機械は、誰が好かれるかは当てた。この二人だから、の部分だけ当てられなかった
相性を計算します、という売り文句は、計算の中身を見せない。見せられるほうも、たいてい確かめない。実際に100項目を超える自己申告を機械学習にかけた研究は存在していて、そこで唯一まったく当たらなかったのが、相性と呼ばれている部分である。
前の単位で、感情を抑えることの代償が、抑えた本人の中ではなく、話し相手の側で測って初めて見えることを見た。ここから先は、自分の側を整える段を離れて、相手を見る段に入る。
この単位が扱うのは一点——「合うかどうか」と呼ばれているものが、証拠の上では何と何の話なのかである。相手の選び方は扱わない。理想の条件の立て方も扱わない。
「相性」という一語に、三つの別のものが入っている
ある人がある人をどれだけ望むか、という値は、統計の上では三つに割れる。一つめ、その人がだいたい誰に対しても人を望みやすいかどうか。二つめ、その人がだいたい誰からも望まれやすいかどうか。三つめが、この二人の組み合わせだから起きる分である。 研究の言い方では順に、本人由来の分、相手由来の分、二人組由来の分と呼ばれる。俗に相性と呼ばれているのは、三つめだけである。
区別が面倒に見えるなら、逆から言えばいい。「あの人は誰とでもすぐ仲良くなる」は一つめの話、「あの人はよく好かれる」は二つめの話で、どちらも二人組の話ではない。 相性という語は、この三つを平気で一つの数字にまとめてしまう。
値切り:相性はアルゴリズムで予測できる
米国で2017年に *Psychological Science* へ出た研究は、そこを正面から測っている。交際相手のいない学部生を集め、事前に100項目を超える自己申告に答えてもらった。 性格、価値観、相手に求める条件、関係についての考え方——過去の研究が配偶者選択に関わるとしてきた測度である。そのうえで、参加者が1回4分ずつ、その場にいる異性の参加者全員と会った。
標本は二つある。2005年の7回のイベントに参加した学部生163名(女性81・男性82、平均19.6歳)と、2007年の8回のイベントに参加した学部生187名(女性93・男性94、平均19.6歳)。 異性の相手とだけ会う設計であることは、そのまま書いておく。
ランダムフォレストという機械学習の手法にかけた結果は、こうなった。一つめの成分は4%から18%、二つめは7%から27%が説明できた。 そして三つめ——要旨の言い方をそのまま置くと、事前に報告された特性と選好のどんな組み合わせを使っても、二人組由来の分は予測できなかった。
数字はもっと具体的に出ている。男性の女性への欲求について説明できた分散は −4.55% から −0.18%、女性の男性への欲求については −2.68% から 1.30% だった。 負の値は、モデルが当てずっぽうより悪かったという意味である。
そして、この単位でいちばん効く一文はここにある。片方の標本で作ったモデルを、もう片方の標本に当てて確かめている。 2005年の標本で作ったモデルで2007年の標本の二人組由来の欲求を予測したとき、最良でも分散の0.1%未満しか予測できなかった。
同じデータの中で後から説明をつけることと、まだ見ていないデータで先に当てることは、別のことである。 相性を計算する、と言うときに必要なのは、後者のほうである。要旨の結論は控えめだが正確だ——人の交配における適合の要素は、二人が出会う前に予測するのが難しい。
43のデータセットを集めても、変わる分は当たらない
同じ第一著者が2020年に *PNAS* へ出した研究は、規模を変えて同じ問いを追いかけた。29の研究室から集めた43の二者縦断データセットを統合し、機械学習で関係の質を予測している。
よく当たったのは、その関係について本人が答えたことだった。相手のコミットメントをどう感じているか、感謝、性的な満足、相手が満足していると思うか、葛藤。これらで初回時点の分散の最大45%、各研究の終了時点で最大18%が説明できた。個人差の変数でも21%と12%である。そして——自分が答えた変数は、相手が答えた変数の2倍から4倍を説明した。 相手の回答は、自分の回答の外側に何も足さなかった。
ところが最後に、こう書かれている。関係の質の変化——研究期間のあいだに上がったか下がったか——は、自己申告のどんな組み合わせからも、ほとんど予測できなかった。
測れているのは、いまどう感じているかである。これからどう動くかではない。
「似ているほど長続きする」のほうも、思うことのほうが効いている
もう一つの俗説、価値観が似ているほど長続きする、を見る。
米国で2013年に *Personal Relationships* へ出た研究は、実際に似ているかと似ていると思っているかを、同じ場面で同時に測った。学部生187名(うち女性93名、平均19.6歳)が8回のスピードデートに参加し、1回4分で11人か12人と会う。 事前の質問紙で実際の類似性を、各回の直後に知覚された類似性を測っている。
結果は割れた。全般的に似ていると感じた度合いは β = .75(t(1985) = 54.21, p < .001)と強く魅力を予測した。 一方、14の特性にわたって計算した実際の類似性の統合値は β = −.006(z = −0.98, p = .325)で、ゼロと区別がつかなかった。
2025年に *Journal of Social and Personal Relationships* へ出たスコーピングレビューは、すでに関係のなかにいる人を対象に類似性と関係の帰結を測った339本を整理して、こう書いている——結果はおおむね割れている。類似性の種類でも測り方でも同じで、実際の類似性より知覚された類似性のほうが効果は強い。世間の思い込みとは違い、類似性が普遍的により良い関係の帰結と結びついているようには見えない。
ついでに、この効果の証拠がどこから来ているかも見ておく。2013年の別のメタ分析は、似ている人に惹かれるという効果について、実験室で行われた240件の研究を統合している。紙の上で条件を操作した実験室の研究が、証拠の主要な供給源である。
「アルゴリズム」という語が指しているもの
米国の心理学者5名が2012年に *Psychological Science in the Public Interest* へ出した長大な検討は、オンラインの出会いの仕組みを三つに分けた。会える相手の範囲、やりとりの手段、そして組み合わせの計算である。 三つめについての結論は、一行で書かれている——数学的なアルゴリズムが働くという、組み合わせを売る側の主張を支持する説得力のある証拠は無い。他の組み合わせ方より優れた恋愛上の帰結をもたらす、という証拠が無い。
ここは正確に読んでほしい。アルゴリズムが間違っていると証明された、という話ではない。検証できる形で外に出ていない、という話である。 計算の中身も、検証の結果も、売り手の側が持っている。
時間・変化:測る時期によって、測っているものが入れ替わる
時間の軸に並べると、この単位の話は形が変わる。
会う前——測れるのは自己申告だけである。100項目を超えて測っても、二人組由来の分は出てこない。会った直後——ここで初めて、知覚された類似性のような、二人のあいだで生まれる量が測れるようになる。β = .75 が出るのはこの時点である。続いているあいだ——測れるのは、相手のコミットメントをどう感じているか、感謝、葛藤といった、関係についての本人の答えになる。
つまり、時期が進むほど、測れる量は「二人のあいだのもの」に近づく。 ところが助言が欲しいのは、いちばん測れない時点、すなわち会う前である。予測の精度がいちばん低い時点に、いちばん強い売り文句が立っている。
逆向きには進まない。関係の質の変化だけは、どの時点から測っても予測できていない。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるものの筆頭は、相性という一語を、三つの成分に割らないまま使うことである。割らずに使うと、「誰とでも仲良くなれる人」と「よく好かれる人」と「この二人だから起きること」が、同じ一つの数字に見える。売り文句が計算しているのは、たいてい前の二つのほうである。
標本の偏りを断っておく。ここまでの証拠は、米国の大学生と、オンラインで募集に応じた人から採られたものが大半で、異性の相手とだけ会う設計のスピードデートが中心である。日本の恋愛や結婚を対象にした査読研究はごく少ない。 実験室の初対面と実際の交際は別物で、効果は短い期間で測られたものが多い。そして——続いた関係のデータだけが残る、という逆向きを排除できない。 別れた人は追跡から抜け、質問紙に答えているのは続いている人である。43のデータセットも、そこは同じである。
助けるのは、自分が「合う」と言うときに何を指しているかを、一度だけ書き出して分けてみるという一手である。相手ひとりの性質を指しているのか、二人のあいだに起きることを指しているのか。分けると、相手ひとりの性質のほうが圧倒的に多いことが、たいてい自分の目にも見える。見えたうえで、それをどう使うかは自分で決めればよい。
最初の一歩は5分。自分が相性という語で言っている条件を5つ書き出し、相手ひとりの性質か、二人のあいだに起きることかで印を分ける。 それだけでよい。
次の単位は 118「関心シグナル知覚力」——相手から自分に向けられているらしい合図を、実際どこまで読めているのか、という話へ進む。
- 米国・2017年に Psychological Science へ出たスピードデート研究(2005年の163名と2007年の187名、1回4分、事前に100項目超の自己申告)は、ランダムフォレストで本人由来の分を4〜18%、相手由来の分を7〜27%説明したが、二人組由来の分は事前に報告されたどの組み合わせからも予測できなかった
- 同じ2017年の研究で、片方の標本で作ったモデルをもう片方の標本に当てたところ、二人組由来の欲求について予測できたのは最良でも分散の0.1%未満だった。同じデータの中で後から説明することと、まだ見ていないデータで先に当てることは別である
- 同じ2017年の研究では、男性の女性への欲求について説明できた分散が −4.55% から −0.18%、女性の男性への欲求については −2.68% から 1.30% で、負の値は当てずっぽうより悪かったことを意味する
- 米国・2020年に PNAS へ出た研究は、29の研究室から集めた43の二者縦断データセットを統合し、関係についての本人の回答で初回時点の分散の最大45%、終了時点で最大18%を説明した。自分の回答は相手の回答の2〜4倍を説明したが、関係の質の変化はどんな組み合わせからもほとんど予測できなかった
- 米国・2013年に Personal Relationships へ出た研究は、学部生187名の8回のスピードデートで、全般的に似ていると感じた度合いは β = .75(t(1985) = 54.21, p < .001)で魅力を予測したが、14特性にわたる実際の類似性の統合値は β = −.006(z = −0.98, p = .325)だった
- 2025年に Journal of Social and Personal Relationships へ出たスコーピングレビューは、すでに関係のなかにいる人を対象にした339本を整理し、類似性と関係の帰結の結びつきはおおむね割れており、類似性が普遍的により良い帰結と結びついているようには見えないと述べた。似ている人に惹かれるという効果の証拠は、実験室で行われた240件の研究を統合したメタ分析が示すとおり、実験室が主要な供給源である
- 米国の心理学者5名が2012年に Psychological Science in the Public Interest へ出した検討は、組み合わせを売る側が主張する数学的なアルゴリズムが働くという説得力のある証拠は無い、他の組み合わせ方より優れた恋愛上の帰結をもたらす証拠が無い、と結論した。間違っていると証明されたのではなく、検証できる形で外に出ていない
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 相性はアルゴリズムで予測できる | 米国・2017年の研究は、交際相手のいない学部生163名と187名に事前に100項目を超える自己申告を取り、1回4分のスピードデートを行った。ランダムフォレストは本人由来の分を4〜18%、相手由来の分を7〜27%まで説明したが、二人組由来の分は、事前に報告されたどの特性と選好の組み合わせを使っても予測できなかった。片方の標本で作ったモデルをもう片方に当てたときに予測できたのは、最良でも分散の0.1%未満である。売り文句の側については、2012年の検討が、数学的なアルゴリズムが働くという主張を支持する説得力のある証拠は無いと結論している。間違っていると証明されたのではなく、検証できる形で外に出ていない |
| 価値観が似ているほど長続きする | 米国・2013年に学部生187名のスピードデートで実際の類似性と知覚された類似性を同時に測った研究では、似ていると感じた度合いが β = .75 で魅力を予測したのに対し、14特性にわたる実際の類似性の統合値は β = −.006(p = .325)で、ゼロと区別がつかなかった。2025年に339本を整理したスコーピングレビューも、類似性と関係の帰結の結びつきはおおむね割れており、実際の類似性より知覚された類似性のほうが効果が強い、類似性が普遍的により良い帰結と結びついているようには見えない、と述べている |
| たくさんのカップルを長く追跡すれば、この先どうなるかは分かる | 米国・2020年に29の研究室の43の二者縦断データセットを統合した研究は、いま関係の質が高いか低いかについては、関係についての本人の回答から初回時点で最大45%を説明した。ところが、その質が研究期間のあいだに上がるか下がるかは、自己申告のどんな組み合わせからもほとんど予測できなかった。当たっているのは現在の状態であって、これからの変化ではない |
皮肉なのは、いちばん当たらない時点に、いちばん強い売り文句が立っていることのほうである。会ってしまえば、合うかどうかは本人にだんだん分かってくる。分かってくる頃には、もう計算は要らない。計算が売れるのは、まだ誰にも分からない時点だけである。そして、まだ誰にも分からない、という一点においては、売り手の言い分は完全に正しい。
Q1. 米国・2017年のスピードデート研究では、機械学習は本人由来の分散を4〜18%、相手由来の分散を7〜27%説明した。しかし( )由来の分は、事前に報告されたどの特性と選好の組み合わせを使っても予測できなかった。穴埋め
Q2. 同じ研究で、片方の標本で作ったモデルをもう片方の標本に当てて確かめたとき、二人組由来の欲求について予測できたのは、最良でも分散の( )未満だった。穴埋め
Q3. 米国・2013年に学部生187名のスピードデートで、実際の類似性と知覚された類似性を同時に測った研究は、それぞれについてどんな値を報告したか。一問一答
Q4. 米国・2020年に43の二者縦断データセットを統合した研究で、自己申告のどんな組み合わせからもほとんど予測できなかったのはどれか。選択
Q5. 2012年に Psychological Science in the Public Interest へ出た検討が、組み合わせの計算について述べた結論はどれか。選択
紙かメモアプリを開く。自分が誰かについて相性が良いと言うとき、頭のなかで実際に使っている条件を5つ書き出す。良い悪いの評価ではなく、条件の言葉で書く。書き終えたら、5つそれぞれの左に印を1つ付ける。相手ひとりの性質を指しているもの(性格、価値観、好み、経歴など、その人が一人でいても言えること)には丸を、二人のあいだに起きることを指しているもの(話していて間が持つ、沈黙が気にならない、言い直しが要らないなど、相手がいて初めて言えること)には四角を付ける。丸と四角の数を数えて書き添える。特定の誰かを思い浮かべる必要はなく、思い浮かべた場合もその人については何も書かない。誰にも見せない。交際相手のいない読者や、いま恋愛をしない選択をしている読者は、一緒に長く過ごしている人や、続けている活動について同じ形で書き出せば、そのまま成立する。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
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- Joel S., Eastwick P.W., Finkel E.J. (2017) 'Is Romantic Desire Predictable? Machine Learning Applied to Initial Romantic Attraction', Psychological Science 28(10):1478-1489, doi:10.1177/0956797617714580 — doi.org
- Joel S., Eastwick P.W., Allison C.J. et al. (2020) 'Machine learning uncovers the most robust self-report predictors of relationship quality across 43 longitudinal couples studies', PNAS 117(32):19061-19071, doi:10.1073/pnas.1917036117 — doi.org
- Tidwell N.D., Eastwick P.W., Finkel E.J. (2013) 'Perceived, not actual, similarity predicts initial attraction in a live romantic context: Evidence from the speed-dating paradigm', Personal Relationships 20(2):199-215, doi:10.1111/j.1475-6811.2012.01405.x — doi.org
- From A., Diamond E., Kafaee N., Reynaga M., Edelstein R.S., Gordon A.M. (2025) 'Does similarity matter? A scoping review of perceived and actual similarity in romantic couples', Journal of Social and Personal Relationships 42(10):2780-2802, doi:10.1177/02654075251349720 — doi.org
- Montoya R.M., Horton R.S. (2013) 'A meta-analytic investigation of the processes underlying the similarity-attraction effect', Journal of Social and Personal Relationships 30(1):64-94, doi:10.1177/0265407512452989 — doi.org
- Finkel E.J., Eastwick P.W., Karney B.R., Reis H.T., Sprecher S. (2012) 'Online Dating: A Critical Analysis From the Perspective of Psychological Science', Psychological Science in the Public Interest 13(1):3-66, doi:10.1177/1529100612436522 — doi.org