業績で説明される分を取り除いても、残った分がなお同じ結果を予測してしまった
評判の順位表は過去の業績の言い換えにすぎない——そう言い切りたくなる。ところが、総合の評判を、過去の財務で予測される成分と、そこから外れた残りに分けた研究は、その両方が平均以上の利益の持続を支持する、と報告した。言い換えにすぎないのなら、残りのほうは何も予測しないはずだった。
組織の評判という資本は、何を測る道具か。
外にいる人たちが、その組織をどう見ているかを、目に見えない資産として扱う道具である。良い評判があれば、同じ商品でも高く売れ、人が集まり、悪いことが起きたときの傷が浅い——そういう言い方がされる。
評判は、実際に測られている。 毎年、複数の評価機関が組織に点数を付け、順位表を作っている。この単位が扱うのは、その順位表が何を測っているのか、という一点である。 外から見られている中身のほうではなく、外から見た評価がどう作られ、分解するとどうなるかのほうを見る。
順位表から、財務の後光を落とす
**1990年に *Academy of Management Journal* 33巻2号へ出た論文**が、この分野の出発点にあたる。米国の大企業を対象に、評判がどこから作られるのかを分析したもので、抄録はこう始まる。
> “Firms compete for reputational status in institutional fields. Managers attempt to influence other stakeholders' assessments by signaling firms' salient advantages.”(企業は制度的な場で評判の地位を競う。経営者は、自社の際立った強みを合図として送ることで、他の利害関係者の評価に影響を与えようとする)
測られているのは、外にいる人たちの評価である。 そして、外にいる人たちがまず見るのは、その組織の過去の成績である。
1994年に同誌37巻5号へ出た論文が、この問題を正面から扱った。後光効果——ある一点が良いと、関係のない項目まで良く見えてしまう傾向のことである。この論文は、ある雑誌が毎年出している評判の順位表について、点数が過去の財務の結果に強く影響されていることを示し、質的な評判を測るには、まずこの後光を取り除かなければならないと論じた。
抄録の一節を引く。冒頭の、雑誌の名前を含む部分は外してある。 抄録そのものも途中で切れている。
> “...are shown to be heavily influenced by previous financial results, thus creating a halo that must be removed before these qualitative reput...”(……は過去の財務の結果に強く影響されていることが示され、それによって作られる後光は、これらの質的な評判を〔測る前に〕取り除かれなければならない)
順位表の点数から、過去の成績で説明できる分を差し引く。 残ったものが、財務以外の評判である、という考え方だ。問題は、その次に起きたことである。
落とした残りと、落とした分の、両方が効いた
**2002年に *Strategic Management Journal* 23巻12号へ出た論文が、この分解を実際にやってみせた。総合の評判を、過去の財務の成績で予測される成分と、そこから外れた残り**の二つに分ける。そして、それぞれが将来の利益とどう関係するかを見る。
> “We also decompose overall reputation into a component that is predicted by previous financial performance, and that which is ‘left over’, and find that each (orthogonal) element supports the persistence of above-average profits over time.”(我々はまた、総合の評判を、過去の財務の成績によって予測される成分と、そこから外れた残りに分解し、その(互いに直交する)要素のそれぞれが、時間を通じた平均以上の利益の持続を支持することを見出した)
直交するというのは、二つの成分が互いに重なりを持たない——片方が大きいことが、もう片方の大小と結びつかない——という意味である。重なりを取り除いたうえで、それぞれを別々に見た、ということだ。
そして、両方が効いた。 業績で説明される成分も、残りのほうも、どちらも平均以上の利益が続くことを支持した。
ここが、この単位で取り違えられやすいところである。 「評判の順位表は、過去の業績の言い換えにすぎない」と言い切ってしまうと、この論文を裏切る。 言い換えにすぎないなら、残りのほうは何も予測しないはずだった。実際には、残りも予測した。
だから、値切りの形はこうなる。業績で説明される分を取り除いても、残った分がなお同じ結果を予測してしまう。 つまり、この順位表が何を測っているのかを、特定できない。
その55%は、当方が原典で確かめられなかった
後光がどれくらい大きいのかを表す数字が、二次の資料には出てくる。
**2011年に *Corporate Reputation Review* 14巻1号へ出た論文の要旨に、こう書かれている——1991年の調査データを用いた1994年の研究は、総合評価のばらつきの55%が財務の成績で説明できると結論した。**
当方は、この55%を原典で確かめられていない。 原典は有料で、公開されている版が無く、抄録も途中で切れている。確かめられたのは、二次の資料にそう書いてある、というところまでである。
だから、この数字は、この単位の主張の土台にしない。 土台にできるのは、原典自身が抄録で書いている「過去の財務の結果に強く影響されている」という向きまでである。数字がどれくらい大きいかは、書けない。
ついでに言えば、この単位の出発点にあたる1990年の論文の標本の規模も、当方は二次の記述でしか読めなかった。 分かるのは、対象が米国の大企業だったことまでである。
そもそも、何についての評判なのか
順位表そのものを疑った論文も、早い時期から出ている。
**1994年に *Journal of Management* 20巻1号へ出た論文は、この順位表について競合する測定の模型を突き合わせ、研究に使うかぎりでの有用性は、その企業が財務上の目標を追い求めていると知覚されている程度を測ることに限られる、と論じた。そのうえで、この順位表で社会的責任・品質・利害関係者への配慮といった別の概念を測ったつもりになっていた過去の研究**を、順に検討し直している。
**2000年に *Journal of Management* 26巻6号へ出た論文**は、もっと短く言い切る。
> “Past research tested this by using ... ratings to measure reputation, but these ratings are theoretically weak.”(過去の研究は、……の評価を使って評判を測ることでこれを検証してきたが、これらの評価は理論的に弱い)
引用のなかの伏せた部分は、雑誌の名前である。 同じ論文は、代わりに報道のなかでの評判を測る方法を提案し、それが資源として業績を高めることを示した。ただしその実証の対象は商業銀行だけである。
**2005年に *Academy of Management Journal* 48巻6号へ出た論文は、評判を二つの次元に分けた。質の高いものを作れるという知覚と、人の頭のなかでどれだけ際立っているかである。ある国の経営大学院を対象にした分析で、際立ちのほうは有力な第三者の選択から生じ、好ましい評判に伴う価格の上乗せに大きく寄与する**という結果が出ている。
並べると、順位表が測っているとされるものは、財務目標の追求・報道での扱われ方・作れるものの質・頭のなかでの際立ち、と少なくとも四通りある。 そして、どれを測っているのかを分離しようとした試みが、両方効くという結果に着いた。
時間・変化:同じ順位表が、十年以上のあいだ材料だった
年代順に並べると、こうなる。1990年に評判がどこから作られるかが分析され、1994年に後光の除去が提案され、同じ1994年に「そもそも何についての評判か」が問われ、2000年に順位表は理論的に弱いと書かれ、2002年に業績成分と残差の両方が効くと出た。
このうち1990年・1994年の二本・2002年は、ほぼ同じ材料を見ている。 米国の大企業について、米国の経営者と証券アナリストが答えた順位表である。測る側も、測られる側も、ほとんど動いていない。 2000年の研究はその順位表を離れて報道のなかでの評判に乗り換え、2005年の研究が対象にしたのは経営大学院だった。
動いたのは、その順位表を何と呼ぶかのほうだった。 評判、レピュテーション資本、無形の資産。呼び名が増えるあいだ、材料は同じところにあった。 増えた呼び名のうち、資本という語だけが、残高があって増減するものという含みを持ち込んでいる。その含みは、順位表の側からは出てきていない。
そして、成績のばらつきのうちどこまでを組織の側に割り当ててよいのか、という問いは、評判についてもそのまま残っている。 順位表の点数を作っているのは、その組織の過去の成績を知っている人たちだからである。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるものの筆頭は、順位表の点数を、順位表が測ると称しているものの証拠として扱うことである。原典は、点数が過去の財務の結果に強く影響されると書き、別の論文は、研究に使えるのは財務目標の追求が知覚されている程度までだと書いている。
もう一つ。逆向きに振り切って、「評判は業績の言い換えにすぎない」と言うこと。 業績で説明される成分と、そこから外れた残りの両方が、平均以上の利益の持続を支持した。言い換えにすぎないなら、残りは何も予測しなかったはずである。
この単位では、どの評価機関の順位表が良いとも悪いとも書かない。 どの組織が良い・悪いという判断も、株式の売り買いの話も書かない。書けるのは、その点数が何から作られていて、分解すると何が起きたか、までである。
標本の偏りを断っておく。ここで引いた実証は、米国の大企業についての順位表、米国の商業銀行、ある国の経営大学院である。 小さい商い、非営利、行政、家業は、この材料のどこにも入っていない。 数字の大きさではなく、分解したときに何が起きたかのほうを持ち帰るのが、この単位の使い方である。
助けるのは、外から見える自分の材料を、業績の数字と、それ以外に分けてみることである。分けたあとで、それ以外の側に何が残るかを見る。
最初の一歩は5分。すでに公開している自分の資料から、外の人が目にする材料を三つ拾い、それぞれが業績の数字か、それ以外かを書き分ける。 他人の評価は見ない。自分が出したものだけを見る。
次の単位は 284「アライアンス・協業開放性」——他の組織と組むことの成果が、どう測られてきたかを扱う。掛け算の別の項で、順番に開ける必要はないが、開けていない引き出しの分だけ、積の上限は低いままである。
- 1990年のAcademy of Management Journal 33巻2号は、企業が制度的な場で評判の地位を競い、経営者が自社の際立った強みを合図として送ることで他の利害関係者の評価に影響を与えようとする、と述べている。対象は米国の大企業で、標本の規模は当方が二次の記述でしか読めなかったため書かない。
- 1994年のAcademy of Management Journal 37巻5号は、ある雑誌が毎年出している評判の順位表について、点数が過去の財務の結果に強く影響されており、質的な評判を測る前にこの後光を取り除かなければならないと論じた。後光効果とは、ある一点が良いと関係のない項目まで良く見えてしまう傾向のことである。
- 2002年のStrategic Management Journal 23巻12号は、総合の評判を、過去の財務の成績によって予測される成分と、そこから外れた残りに分解し、その互いに直交する要素のそれぞれが、時間を通じた平均以上の利益の持続を支持することを見出した。両方が効いた、というのがこの単位の中心にある結果である。
- 後光がばらつきの55%を占めるという数字は、2011年のCorporate Reputation Review 14巻1号の要旨に、1994年の研究がそう結論したと書かれているものである。当方は原典で確かめられておらず、原典は有料で公開版が無い。この数字は主張の土台にしない。
- 1994年のJournal of Management 20巻1号は、この順位表について競合する測定の模型を突き合わせ、研究に使うかぎりでの有用性は、その企業が財務上の目標を追い求めていると知覚されている程度を測ることに限られる、と論じた。そのうえで、社会的責任・品質・利害関係者への配慮を測ったつもりでいた過去の研究を検討し直している。
- 2000年のJournal of Management 26巻6号は、過去の研究が使ってきた評価は理論的に弱いと明言し、代わりに報道のなかでの評判を測る方法を提案した。ただしその実証の対象は商業銀行だけである。2005年のAcademy of Management Journal 48巻6号は、評判を、質の高いものを作れるという知覚と、頭のなかでの際立ちの二つの次元に分け、際立ちが有力な第三者の選択から生じ、価格の上乗せに大きく寄与すると報告した。
- 1990年・1994年の二本・2002年の研究は、ほぼ同じ材料を見ている。米国の大企業について、米国の経営者と証券アナリストが答えた順位表である。2000年の研究は、その順位表は理論的に弱いとして報道のなかでの評判に乗り換えており、2005年の研究が対象にしたのは経営大学院である。順位表が測っているとされるものは、財務目標の追求・報道での扱われ方・作れるものの質・頭のなかでの際立ちと少なくとも四通りあり、どれを測っているのかを分離しようとした試みが、両方効くという結果に着いた。
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 評判は資産である。評判が良ければ業績が上がる | 順序が逆でありうる。1994年にAcademy of Management Journal 37巻5号へ出た論文は、ある雑誌が毎年出している評判の順位表について、点数が過去の財務の結果に強く影響されていることを示し、質的な評判を測る前にこの後光を取り除かなければならないと論じた。点数を付ける人たちは、その組織の過去の成績を知っている。 |
| だから、評判の順位表は過去の業績の言い換えにすぎない | 2002年にStrategic Management Journal 23巻12号へ出た論文は、総合の評判を、過去の財務の成績で予測される成分と、そこから外れた残りに分解し、その互いに直交する要素のそれぞれが、時間を通じた平均以上の利益の持続を支持する、と報告した。言い換えにすぎないのなら、残りのほうは何も予測しなかったはずである。この単位の値切りは、言い換えだという断定ではなく、何を測っているのかを特定できない、というところにある。 |
| 後光は、順位表のばらつきの55%を占めることが分かっている | この55%は、2011年にCorporate Reputation Review 14巻1号へ出た論文の要旨に、1991年の調査データを用いた1994年の研究がそう結論したと書かれているものである。当方は原典でこの数字を確かめられていない。原典は有料で、公開されている版が無く、抄録も途中で切れている。書けるのは、原典が抄録で述べている「過去の財務の結果に強く影響されている」という向きまでである。 |
評判を資本と呼ぶと、話は途端に扱いやすくなる。資本には残高があり、残高は増えたり減ったりするものだからである。皮肉なのは、その残高を測るために作られた順位表を分解してみたら、業績で説明できる分と、そうでない分の、どちらもが同じ未来を言い当ててしまったことだ。二つに割ったのに、両方が当たる。割った意味は、どこへ行ったのだろう。
Q1. 2002年の研究は、総合の評判を、過去の ____ の成績によって予測される成分と、そこから外れた ____ に分解し、その互いに ____ する要素の ____ が、時間を通じた平均以上の利益の持続を支持することを見出した。穴埋め
Q2. 1994年にJournal of Managementへ出た論文は、この順位表の、研究に使うかぎりでの有用性は、その企業が ____ 上の目標を追い求めていると ____ されている程度を測ることに限られる、と論じた。2000年に同誌へ出た論文は、これらの評価は理論的に ____ と明言している。穴埋め
Q3. 後光効果とは何か。そして1994年にAcademy of Management Journalへ出た論文は、この順位表について何を示し、何を提案したか。一問一答
Q4. 後光がばらつきの55%を占める、という数字について、この単位がどう扱っているかを書け。理由も添えること。一問一答
Q5. この単位で引いた研究が、同じ順位表について「何を測っている」と述べてきたかを、四通り挙げよ。一問一答
紙かメモアプリを開く。すでに公開している自分の資料(自分や自分の組織のウェブページ、公開している実績や事例、配布した資料、自分の発信のいずれでもよい)を見て、外の人が目にする材料を三つだけ書き出す。次に、その三つそれぞれに、業績の数字か、それ以外かの札を付ける。最後に、それ以外の側に付いた材料について、それが何を伝えていることになっているのかを一言ずつ書く(品質、続いている年数、扱っている分野、関わっている相手の種類など)。他の組織の評判は見ない。評価機関の順位や点数は調べない。誰にも尋ねない。自分が出したものだけを見る。いま組織に属していない場合は、自分が続けている取り組みについて公開しているもので行えばよい。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
あなたの実験(N=1)を始める → プロジェクトに追加(記録機能は準備中)
- Fombrun C., Shanley M. (1990) 'What's in a Name? Reputation Building and Corporate Strategy', Academy of Management Journal 33(2):233-258, doi:10.2307/256324 — doi.org
- Brown B., Perry S. (1994) 'Removing the Financial Performance Halo from Fortune's Most Admired Companies', Academy of Management Journal 37(5):1347-1359, doi:10.2307/256676(原題では Most Admired が引用符で括られている) — doi.org
- Roberts P.W., Dowling G.R. (2002) 'Corporate reputation and sustained superior financial performance', Strategic Management Journal 23(12):1077-1093, doi:10.1002/smj.274 — doi.org
- Deephouse D.L. (2000) 'Media Reputation as a Strategic Resource: An Integration of Mass Communication and Resource-Based Theories', Journal of Management 26(6):1091-1112, doi:10.1177/014920630002600602 — doi.org
- Fryxell G.E., Wang J. (1994) 'The Fortune Corporate Reputation Index: Reputation for What?', Journal of Management 20(1):1-14, doi:10.1177/014920639402000101(原題では Reputation が引用符で括られている) — doi.org
- Rindova V.P., Williamson I.O., Petkova A.P., Sever J.M. (2005) 'Being Good or Being Known: An Empirical Examination of the Dimensions, Antecedents, and Consequences of Organizational Reputation', Academy of Management Journal 48(6):1033-1049, doi:10.5465/amj.2005.19573108 — doi.org
- Flanagan D.J., O'Shaughnessy K.C., Palmer T.B. (2011) 'Re-Assessing the Relationship between the Fortune Reputation Data and Financial Performance: Overwhelming Influence or Just a Part of the Puzzle?', Corporate Reputation Review 14(1):3-14, doi:10.1057/crr.2011.4 — doi.org