友情に別れ話はない。あるのは、返信しないという選択だけだ
恋愛には別れ話があり、結婚には離婚届があり、雇用には退職届がある。友情には、対応する書類が一枚もない。だから友情の既定の終わり方は、話し合いではない。何もしないことである。しかも統計を見ると、消される側になるのは恋人より友人のほうが多い。
続けるという決定を、毎回やり直している
前の単位で、応答性は残高ではなく毎回の更新だという話をした。この単位は、その更新が止まったときに何が起きるかを扱う。
まず構造から見る。恋愛関係を終えるには、別れ話という手続きがある。婚姻を終えるには離婚届が要る。雇用を終えるには退職の意思表示が要る。いずれも、終わらせるために何かをしなければならない。裏返せば、何もしなければ続く。
友情には、その書類が一枚もない。始めるための契約もなければ、終えるための宣言もない。だから既定の帰結が逆転する。何もしなければ、続かない。この棚のここまでの単位が全部そうだったように、友情は続けるという決定を毎回やり直すことで成り立っている関係であり、その決定を一度やめれば、それだけで終わる。
消される側になるのは、恋人より友人のほうが多い
この構造は、数字にはっきり出る。フリードマン、パウエル、レ、ウィリアムズが2019年に Journal of Social and Personal Relationships で報告した2つの研究は、連絡を断って相手の接触を無視するという終わらせ方を扱っている。標本は554人(平均33.86歳)と747人(平均32.64歳)で、学生ではない成人が中心だ。
恋愛関係については、第1研究で25.3%がされた経験を、21.7%がした経験を報告した。第2研究では23.0%と18.9%である。
友人関係の数字は、それより高い。第2研究で、友人にそうされた経験があるのは38.6%、友人にそうした経験があるのは31.7%だった。関係を切るときに、恋愛より友情のほうが説明されない。当然といえば当然で、説明する義務を課す制度がないからだ。
もうひとつ、この研究は関係についての暗黙の信念との関連も見ている。相性は最初から決まっているという運命信念が強い人ほど、この終わらせ方を許容し、実際にそうする傾向が強かった。合わないと分かった時点で会話は不要だ、という理屈は、たしかに一貫してはいる。
実際に選ばれているのは、終了ではなく格下げだ
では、うまくいかない友人関係に対して、人は何をしているのか。クラー、キルメイヤー、ダークスが2021年に同じ雑誌で報告した研究は、そこを細かく数えている。
参加者は179人、平均20.42歳。同性の友人との難しい場面を扱った53の場面に対して、自分ならどうするかを自由に答えてもらい、集まった9,487件の回答すべてを分類した。
関係の解消にあたる行動は、全体としては稀だった。そのうえで内訳が興味深い。友人関係を終わらせると答えたのは120件で1.3%。距離を置くと答えたのは210件で2.2%。付き合う活動や話題を限定すると答えたのは201件で2.1%。つまり、終了より格下げのほうが多く選ばれている。
もう一点。約束を破るような裏切りは、意見の対立に比べて、終了する行動を引き出す確率が8.67倍だった。友人関係を壊すのは、意見が合わないことではない。信用の問題である。
40年前の研究も、同じことを言っていた
これは最近の現象ではない。ローズとセラフィカが1986年に報告した面接研究は、18歳から28歳の90人に、同性の友人関係をどう保ち、どう終えるかを尋ねている。
答えは関係の深さで分かれた。軽い友人関係は、近接が失われることで終わる。もっと親しい友人関係は、やりとりが減ることで終わる。そして親友関係は、徐々に薄れて終わる、と語られた。いずれも、終わらせるための行為が出てこない。著者らは、終了は出来事ではなく過程だと書いている。
ちなみに27%の人は、親友関係が終わった経験を一度も持っていなかった。終わり方の話をするとき、終わらない関係が3割近くあるという事実も、同時に持っておいていい。
放っておくと、友人は10年で1人ずつ減る
個々の関係ではなく、網全体で見るとどうなるか。ヴルツス、ヘーネル、ワーグナー、ナイヤーが2013年に Psychological Bulletin で発表したメタ分析は、277の研究、延べ177,635人を統合している。
全体の人間関係の網は、思春期から若い成人期にかけて増え、およそ24.6歳で頂点に達し、その後は中年から高齢にかけて減っていく。減り方は60歳から65歳あたりで緩やかになる。
友人の網に限ると、動きはもっと単純だ。若い成人期以降、ほぼ直線的に減る。年あたりの係数は -0.08。ざっくり言えば、10年でおよそ1人ずつ減っていく計算になる。
出来事の効果も見ておく価値がある。友人網に対していちばん大きな負の効果を持っていたのは引っ越しで、しかも年齢を問わなかった。親になることも減少と結びついていた。逆に、就職は、解析モデルの置き方によっては友人網の増加と結びついていた。離婚は、有意な変化を示さなかった。
ここで大事なのは、これらの減少の大半が、喧嘩の結果ではないという点だ。
減る理由の多くは、悪意ではなく機会だ
モレンホルスト、フォルカー、フラップが2014年に Social Networks で報告したオランダの7年パネル調査は、その点を直接扱っている。
網の規模自体は安定していても、中身はかなり入れ替わる。そして関係が途切れる主要な理由として挙げられているのは、会う機会がなくなることだった。職場、家族、スポーツクラブ、地域活動、近所——こうした場を共有しなくなると、関係は静かに落ちる。新しい関係も、既に知り合いがいる場から生まれやすい。
つまり、あなたと疎遠になった友人の大半は、あなたを嫌いになったのではない。同じ場所にいなくなっただけだ。これは慰めであると同時に、警告でもある。嫌われて終わったのなら理由が分かるが、機会が消えて終わった関係には、気づく瞬間すらない。
謝るなら、順番がある
ここまでが消える側の話だ。続ける側に回ろう。何かをやってしまったとき、どう謝るか。
ルイッキ、ポーリン、ラウントが2016年に発表した2つの研究は、謝罪を6つの要素に分けて、どれが効くかを測っている。標本は成人333人と学生422人。要素は、後悔の表明、何が起きたかの説明、責任の承認、悔い改めの言明、償いの申し出、赦しの要請の6つだ。
結果はかなり明快だった。突出して効いたのは責任の承認である。著者らは、もし一つしか言えないなら責任の承認を選ぶべきだと書いている。逆に、いちばん効かなかったのは赦しの要請だった。赦してほしいと言うことは、謝罪の中でもっとも説得力のない部分だったことになる。
要素は多いほど効果は高い。ただし、要素を足す前に、責任の承認が入っているかを確認したほうがいい。それと、能力の失敗についての謝罪は比較的通るが、誠実さの失敗についての謝罪は通りにくい、という非対称もあった。約束を破ったときのほうが、うっかりミスより高くつく。前の節で、裏切りが対立の8.67倍だったことと、きれいに揃っている。
赦しは、無条件では推奨できない
謝られた側の話もしておく。赦したほうがいい、という助言は世の中に多い。研究はそこまで気前がよくない。
ルーキーズ、フィンケル、マクナルティ、クマシロが2010年に JPSP で報告した4つの研究は、赦しが自分に何をするかを調べた。標本は結婚6か月以内の72組を5年追った縦断研究、実際に受けた裏切りを想起した44人、仮想場面を用いた247人、交際関係にある58人を6か月にわたり隔週で追った研究である。
結論は条件つきだった。相手が償いをするなどして、自分が安全に扱われ価値を認められていると示している場合、赦しは自尊心と自己概念の明確さを高めた。相手がそれを示していない場合、同じ赦しは自尊心と自己概念の明確さを下げた。著者たちはこれを、踏み台にされる効果と呼んでいる。
赦しそのものを促す介入が効かない、という話ではない。ウェイド、ホイト、キドウェル、ワージントンが2014年に発表したメタ分析は、54の研究報告を統合し、赦しを促す心理療法的な介入の効果を、無治療の対照群に対して Δ+ = 0.56(95%信頼区間 0.43〜0.68)、他の治療に対して Δ+ = 0.45(0.21〜0.69)と報告した。効く。ただし用量依存で、長い介入のほうが効果が大きかった。
要するに、赦しは道徳ではなく技術である。条件を満たしたときに効き、時間がかかる。相手が何も示していない段階で急いで赦すのは、技術としては早すぎる。
時間・変化:修復には期限がなく、消滅には締切がない
時間の軸で並べると、この単位の非対称が見える。友人関係を終わらせるほうには、締切がない。何もしない状態が延々と続き、どこかの時点で終わっていたことになる。終わった日付を、当事者のどちらも言えない。
一方、修復のほうには手続きがある。責任を承認する。条件が満たされたら赦す。介入は長いほうが効く。どれも、こちらから始めなければ起きない。
この非対称が、友情のいちばん厄介なところだ。終わるのは自動で、続けるのは手動である。前の3単位でやってきたこと——会う、話す、返す——は、この手動の作業そのものだった。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるのは、はっきり終わらせないと不誠実だという思い込みだ。実際に選ばれている行動の内訳を見ると、終了より格下げのほうが多い。距離を置く、話題を限定する。これらは逃げではなく、この関係形式にとって標準的な選択肢である。もうひとつは、疎遠になった理由を人格に求める癖。7年パネルが指しているのは、機会の消失のほうだ。
助けるのは、格下げを意識的に選ぶことである。無自覚な自然消滅と、意識して距離を選ぶことは、外から見れば同じでも、こちら側では別のことになる。もうひとつは、謝る場面で責任の承認を最初に置くこと。説明から入ると、説明が言い訳に見える。
ここで引いた研究は、北米とオランダの成人・学生が中心で、格下げ行動の研究は平均20歳の大学生標本である。数字の向きは信用できるが、大きさをそのまま自分に当てはめる必要はない。
最初の一歩は10分で終わる。しばらく連絡が途絶えている友人を1人選び、続けるのか、格下げするのか、終えるのかを自分の中で明示的に決める。続けると決めたなら、今日のうちに1通送る。格下げか終了と決めたなら、その決定を書き留めるだけでいい。決めないままにしないことが、この作業の全部である。
次の単位では、続けると決めたあとの話をする。意志だけでは接触は起きない、という当たり前だが記録されない事実の話だ。
- Freedman et al. 2019(JSPR・554人と747人、平均33.86歳/32.64歳):連絡を断って接触を無視する終わらせ方は、恋愛関係では されたが25.3%/23.0%、したが21.7%/18.9%。友人関係ではされたが38.6%、したが31.7%と恋愛より高い。運命信念が強い人ほどこの終わらせ方を許容し、実際にしていた
- Khullar, Kirmayer & Dirks 2021(JSPR・179人、9,487件の回答を分類):関係を終わらせると答えたのは1.3%、距離を置くは2.2%、活動や話題を限定するは2.1%。終了より格下げのほうが多く選ばれた。裏切りは意見の対立に比べ、終了行動を引き出す確率が8.67倍だった
- Rose & Serafica 1986(18〜28歳の90人への面接):軽い友人関係は近接の喪失で、より親しい関係はやりとりの減少で、親友関係は徐々に薄れて終わると語られた。終了は出来事ではなく過程である。ただし27%は親友関係が終わった経験を一度も持っていなかった
- Wrzus et al. 2013(Psychological Bulletin・277研究、延べ177,635人):人間関係の網はおよそ24.6歳で頂点に達し以後減少する。友人の網は若い成人期以降ほぼ直線的に減り、年あたりの係数は -0.08、およそ10年で1人の減少にあたる
- 同メタ分析で、友人網にもっとも大きな負の効果を持ったのは引っ越しで、年齢を問わなかった。親になることも減少と結びつき、就職は固定効果モデルの前提のもとで増加と結びついた。離婚は有意な変化を示さなかった
- Mollenhorst, Völker & Flap 2014(Social Networks・オランダの7年パネル):網の規模が安定していても中身は入れ替わる。関係が途切れる主要な理由は会う機会がなくなることであり、新しい関係も既に知り合いのいる場から生まれやすい
- Lewicki, Polin & Lount 2016(成人333人・学生422人):謝罪の6要素のうち突出して効いたのは責任の承認で、もっとも効かなかったのは赦しの要請だった。Luchies et al. 2010(JPSP・4研究)では、相手が安全と価値を示している場合にのみ赦しは自尊心と自己概念の明確さを高め、示していない場合は下げた
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| きちんと話し合って終わらせるのが、誠実な終わり方だ | 9,487件の回答を分類した研究では、終わらせると答えたのが1.3%、距離を置くが2.2%、話題や活動を限定するが2.1%で、終了より格下げのほうが多く選ばれていた。40年前の面接研究でも、友人関係の終了は出来事ではなく過程だと報告されている。制度的な手続きがない関係では、格下げが標準的な選択肢だ |
| 疎遠になったのは、どちらかに問題があったからだ | オランダの7年パネル調査が挙げている主要な理由は、会う機会がなくなることだった。メタ分析でも、友人網にもっとも大きな負の効果を与えたのは引っ越しで、年齢を問わなかった。友人網は放っておくと年あたり -0.08、10年で1人ほど減っていく |
| 赦したほうが、自分のためになる | 4つの研究では、相手が償いなどで自分の安全と価値を示している場合には赦しが自尊心と自己概念の明確さを高めたが、示していない場合は下げた。赦しを促す介入自体は効くが(無治療比 Δ+ = 0.56)、効果は用量依存で時間がかかる。赦しは道徳ではなく、条件つきの技術だ |
友情のいちばん残酷な仕様は、終了通知が発行されないことだ。あなたが何人の友人を失ったかを、あなたは正確には知らない。統計は、10年で1人ずつ静かに減っていくと言っている。喧嘩の記録もなく、謝罪の余地もなく、ただ会う機会が消えただけの関係が、いつのまにか過去形になる。ここまでの3単位で、会う・話す・返すという手動の作業を一通り並べてきた。全部やめても、誰にも叱られない。それが、この関係形式のもっとも自由で、もっとも面倒なところである。
Q1. Freedman ら(2019)では、連絡を断って接触を無視する終わらせ方について、友人関係で された経験は____%、した経験は____%。恋愛関係では第2研究で された経験が____%、した経験が____%だった。穴埋め
Q2. Khullar ら(2021)が9,487件の回答を分類した結果を、割合の大きい順に並べよ。(活動や話題を限定する / 関係を終わらせる / 距離を置く)並べ替え
Q3. Wrzus ら(2013)のメタ分析が示した、人間関係の網と友人網の年齢変化を、規模と数値を含めて答えよ。生活上の出来事の効果にも触れること。一問一答
Q4. Lewicki ら(2016)の2つの研究で、謝罪の6要素のうち突出して効果的だったもの、およびもっとも効果が低かったものはどれか。選択
Q5. 本文が「赦しは無条件では推奨できない」と述べた根拠を、研究の構成を含めて答えよ。一問一答
しばらく連絡が途絶えている友人を1人選ぶ。その関係について、続ける・格下げする(会う頻度や話す話題を限定する)・終える、の3つから1つを明示的に選ぶ。続けると決めたなら、今日のうちにメッセージを1通送る。格下げか終えると決めたなら、その決定と理由を1行書き留めるだけでよい。どれも選ばないまま保留にすることだけは避ける。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
あなたの実験(N=1)を始める → プロジェクトに追加(記録機能は準備中)
- Freedman G., Powell D.N., Le B., Williams K.D. (2019) 'Ghosting and destiny: Implicit theories of relationships predict beliefs about ghosting', Journal of Social and Personal Relationships 36(3):905-924 — gilifreedman.com
- Khullar T.H., Kirmayer M.H., Dirks M.A. (2021) 'Relationship dissolution in the friendships of emerging adults: How, when, and why?', Journal of Social and Personal Relationships 38(11):3243-3264 — journals.sagepub.com
- Rose S., Serafica F.C. (1986) 'Keeping and Ending Casual, Close and Best Friendships', Journal of Social and Personal Relationships 3(3):275-288 — myweb.fiu.edu
- Wrzus C., Hänel M., Wagner J., Neyer F.J. (2013) 'Social network changes and life events across the life span: A meta-analysis', Psychological Bulletin 139(1):53-80 — cmapspublic2.ihmc.us
- Wrzus C., Hänel M., Wagner J., Neyer F.J. (2013) 'Social network changes and life events across the life span: A meta-analysis', Psychological Bulletin 139(1):53-80(生活出来事の分析) — cmapspublic2.ihmc.us
- Mollenhorst G., Völker B., Flap H. (2014) 'Changes in personal relationships: How social contexts affect the emergence and discontinuation of relationships', Social Networks 37:65-80 — research-portal.uu.nl
- Lewicki R.J., Polin B., Lount R.B. (2016) 'An Exploration of the Structure of Effective Apologies', Negotiation and Conflict Management Research 9(2):177-196 — ncmr.lps.library.cmu.edu
- Luchies L.B., Finkel E.J., McNulty J.K., Kumashiro M. (2010) 'The doormat effect: When forgiving erodes self-respect and self-concept clarity', Journal of Personality and Social Psychology 98(5):734-749/Wade N.G., Hoyt W.T., Kidwell J.E.M., Worthington E.L. (2014) 'Efficacy of psychotherapeutic interventions to promote forgiveness: A meta-analysis', Journal of Consulting and Clinical Psychology 82(1):154-170 — faculty.wcas.northwestern.edu