほうが同等以上に良かったと答えた参加者も____%いた。穴埋め
Q3. Brady(2004)のメタ分析が示した、文脈干渉効果の効果量の内訳として正しいものはどれか。選択
Q4. 2024年に発表された2件のメタ分析(Czyż らと Ammar ら)が、それぞれ何を示したか、規模と但し書きを含めて答えよ。一問一答
Q5. 本文が示した、並べ方を動かしていく順序を正しく並べよ。(一つの形が3回に2回できたら2つ目を混ぜる/本番の並び方に近づける/まだ形が安定していないうちはまとめてよい)並べ替え
いま練習している技のうち、条件の違う3種類を選ぶ(例:3つの距離、3つの速さ、3つのフレーズ、3種類の切り方)。まず前半、1種類ずつ3回続けて計9回やり、種類ごとの成功回数を書く。次に後半、3種類を順不同に並べ替えて計9回やり、同じように成功回数を書く。最後に、前半と後半の合計成功回数を並べて、やりにくさを1から5で書き添える。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
あなたの実験(N=1)を始める → プロジェクトに追加(記録機能は準備中)
- Shea J.B., Morgan R.L. (1979) 'Contextual interference effects on the acquisition, retention, and transfer of a motor skill', Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory 5(2):179-187 — eric.ed.gov
- Kornell N., Bjork R.A. (2008) 'Learning Concepts and Categories: Is Spacing the Enemy of Induction?', Psychological Science 19(6):585-592 — www.academia.edu
- Brady F. (2004) 'Contextual Interference: A Meta-Analytic Study', Perceptual and Motor Skills 99(1):116-126 — gwern.net
- Barreiros J., Figueiredo T., Godinho M. (2007) 'The contextual interference effect in applied settings', European Physical Education Review 13(2):195-208 — eric.ed.gov
- Czyż S.H., Wójcik A.M., Solarská P., Kiper P. (2024) 'High contextual interference improves retention in motor learning: systematic review and meta-analysis', Scientific Reports 14, doi:10.1038/s41598-024-65753-3 — www.nature.com
- Ammar A., Trabelsi K., Boujelbane M.A., Salem A., Boukhris O., Glenn J.M., Zmijewski P., Jahrami H.A., Chtourou H., Schöllhorn W.I. (2024) 'The Effects of Contextual Interference Learning on the Acquisition and Relatively Permanent Gains in Skilled Performance: A Critical Systematic Review with Multilevel Meta-Analysis', Educational Psychology Review 36(2), doi:10.1007/s10648-024-09892-z — link.springer.com