打ち明けすぎて嫌われる人より、黙っていて嫌われる人のほうが多い
重い話をすると引かれる、というのが自己開示についての標準的な恐れである。実験で調べると、罰を受けていたのは打ち明けた側ではなく、答えを避けた側だった。しかも避けた本人だけが、その罰に気づいていない。
閾値の次にくるのは、内容ではなく形だ
前の単位で扱ったのは、口を開くかどうかという一つの閾値だった。断られる確率を実際の何倍にも見積もっているせいで、多くの人が黙るほうを選んでいる、という話だ。
ここからは、口を開いたあとの話になる。何を、どこまで、どの順で話すか。友情の材料が生まれるのはここで、壊れるのもたいていここである。
先に、この単位が扱わないことを言っておく。恋愛関係でどの速さで親密になるべきかという問題は、別の棚が引き受ける。ここで扱うのは、制度的な拘束のない関係——いつ会わなくなっても誰にも咎められない関係——で、自分についての情報をどう出し入れするか、である。拘束がないぶん、出し方の設計は自分の側にしかない。
開示と好意の三つの効果は、同じ大きさではない
1994年、コリンズとミラーが発表したメタ分析は、この領域の見取り図をいまも提供している。彼らが分けたのは、混ざりやすい三つの問いだ。
第一に、自分に打ち明けてくれた人を、私たちは好きになるか。50の独立研究を統合した平均効果は d = 0.281。ある、が、小さい。第二に、私たちはもともと好きな相手により多く打ち明けるか。22研究で d = 0.717。こちらのほうがはるかに大きい。第三に、自分が打ち明けた相手を、その結果として好きになるか。5研究で d = 0.317。
三つの数字の並びが、そのまま実務的な含意になる。もっとも強いのは「好きだから話す」であって、「話したから好かれる」ではない。開示を投入すれば好意が出てくる、という因果の向きは、いちばん弱い線である。
もう一つ、この分析には効き方を左右する条件が出ている。同じ内容でも、それが自分にだけ向けられた話だと受け取られた場合の効果は d = .453、誰にでもしている話だと受け取られた場合は d = .228 だった。深さそのものより、宛先が誰かのほうが効いている。誰にでも同じ身の上話をする人が、なぜか親しくなれないのは、量が足りないからではない。
効いていたのは量ではなく、往復の形だった
では、開示のどこを設計すればいいのか。2013年のスプレッチャーらの実験が、そこを一点だけ動かして測っている。
初対面の学生156人を78組に分ける。全員が同じ構造化された自己開示課題をやる。違うのは順番だけだ。交互条件では、質問と回答を毎回入れ替えながら二回の対話を行う。非交互条件では、最初の対話で片方がひたすら話し、もう片方がひたすら聞く。そして二回目で役割を入れ替える。二回終われば、開示した総量も、聞いた総量も、両条件で同じになる。
結果はこうだ。一回目の対話のあと、交互条件のほうが好意、親密さ、類似性の知覚、対話の楽しさのすべてで高かった。親密さの差は d = 0.87、楽しさの差は d = 0.96 と大きい。
差し引きゼロにならなかったのは、ここからだ。二回目で役割を入れ替え、非交互条件の参加者も結局は同じだけ開示し、同じだけ聞いたあとでも、差は残った。総量が同じでも、投入の形が違えば結果が違う。
自己開示は、蓄積される資源ではなく、往復する運動だということになる。片方向にまとめて渡された情報は、同じ量でも同じ働きをしない。
45分で友人は作れる。ただし、装置つきで
往復の形を強制すると何が起きるか。それを極端にやったのが、1997年のアーロンらの手続きである。
初対面の50組を実験室に入れ、45分間、決められた質問に交互に答えさせる。質問は3セット、各12問の計36問。セットが進むにつれて質問は重くなる。15分ごとに次のセットへ移る。対照群は同じ45分を雑談に使う。
終了後の親密さの得点は、開示条件が4.06、雑談条件が3.25。差は0.88標準偏差にあたる。もう少し身も蓋もない比較もされている。この45分で生まれた親密さは、同じ学生集団が報告する「自分の人生でもっとも近い関係」の分布のおよそ30パーセンタイルに位置していた。つまり、45分で作られた関係は、3割の人の一番の親友より近い、という水準に届いていた。
後続の調査では、この手続きを受けた組の57%がその後も会話をし、35%が一緒に何かをし、37%が授業で並んで座っていた。
この36問は恋愛の文脈で有名になったが、元の論文の主題は友人関係の生成である。そして重要なのは、質問そのものに魔法があるわけではない点だ。効いているのは、交互性が強制されていること、深さが段階的に上がること、そして相手も同じことをすると保証されていることである。日常には、この三つを保証してくれる装置がない。装置がない場所で同じことをやろうとすると、片方だけが深いところへ降りていく事故が起きる。
過剰開示の罰は、たいてい逆を向いている
その事故を恐れて、多くの人は逆側に振れる。言わない、答えない、話題を変える。ここで検算が必要になる。
2016年、ジョン、バラス、ノートンが発表した7つの実験は、隠すことの代償を測っている。参加者は、ある質問に正直に答えた人と、「回答しない」を選んだ人を比較して評価する。
出会いの場面を模した実験1では、参加者の78.9%が、答えを避けた人ではなく正直に答えた人を選んだ。しかも、正直に答えた内容が好ましくない行動——薬物使用、悪い成績、性感染症——であった場合ですら、64%が正直な側を選んだ。採用の場面を模した実験3Bでは、89%が答えを避けた候補者ではなく正直に答えた候補者を選んだ。評価者は、隠した側のほうが実は成績が良いだろうと推測していたにもかかわらず、である。
非対称の核心は実験4Aにある。求職者の立場に置かれた参加者の70.5%は、薬物使用について答えないほうを選んだ。ところが雇用者側は、答えた人のほうを高く評価していた(10点満点で5.3 対 4.4)。
隠した本人だけが、隠すことの代償に気づいていない。理由も測られている。隠す行為が下げるのは、好ましさではなく、信頼できるかどうかの評価のほうだった。
もちろん、これは何でも話すべきだという話ではない。効いているのは、聞かれたことに対して不自然に扉を閉めたときの印象である。話題そのものを持ち出さない自由は、最後まで残っている。
自分の弱さだけが、自分の目には汚く見える
もう一つ、開示の見積もりを狂わせている歪みがある。
2018年、ブルック、ショル、ブレスが7つの研究で示したのは、同じ弱さの表明でも、それが他人の行為であるときと自分の行為であるときで、評価が変わるという現象だ。他人が弱さを見せるのは好ましく映り、自分が同じことをするのは無様に映る。彼らはこれを「美しい混乱」効果と名づけた。原因として挙がっているのは解釈の水準の違いで、自分の弱さは具体的な細部として、他人の弱さは抽象的な全体として処理される。
実務的な読み替えは短い。あなたが「これを言ったら重い」と感じている話は、聞く側の耳には、あなたの耳ほど重く響いていない。この歪みは、標本の大半が欧米の大学生であることを差し引いても、方向としては一貫している。
時間・変化:先につけた差は、あとから埋まらない
この単位でいちばん時間の話らしいのは、スプレッチャーらの二回目の対話の結果だ。
一回目で交互に開示した組と、片方向に開示した組。二回目で役割を入れ替えれば、帳尻は合う。開示量も傾聴量も等しくなる。それでも、好意、親密さ、類似性、楽しさの差は二回目のあとも残っていた。
関係の初期にどういう形で情報が動いたかは、あとから同じ量を注いでも上書きされない、ということになる。友情に契約がないという事実は、ここでは不利に働く。恋愛や結婚なら、初期にこじれても関係を定義し直す機会が制度として用意されているが、友人関係には「仕切り直し」の手続きがない。初期の形が、そのまま既定値として居座る。
だから、順序のほうを設計する価値がある。深さを一段上げたら、相手が同じ段に降りてくるかを一度確認する。降りてこないなら、そこが今日の上限だ。上限は日によって動くし、相手によっても動く。固定するものではなく、毎回読むものである。
人数が増えると、深さは自動的に下がる
最後に、環境側の要因を一つ。
クーニーらが2020年にまとめた総説は、二人の会話と三人以上の会話は程度の差ではなく種類の差だと論じている。人数が増えると、一人あたりの発話時間が減り、順番の調整が複雑になり、聞き手からの反応が薄まる。その結果、社会的な危険の見積もりが上がり、自己呈示への関心が高まって、開示の量も深さも下がる。
ただし著者たち自身が、この方向を支持する既存研究は検定力が十分でなく、追試が必要だと断っている。だから断定はしない。実務上の目安として持てば足りる。深い話をしたいなら、人数を減らす。四人で三時間話しても、二人で三十分話したときの深さに届かないことがあるのは、あなたの人望の問題ではなく、たぶん座席数の問題だ。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるのは、開示を量の問題として持つことだ。もっと本音を話せば距離が縮まる、という発想は、三つの効果のうちいちばん弱い線に賭けている。二つ目は、誰にでも同じ話をすること。宛先が自分だと受け取られない開示は、効果が半分以下になる。三つ目は、恐れの向きを間違えること。人が罰を受けているのは打ち明けすぎたときより、聞かれたことに扉を閉めたときのほうだった。
助けるのは、往復を一段ずつ確認することだ。深さを一段上げたら、相手の返しの段を見る。同じ段が返ってくれば次へ、返らなければそこで止める。この確認は、相手を試す行為ではなく、事故を防ぐ手すりである。もう一つ助けるのは、人数を選ぶことだ。深さを上げたい相手とは、二人で会う。
最初の一歩は今日できる。誰か一人との会話で、いつもより一段だけ深い一文を出し、そのあと相手が返した内容の深さを記録する。返ってきたら、今日はそこまで。返ってこなくても、今日はそこまでだ。
次の単位では、そうやって開いた口から出てくるものの中身——感情そのもの——を扱う。話せば軽くなるという、もう一つの標準的な思い込みを検算することになる。
- Collins & Miller 1994(Psychological Bulletin):開示と好意の3効果は大きさが違う。打ち明けてくれた人を好きになる効果は50研究で d = 0.281、好きな相手に打ち明ける効果は22研究で d = 0.717、打ち明けた結果その相手を好きになる効果は5研究で d = 0.317。いちばん強いのは『好きだから話す』のほう
- 同メタ分析:自分にだけ向けられた話だと受け取られた開示の効果は d = .453、誰にでもしている話だと受け取られた場合は d = .228。深さより宛先が効いている
- Sprecher et al. 2013(JESP 49(5)):初対面156人・78組。交互に開示した条件は、片方向に開示した条件より、1回目の対話後の親密さ d = 0.87、楽しさ d = 0.96 で上回った。総量ではなく往復の形が効いている
- 同研究:2回目で役割を入れ替え、開示量も傾聴量も等しくなったあとも、好意・親密さ・類似性・楽しさの差は残った。初期の形は、同じ量を後から注いでも上書きされない
- Aron et al. 1997(PSPB 23(4)):初対面50組・45分・3セット×12問=36問。親密さは開示条件4.06 対 雑談条件3.25(0.88標準偏差)。生まれた親密さは学生が報告する『人生でもっとも近い関係』の約30パーセンタイルに相当し、後続調査では57%がその後も会話し、35%が一緒に何かをした
- John, Barasz & Norton 2016(PNAS 113(4)):7実験。出会いの場面では78.9%が回答を避けた人より正直に答えた人を選び、内容が薬物使用や性感染症であっても64%が正直な側を選んだ。採用場面では89%が正直に答えた候補者を選んだ。下がるのは好ましさではなく信頼性の評価
- 同研究の非対称:求職者役の70.5%は薬物使用について答えないほうを選んだが、雇用者役は答えた人を高く評価した(5.3 対 4.4)。隠した本人だけが代償に気づいていない
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 本音を多く話すほど、相手との距離は縮まる | 50研究のメタ分析では『打ち明けられた人がその相手を好きになる』効果は d = 0.281 と小さく、いちばん大きいのは『もともと好きな相手に打ち明ける』効果 d = 0.717 だった。因果はむしろ逆向きに強い。しかも誰にでもしている話だと受け取られると、効果は d = .453 から .228 へ半減する |
| 重い話をすると引かれる。だから聞かれても答えないほうが安全だ | 7実験の結果は逆だった。出会いの場面では78.9%が、採用場面では89%が、回答を避けた人ではなく正直に答えた人を選んだ。薬物使用のような内容でも64%が正直な側を選んでいる。隠す行為が下げるのは好ましさではなく信頼性で、隠した本人だけがそれに気づいていない |
| 36の質問には、親密さを生む特別な力がある | 効いているのは質問文ではなく、交互性が強制されること、深さが3セットで段階的に上がること、相手も同じことをすると保証されていることの3点である。日常にはこの装置がないため、同じことをやろうとすると片方だけが深く降りる事故が起きる |
自己開示の実験には、ひとつ意地の悪い含みがある。45分の装置つきで、初対面の相手と、3割の人の親友より近い関係が作れてしまう。つまり多くの友情は、実験室の45分に負ける水準で何年も維持されているということだ。慰めがあるとすれば、負けているのは友情の質ではなく、設計の有無のほうだろう。装置がないところで人は片方向に話し、片方向に聞き、そして帳尻が合っていることを親密さと呼ぶ。合っているのは、たぶん帳尻だけである。
Q1. Collins & Miller 1994 が分けた3つの効果を、効果量の大きい順に並べよ。(打ち明けられた人がその相手を好きになる/好きな相手により多く打ち明ける/打ち明けた結果その相手を好きになる)並べ替え
Q2. 同メタ分析では、開示が自分にだけ向けられたものだと受け取られた場合の効果は d = ____、誰にでもしている話だと受け取られた場合は d = ____ だった。効いているのは深さより ____ である。穴埋め
Q3. Sprecher et al. 2013(156人・78組)で、交互条件と非交互条件の差が「2回目の対話のあとも残った」ことが重要なのはなぜか。実験の設計に触れて説明せよ。一問一答
Q4. Aron et al. 1997 の45分の手続きについて、本文が「効いているのは質問文ではない」とした理由はどれか。選択
Q5. John, Barasz & Norton 2016 が示した「隠すことの代償」について、出会いの場面と採用の場面での割合、および隠した本人の予測との非対称を示す数字を挙げよ。一問一答
今日、誰か一人との会話を選ぶ。相手はできれば二人きりで話せる人にする。会話の中で、いつもより一段だけ深い一文を自分から出す(最近うまくいっていないこと、迷っていること、意外に思われそうな好みなど、内容は何でもよい)。出したあと、相手が返してきた内容を思い出し、それが同じくらいの深さだったか、浅かったか、深かったかを一行で記録する。返ってこなかった場合も、そのまま記録する。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
あなたの実験(N=1)を始める → プロジェクトに追加(記録機能は準備中)
- Collins N.L., Miller L.C. (1994) 'Self-disclosure and liking: A meta-analytic review', Psychological Bulletin 116(3):457-475 — labs.psych.ucsb.edu
- Sprecher S., Treger S., Wondra J.D., Hilaire N., Wallpe K. (2013) 'Taking turns: Reciprocal self-disclosure promotes liking in initial interactions', Journal of Experimental Social Psychology 49(5):860-866 — doi.org
- Aron A., Melinat E., Aron E.N., Vallone R.D., Bator R.J. (1997) 'The Experimental Generation of Interpersonal Closeness: A Procedure and Some Preliminary Findings', Personality and Social Psychology Bulletin 23(4):363-377 — www.stafforini.com
- John L.K., Barasz K., Norton M.I. (2016) 'Hiding personal information reveals the worst', Proceedings of the National Academy of Sciences 113(4):954-959 — www.pnas.org
- Bruk A., Scholl S.G., Bless H. (2018) 'Beautiful Mess Effect: Self–Other Differences in Evaluation of Showing Vulnerability', Journal of Personality and Social Psychology 115(2):192-205 — doi.org
- Cooney G., Mastroianni A.M., Abi-Esber N., Brooks A.W. (2020) 'The many minds problem: Disclosure in dyadic versus group conversation', Current Opinion in Psychology 31:22-27 — www.hbs.edu