18か月で、家族への親しさは上がり、友人への親しさだけが下がった
友情には更新手続きがない。だから多くの人は、自分が関係を「続けている」と思っている。実際には、続いていないことに気づいていないだけのことが多い。同じ18か月を過ごした人たちを追いかけると、家族との距離は縮み、友人との距離だけが開いていく。
前の単位で、既定の終わり方を見た
前の単位で扱ったのは、友情の終わり方だった。契約も式もない関係の既定値は自然消滅であり、誰も決断しないまま関係は静かに閉じる。桃の区間はそこから始まる。既定値を上書きするには、何をどれだけやればいいのか。
先に結論を書いておく。上書きするのは意思ではない。行動の頻度と種類である。そして厄介なのは、この上書きに終わりがないことだ。恋愛や結婚には更新の手続きがあり、家族には血縁という自動更新がついている。友情にはどちらもない。続けるという決定を、毎回ゼロから下し直すしかない。
18か月で、片方だけが減衰した
ロバーツとダンバーが2015年に報告した追跡研究は、この非対称をきれいな形で取り出している。高校から大学への移行期にあたる若者の人間関係を、開始時点、9か月後、18か月後の3時点で測った。参加者は30人で始まり、全期間を完走したのは25人。追跡された相手は延べ1,291人にのぼる。参加者のおよそ半分は地元に残り、半分は進学のために土地を離れた。
結果は非対称だった。家族への情緒的な親しさは上がり、友人への親しさは下がった。同じ18か月、同じ本人、同じ生活の変化のなかで、片方だけが目減りしている。
面白いのは、その減衰が止まった条件のほうだ。友人関係の質の低下は、その関係に注いだ努力の量で食い止められていた。ただし、何が効くかは一様ではない。女性では話す頻度を増やすことが、男性では一緒に何かをする回数を増やすことが、それぞれ低下を防いでいた。同じ「努力」でも、投入先が違えば結果も違う。
この結果を持ち帰る前に、規模の話をしておく。開始時点で30人、18か月を完走したのは25人である。延べ1,291人というのは追跡された相手の数であって、参加者の数ではない。しかも対象は、高校から大学へ移るという、人生でもっとも交友網が動く時期にいた若者だった。半分は地元に残り、半分は土地を離れている。ここで観察された減衰は、いわば網が揺さぶられている最中の18か月のものであって、生活が落ち着いた30代や40代の18か月に同じ角度で起きるかどうかは、この研究からは言えない。男女で効く動作が違ったという部分も、完走した25人をさらに二つに割った先の話である。向きは示唆的だが、これを性差の確定として持ち歩くには、標本が小さすぎる。
血縁は放っておいても持つ。友情にその特権はない
なぜ友人だけが減るのか。同じ研究者たちが2011年に女性251人を対象に行った調査が、その仕組みの一部を示している。
彼らが測ったのは、挙げられた相手それぞれについて「最後に連絡してからどれくらい経ったか」だった。結果は素直で、情緒的に近い相手ほど、その時間は短い。ところが、この結びつきは血縁のほうが強かった。同じ程度の近さを保つのに、友人相手には血縁相手より頻繁な接触が要る、という向きである。著者たちの結論は身も蓋もない。血縁関係を維持するコストは、友人関係を維持するコストより低い。
言い換えれば、家族は会わなくても近いままでいられる。友情はそうではない。前の単位で見た自然消滅は、この非対称の帰結にすぎない。
維持は、4つの動作に分解できる
では具体的に何をすればいいのか。オズワルド、クラーク、ケリーが2004年に整理した友情の維持行動は、4つの因子にまとまる。忙しくても時間を作るといった相互作用。昔一緒にやったことを持ち出すような肯定性。相手が苦しい時期にそばにいる支援。宙に浮いた誤解を言葉にして片づける開放性。この4つだ。
この分解の実務的な価値は、自分がどれを使っていないかがすぐ分かる点にある。たいていの人は4つのうち1つか2つに偏っている。困った時だけ現れる人は支援に、思い出話ばかりする人は肯定性に寄っている。減衰している関係を1つ思い浮かべて、この4つのどれが欠けているかを見る。それが今日の作業になる。
環境が変われば、網はまるごと入れ替わる
ここで時間の軸を入れる。友人関係の増減は、意思よりも環境の側で決まっている部分が大きい。
ヴルツスらが2013年に発表したメタ分析は、277の研究・177,635人を統合し、思春期から老年期までの人間関係の変化を追った。友人の網の大きさは若年成人期にかけて増え、20代半ばから30代初めのあたりで頂点を打ち、以後は縮み続ける。家族の網はほぼ一定のままだ。そしてライフイベント別に見ると、友人の網をもっとも大きく縮めるのは引っ越しだった。就労の開始は同僚の網を劇的に広げるが、友人の網を安定して増やすわけではない。親になることは、友人の網をわずかに減らす。
オランダで行われた7年間の追跡も、同じ場所を別の角度から照らす。モレンホルストらが2014年に報告したところでは、打ち明け相手や実務的な助け手の人数そのものは7年経ってもほとんど変わらない。ところが、その中身は大きく入れ替わっている。そして関係が途切れる主要な理由の一つとして挙げられたのは、性格でも相性でもなく、会う機会がなくなったことだった。
人数が同じだから安定している、という読み方は誤りである。総数の裏で、名前は静かに交代している。
ただし、この二本が答えていないことも書いておく。7年のパネルが示したのは、機会が消えると関係が落ちるという向きであって、機会をどう作れば関係が残るかではない。同じ場に居続けた人と、場を失った人を比べているだけで、意図して場を作り直した人の群は、そこに存在しない。生涯にわたる変化を統合したメタ分析のほうも、集められた研究の多くは別々の年齢層を同時に測ったものであり、同じ人を思春期から老年期まで追いかけた記録ではない。だとすれば、頂点を打つ年齢や減り方の傾きには、年齢の効果と、生まれた年代ごとの環境の違いが混ざっている。20代半ばで頂点、という形は覚えやすいが、それはあなたの人生の予定表ではなく、複数の世代を重ね焼きした一枚の像である。
ただし、いちばん内側は動きにくい
全部が入れ替わるわけではない。ロイ、バタチャリヤ、ダンバー、カスキが2022年に報告した携帯通話記録の解析は、644,170人の利用者から296,051人・178,592本の関係を取り出し、3年前後の期間で追いかけた。結論は、いちばん内側の親密な関係の顔ぶれは非常に安定している、というものだった。年あたり入れ替わるのはおよそ1〜4%にとどまる。ただし17歳から21歳の層では、この入れ替わりがはっきり速い。
つまり、減衰が効いてくるのは内側の数人ではなく、その一つ外の層である。あなたが「まあ大丈夫だろう」と思って放置しているのは、たいていこの層だ。
この解析の強みは規模だが、弱みも規模から来る。見ているのは通話の記録であり、誰といつ話したかは分かっても、何を話したかは一行も入っていない。会って過ごした時間も、文字だけのやりとりも、この記録には映らない。だから、通話が絶えた相手が本当に遠ざかったのか、連絡の経路が別のところへ移っただけなのかは、原理的に区別がつかない。追った期間も3年前後である。年あたり1〜4%という入れ替わりの遅さは、その窓の中での話であって、10年、20年という単位で内側の顔ぶれがどこまで持つかは、この記録の外にある。17歳から21歳で入れ替わりが速いのも、その年齢に何かがあるというより、進学や就職で生活の場がまるごと動く時期だから、と読むほうが素直だろう。
時間・変化:19年後に効いていたのは、意外なものだった
維持の話を長い時間軸で見ると、また別の景色になる。レッドベター、グリフィン、スパークスが2007年に報告した研究は、1983年に測った親友どうし45組・90人を、19年後の2002年に追跡している。回答が得られたのは58人、追跡率64%だった。
2002年時点の親密さをもっとも強く予測したのは、1983年時点で「どれくらいの月数、親しくしてきたか」だった。相関はr = .52。次に効いたのは専攻の一致といった目に見える類似で、r = .37。回帰モデルは2002年の親密さの分散の50.69%を説明した。
一方で、予測しなかったものがある。自己開示や身体的な接触といった、親密さの表出そのものだ。これは棚の前半で扱った自己開示の話を裏切るように見えるが、そうではない。開示は関係を作る局面で効き、維持する局面では別のものが効く、というだけである。長さは、それ自体が資産になる。
この研究にも、断りは要る。1983年に測った45組・90人のうち、19年後に回答が得られたのは58人で、追跡率は64%だった。連絡が取れなかった3分の1が、うまくいかなくなった組のほうに偏っていた可能性は、原理的に排除できない。だとすれば、残った58人は、続いた関係のほうへあらかじめ選り分けられた標本ということになる。加えて、これは追跡であって介入ではない。1983年の時点で既に長く親しくしていた組は、そのときすでに他の何かが違っていたのかもしれず、長さそのものが効いたのか、長さを生んだ何かが効いたのかを、この設計は切り分けられない。回帰モデルが説明したのは分散の50.69%で、残りの半分は説明されないまま残っている。そして、追跡が届いたのは19年後までである。その先の20年で何が効くのかは、この一本の外側にある。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるのは「そのうち連絡する」という予定である。この予定には期限がないので、実行されない。もう一つは、久しぶりの連絡には相応の中身が要るという思い込みだ。長い文面を用意しようとするほど、送信は先延ばしになる。減衰は、あなたが良い文面を考えているあいだにも進んでいる。
助けるのは、維持を感情から切り離して、4つの動作のどれかに割り当てることだ。今日やるのは「関係を大事にする」ではなく、「相互作用を1回」である。もう一つは、環境が変わるタイミングを事前に警戒すること。引っ越し、転職、育児の開始は、あなたの友人網をもっとも大きく削る出来事だと分かっている。削られてから気づくより、削られる前に接触の予定を置くほうが安い。
限界も断っておく。ここで引いた追跡研究の多くは欧米の若年層や大学関係者を対象にしており、通話記録の研究は特定の通信事業者の利用者に限られる。
標本の断りを、もう少し具体的に置いておく。維持の4動作を取り出した研究は米国の学生を中心とした標本で、しかも測られているのは本人の申告である。実際に何回連絡したかを、外から数えたわけではない。接触の頻度と近さの関係を測った調査は、回答者が女性251人だけで構成されている。男性の側で同じ形になるかは、この一本からは分からない。7年のパネル調査はオランダの成人が対象で、職場も、地域の活動も、近所付き合いの作りも、日本とは前提が違う。日本の読者にそのまま移せるのは、機会が消えれば関係は落ちるという骨格のほうであって、7年で中身がどれだけ入れ替わるかという割合のほうではない。向きは信用できるが、数値をそのまま自分に当てはめる必要はない。
最初の一歩は10分で終わる。半年以上まともに連絡していない相手を1人選び、4つの動作のうち欠けているものを1つだけ決めて、今日そのうち1回を実行する。長くしないこと。
次の単位では、続いた関係のなかで互いに何が起きるかを扱う。友人が自分を押し上げるという、耳あたりのいい主張を、どこまで信じてよいかという話だ。
- Roberts & Dunbar 2015(Human Nature 26:426-450):高校から大学への移行期を18か月・3時点で追跡。30人が参加し25人が完走、追跡された相手は延べ1,291人。家族への情緒的な親しさは上がり、友人への親しさは下がった
- 同じ研究で、友人関係の質の低下は注いだ努力の量で食い止められていた。ただし女性では話す頻度を増やすことが、男性では一緒に行う活動を増やすことが効いた
- Roberts & Dunbar 2011(Personal Relationships 18:439-452):女性251人。最後の接触からの時間は情緒的な近さと対応し、その対応は血縁で強かった。結論は、血縁関係の維持コストは友人関係の維持コストより低い
- Oswald, Clark & Kelly 2004(Journal of Social and Clinical Psychology 23:413-441):友情の維持行動は4因子にまとまる。相互作用・肯定性・支援・開放性
- Wrzus et al. 2013(Psychological Bulletin 139:53-80):277研究・177,635人のメタ分析。友人の網は20代半ばから30代初めに頂点を打ち以後縮む。友人の網をもっとも大きく縮めるライフイベントは引っ越しで、親になることはわずかに減らす
- Mollenhorst et al. 2014(Social Networks 37:65-80):オランダの7年追跡で、打ち明け相手や助け手の人数はほとんど変わらないのに顔ぶれは大きく入れ替わる。途切れる主要因の一つは会う機会の消失。一方 Roy et al. 2022(Scientific Reports 12:11018、644,170人の通話記録)では、いちばん内側の関係は年1〜4%しか入れ替わらない
- Ledbetter, Griffin & Sparks 2007(Personal Relationships):1983年の親友45組90人を19年後に追跡(回答58人・64%)。2002年の親密さを最も強く予測したのは1983年の親しさの月数(r = .52)で、モデルは分散の50.69%を説明。自己開示や接触といった表出的な親密さは予測しなかった
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 本当に親しい友人なら、連絡しなくても関係は変わらない | 女性251人の調査では、同じ程度の近さを保つのに友人相手には血縁相手より頻繁な接触が要り、著者たちは血縁の維持コストのほうが低いと結論した。会わなくても近いままでいられるのは家族の特権であって、友情のものではない |
| 友人の数が減っていないなら、人間関係は安定している | オランダの7年追跡では、打ち明け相手や助け手の人数はほとんど変わらないのに中身は大きく入れ替わっていた。総数の裏で名前が交代しているだけのことがある |
| 久しぶりの連絡には、それなりの中身が必要だ | 19年の追跡で長期の親密さを最も強く予測したのは、親しくしてきた月数(r = .52)だった。自己開示や接触といった表出的な親密さは予測していない。効いているのは中身の濃さより、続いてきた長さのほうだ |
続けるという言葉には、努力の匂いがついている。だが実際にやることは、忙しくても5分だけ時間を作る、昔の話を1つ持ち出す、相手が沈んでいるときに一言送る、宙に浮いた誤解を片づける——この4つのどれかを1回、というだけだ。感動的な要素は何もない。むしろ問題は、これだけのことを何年も繰り返さないといけない点にある。友情に更新手続きがないというのは、手続きが免除されているという意味ではなく、手続きが毎日あるという意味だった。
Q1. Roberts & Dunbar(2015)の18か月追跡研究について、規模と、家族・友人それぞれの情緒的な親しさがどう動いたかを答えよ。一問一答
Q2. 同じ研究で、友人関係の質の低下を食い止めた要因について、本文が述べた性別の違いはどれか。選択
Q3. Oswald, Clark & Kelly(2004)が整理した友情の維持行動の4因子は、____・____・____・____である。穴埋め
Q4. オランダの7年追跡(Mollenhorst ら 2014)が示した、人数と中身のずれとは何か。また、関係が途切れる主要な理由として何が挙げられたか。一問一答
Q5. Ledbetter ら(2007)の19年追跡について、2002年の親密さを予測した強さの順に並べよ。(目に見える類似 r = .37/自己開示や身体接触といった表出的な親密さ/1983年時点の親しさの月数 r = .52)並べ替え
半年以上まともに連絡していない友人を1人選ぶ。4つの維持行動——相互作用・肯定性・支援・開放性——のうち、その相手にいま欠けているものを1つだけ選び、今日のうちに1回実行する。相互作用なら5分で終わる短い連絡を1通、肯定性なら昔一緒にやったことを1つ具体的に挙げて送る、支援なら相手がいま抱えていることに一言、開放性なら宙に浮いたままの誤解を1つ言葉にする。長文にしないこと。返信は成果に数えない。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
あなたの実験(N=1)を始める → プロジェクトに追加(記録機能は準備中)
- Roberts S.G.B., Dunbar R.I.M. (2015) 'Managing Relationship Decay: Network, Gender, and Contextual Effects', Human Nature 26(4):426-450 — link.springer.com
- Roberts S.G.B., Dunbar R.I.M. (2011) 'Communication in social networks: Effects of kinship, network size, and emotional closeness', Personal Relationships 18(3):439-452 — ora.ox.ac.uk
- Oswald D.L., Clark E.M., Kelly C.M. (2004) 'Friendship Maintenance: An Analysis of Individual and Dyad Behaviors', Journal of Social and Clinical Psychology 23(3):413-441 — guilfordjournals.com
- Wrzus C., Hänel M., Wagner J., Neyer F.J. (2013) 'Social network changes and life events across the life span: A meta-analysis', Psychological Bulletin 139(1):53-80 — cmapspublic2.ihmc.us
- Mollenhorst G., Völker B., Flap H. (2014) 'Changes in personal relationships: How social contexts affect the emergence and discontinuation of relationships', Social Networks 37:65-80 — research-portal.uu.nl
- Roy C., Bhattacharya K., Dunbar R.I.M., Kaski K. (2022) 'Turnover in close friendships', Scientific Reports 12:11018 — www.nature.com
- Ledbetter A.M., Griffin E., Sparks G.G. (2007) 'Forecasting friends forever: A longitudinal investigation of sustained closeness between best friends', Personal Relationships 14(2):343-350 — web.ics.purdue.edu