25万人分のデータは接触に賛成した。ただし、25歳を超えた大人を調べた実験は1本もない
違う人と付き合うといい、という助言は、社会心理学でもっとも支持されてきた命題のひとつだ。奇妙なのは、その支持のほとんどが教室と学生寮から来ていることである。効き目の大きさを知りたい大人にとって、在庫はまだ薄い。
前の単位の帰結を、引き受ける
前の単位で分かったのは、友人が自分に似ているのは選好の結果である前に環境の結果だ、という身も蓋もない事実だった。選べる範囲が細ければ細い友人ができ、広ければ、人は広さを使って細かく合う相手を探しにいく。
ならば逆を試すとどうなるか。似ていない相手のほうへ意図的に足を伸ばすことに、実際どれだけの効き目があるのか。ここは友情の棚に固有の単位で、恋愛の側には対応する番地がない。理由は簡単で、恋愛は原則として一人を選ぶ営みだが、友情は複数を並べる営みだからだ。並べるなら、種類の話ができる。
まず、在庫を数える
ペティグルーとトロップが2006年に発表したメタ分析は、この分野の基準点になっている。集めたのは515の研究、713の独立した標本、参加者は延べ250,089人、38か国。研究の中央値は1986年の発表だ。
結果は明快だった。集団間の接触は偏見を減らす方向に働き、平均効果は r = .21 前後。標本の94%で、接触が多いほど偏見が少ないという向きが出た。
条件による差もある。オルポートの言う最適条件——対等な地位、共通の目標、協力、制度的な支持——を満たすよう設計されたプログラムでは r = .287、そうでない接触では r = .204。条件を整えたほうが効くが、整えなくても効く。
そして、この棚にとって重要な一行。接触の指標として集団を越えた友人関係を使った標本では、効果は r = .246 で、それ以外の測り方より有意に強かった。ただ会うことより、友人になることのほうが効く。
出版バイアスの検討もある。有意性を消すには、効果ゼロの標本が1,200以上未発表で眠っている必要があった。未刊行の学位論文などでの効果(r = .237)は、刊行された研究(r = .211)よりむしろ大きい。
効いているのは知識ではなく、不安が下がることだ
仕組みの話をする。同じ2人が2008年に、媒介の検討だけを取り出したメタ分析を出している。500を超える研究のうち、経路を検定できた91の独立標本を統合したものだ。
検討された経路は三つ。相手について知ることで偏見が減るのか(知識)。相手と会うことの不安が下がるからなのか(不安の低下)。相手の立場に立てるようになるからなのか(共感と視点取得)。
順位ははっきりしていた。もっとも強い媒介は不安の低下(60標本・13,343人、Z = −26.55)。次が共感と視点取得(14標本・2,362人、Z = −12.43)。もっとも弱いのが知識(17標本・2,543人、Z = 3.87)である。
違いを学ぶことで距離が縮まるのではない。緊張しなくなることで縮む。異文化理解の講座より、雑談の回数のほうが効きそうだ、というのがこのデータの示す順序である。
25万人の在庫を、27本まで値切る
ここで喜んで終わりにすると、あとで足をすくわれる。ペイラック、グリーン、グリーンが2019年に発表した再検討は、同じ文献群に厳しい選別をかけた。
条件は二つだけだ。介入が無作為に割り当てられていること。そして、結果の測定が介入の翌日以降に行われていること。この二つを満たす研究は、数百本の文献のなかで27本しか残らなかった。もとの515研究のうち実験計画は5%にすぎず、大半は横断的な調査だったからだ。
27本の平均効果は0.39、95%信頼区間は0.231から0.554。標準偏差のおよそ3分の1という、決して小さくない値である。方向としては接触仮説を支持している。
問題はその中身だ。27本のうち人種や民族の偏見を扱ったのは11本、率にして40%。そして著者たちが指摘したのは、25歳より上の人を対象に異人種接触の効果を測った研究が1本もない、という事実である。もうひとつ、標準誤差の小さい研究ほど弱い効果を報告する傾向があった。小さな標本で大きな効果が出た研究が選択的に世に出ている、という典型的な兆候だ。
つまり、こう読むのが正確になる。接触には効き目がある。ただしそれを厳密に測った実験の在庫は薄く、しかも在庫のほとんどが若い人のものだ。就労後の大人が異なる背景の相手と友人になったとき何が起きるかは、まだきちんと測られていない。
それでも、友人になることは別格だった
在庫は薄いが、方向を支える横断研究には厚みがある。ペティグルーが1997年に報告した分析は、1988年にフランス、英国、オランダ、西ドイツで行われた7つの全国確率標本、合計3,806人を使った。
結果は二重に面白い。まず、効果がとくに強く出たのは集団を越えた友人関係と、感情面の偏見だった。次に、非再帰モデルで因果の向きを検討すると、友人がいるから偏見が減るという経路のほうが、偏見が少ないから友人ができるという逆向きの経路より大きかった。
そして効果は、その相手の集団だけに留まらなかった。移民政策への選好にも、まったく別の集団への態度にも広がっていた。著者はこの一般化を三つの経路で説明している。共感、相手集団への同一化、そして自分の内集団を見直すこと——脱地方化と呼ばれるものだ。
異質な友人が一人できると、その一人についての意見が変わるのではない。自分の側の当たり前が、少し相対化される。
10分の立ち話が、14年ぶんの世論変化を1軒で起こした
単発の会話にどこまで期待できるか。ブロックマンとカラが2016年に発表した実地実験は、この問いに具体的な数字を返している。
有権者の自宅を訪ね、トランスジェンダーの人々への態度について10分ほど話す。訪問を受け、その後の調査にも回答した501人が分析対象になった。
感情温度計の得点は、およそ10ポイント上がった。比較対象が効いている。1998年から2012年までの14年間で、米国人のゲイ男性とレズビアンへの感情がどれだけ温かくなったかが8.5ポイントである。10分の会話1回が、社会全体の14年ぶんの変化を上回った。
持続も測られた。3日後、3週間後、6週間後、3か月後——どの時点でも効果は残っていた。
この結果を過大に読まないための注意も要る。訪問を受けても調査に答えなかった人は分析から落ちているし、扱われた話題は一つの集団についてのものだ。それでも、短い会話が測定可能な変化を残しうるという証拠としては十分に強い。
時間・変化:接触には設計者がいる。友人関係には、いない
ここまでの数字を並べ直すと、ひとつの形だけが浮いていることに気づく。
メタ分析のなかで、接触の測り方はさまざまだった。同じ職場にいる。同じ教室にいる。何度か話したことがある。そして、友人である。効果がもっとも大きかったのは最後の測り方で、r = .246。オルポートの最適条件を整えないまま起きた接触の .204 より、はっきり上にある。条件を整えて設計されたプログラムの .287 に迫る値が、誰も設計していない関係のほうから出ている。
なぜそうなるかは、媒介の順位から逆算できる。効いていたのは不安の低下で、不安は一度で下がりきらない。回数がいる。ところが、設計された接触には期間がある。研修は終わり、共同プロジェクトは解散し、交流会は次の年度に持ち越されない。ある日、回数の供給が止まる。
友人関係には、その終わりが決まっていない。制度的な拘束がない代わりに、期限もない。会う理由を毎回つくり直す必要はあるが、つくり直しさえすれば回数は積み上がる。異質性への好奇心が効き目に変わるのは、たいていこの積み上がりの区間だ。
もっとも、期限がないことは持続の保証ではない。この棚が繰り返し確認してきたとおり、放っておいた場合の既定の帰結は自然消滅である。設計者のいない接触は、誰も解散を宣言しないまま、静かに回数の供給を止める。背景の違う相手ほど共通の予定が少ないので、止まるのも早い。
情報の側からも、同じ向きの古い指摘がある。社会学には半世紀前から、新しい情報は毎日顔を合わせる相手ではなく、遠いところにいる相手から来る、という観察がある。異質性は、態度の柔らかさとしてだけでなく、届く情報の種類としても現金化されるということだ。ただし、その配置をどう組み、どの層を整備するかという話は、この棚の後半で扱う。ここでは種類の話までにしておく。
好奇心は性格ではなく、価値づけの問題らしい
最後に、この単位の名前——異質性への好奇心——に直接触れる研究をひとつ。
バーンズ、スプリンガー、ザーが2015年に報告した調査は、ボストンの2つの地区で、実際に一緒にいるペア89組・178人を捕まえた。ジャマイカプレインと、ノースエンドである。
多様性に価値を置く度合いは、前者の地区の住民のほうが高かった。そしてペアの態度の多様性——二人の意見がどれだけ違うか——も、前者のほうが大きかった。さらに、地区による差は、そのペアが多様性をどれだけ共同で価値づけているかによって媒介されていた。
読み方はこうだ。異質な友人ができるかどうかを分けているのは、外向性でも度胸でもなく、多様性に価値を認めているかどうかという、書き換え可能な信念のほうだった。
標本の断りを一つ入れておく。ここで挙げた研究は米国と西欧に集中し、対象の多くが学生か有権者で、態度の測定は自己報告である。日本の職場や地域で同じ数字が出る保証はない。もう少し具体に書いておく。38か国・延べ250,089人という在庫の内訳は、米国と西欧の標本が大きな比重を占めており、研究の中央値は1986年の発表である。40年近く前の社会で測られた接触が、いまの日本の職場での接触と同じ働き方をするとは限らない。厳しい条件で選別した27本にいたっては、25歳より上の人を対象に異人種接触の効果を測ったものが1本も入っていなかった。就労後の大人にとっての在庫は、実質ゼロに近いということだ。ボストンの89組も、性格の違う2つの地区を選んで比べた調査であって、日本の生活圏でどの地区が何に対応するのかは、どこにも書かれていない。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるのは、異質な相手との交流を「学ぶ機会」として設計してしまうことだ。媒介の順位を思い出せばいい。効いていたのは知識ではなく不安の低下だった。相手の文化を勉強してから会おうとする人は、いちばん効かない経路に時間を使っている。
もうひとつは、一度きりの善意の接触で満足すること。10分の会話が3か月残ったのは、話題が本人の生活に届く形で扱われた場合の話である。
助けるのは、多様性に価値を置くという信念のほうだ。ボストンの調査で異質な相手と一緒にいるかどうかを分けていたのは、性格ではなくその価値づけだった。信念は、性格よりは書き換えやすい。もうひとつ、効き目が出るのは回数が積み上がる区間なので、続く形にできそうな相手を最初に一人だけ決めておくといい。
最初の一歩は10分。自分と経歴・業界・世代・出身のどれかが明確に違う相手を1人選び、その人にだけ答えられる質問を1つ考えて送る。相手について勉強してから送らないこと。分からないまま尋ねるほうが、この文献の形には合っている。
次の単位では、視線を自分の内側へ戻す。ここまでで測ってきたものを、自分の頭が具体的にどう歪めているかを、数個だけ検算する。
- Pettigrew & Tropp 2006(JPSP):515研究・713独立標本・延べ250,089人・38か国のメタ分析。集団間接触の効果は r = .21 前後で、標本の94%が偏見低減の方向を示した
- 同メタ分析で、オルポートの最適条件を満たすよう設計されたプログラムは r = .287、それ以外の接触は r = .204。集団を越えた友人関係を指標にした標本では r = .246 と、他の測り方より有意に強かった
- 出版バイアスは小さい。有意性を消すには効果ゼロの標本が1,200以上未発表である必要があり、未刊行研究の効果 r = .237 は刊行済み r = .211 より大きかった
- Pettigrew & Tropp 2008(91独立標本):媒介の強さは不安の低下(60標本・13,343人、Z = −26.55)>共感と視点取得(14標本・2,362人、Z = −12.43)>知識(17標本・2,543人、Z = 3.87)。効いているのは学習ではなく緊張の低下である
- Paluck, Green & Green 2019(Behavioural Public Policy):無作為割当かつ翌日以降に測定という条件を満たす研究は27本だけ。平均効果は0.39(95%CI 0.231〜0.554)。うち人種・民族の偏見を扱ったのは11本(40%)で、25歳より上を対象にした異人種接触の研究は1本もない。標準誤差の小さい研究ほど弱い効果を報告していた
- Broockman & Kalla 2016(Science):戸別訪問で約10分会話した有権者501人。感情温度計は約10ポイント上昇し、これは1998年から2012年の14年間に米国人のゲイ男性・レズビアンへの感情が温かくなった8.5ポイントを上回る。効果は3日後・3週間後・6週間後・3か月後まで持続した
- Pettigrew 1997(PSPB):1988年にフランス・英国・オランダ・西ドイツで実施された7つの全国確率標本・合計3,806人の分析。効果は集団を越えた友人関係と感情面の偏見でとくに強く、非再帰モデルでは友人がいるから偏見が減る経路のほうが、偏見が少ないから友人ができる逆向きの経路より大きかった。効果は移民政策への選好や別の外集団にも一般化し、その経路は共感・相手集団への同一化・自分の内集団の再評価だった
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 違う背景の人と付き合うには、まずその文化について勉強するべきだ | 91標本の媒介分析で、もっとも強い経路は不安の低下(Z = −26.55)、次が共感(Z = −12.43)で、知識はもっとも弱かった(Z = 3.87)。勉強してから会おうとする人は、いちばん効かない経路に時間を使っている |
| 接触仮説は25万人で確かめられた鉄板の理論だ | 無作為割当かつ翌日以降に測定という条件を課すと、残る研究は27本だけになる。もとの515研究のうち実験計画は5%で、25歳より上を対象にした異人種接触の実験は存在しない。方向は支持されているが、大人についての在庫は薄い |
| 異質な友人ができるかどうかは、結局のところ外向性や度胸といった性格の問題だ | ボストンの2地区で、実際に一緒にいるペア89組・178人を捕まえた調査では、地区によるペア内の態度の多様性の差は、そのペアが多様性をどれだけ共同で価値づけているかによって媒介されていた。分けていたのは性格ではなく、書き換えのきく信念のほうである |
この単位のいちばん気まずい発見は、効いているのが理解ではなく慣れだったことだ。相手の背景を丁寧に学んでから会おうとする姿勢は、知的で、礼儀正しく、そしてデータ上はほとんど何もしていない。効いていたのは、何度か顔を合わせて緊張が抜けることのほうである。多様性への態度を改善する最短経路が、勉強ではなく無防備さだというのは、勉強が得意な大人にとってかなり悪い知らせだろう。
Q1. Pettigrew & Tropp(2006)のメタ分析は____研究・____の独立標本・延べ____人・____か国を統合し、平均効果は r = ____前後だった。集団を越えた友人関係を指標にした標本では r = ____に上がる。穴埋め
Q2. Pettigrew & Tropp(2008)が検討した3つの媒介を、媒介の強い順に並べよ。(知識/共感と視点取得/不安の低下)並べ替え
Q3. Paluck, Green & Green(2019)が課した2つの条件と、その結果残った研究の本数、およびその内訳のうち本文がとくに強調した点を答えよ。一問一答
Q4. Broockman & Kalla(2016)の戸別訪問実験の結果として、本文が挙げた比較はどれか。選択
Q5. Pettigrew(1997)が分析したのは、1988年にフランス・英国・オランダ・西ドイツで行われた____つの全国確率標本、合計____人である。非再帰モデルでは、____がいるから偏見が減るという経路のほうが逆向きの経路より大きく、効果は移民政策への選好や別の外集団にも____した。穴埋め
経歴・業界・世代・出身のいずれかが自分と明確に違う相手を1人選ぶ(半年以上連絡していない相手が望ましい)。その人にしか答えられない質問を1つだけ考えて送る。事前にその人の分野を調べないこと。送ったら、質問文と、送る前に自分が感じた気まずさを5段階で記録する。返信が来たら、その内容が自分の予想と違っていた点を1行だけ書き足す。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
あなたの実験(N=1)を始める → プロジェクトに追加(記録機能は準備中)
- Pettigrew T.F., Tropp L.R. (2006) 'A Meta-Analytic Test of Intergroup Contact Theory', Journal of Personality and Social Psychology 90(5):751-783 — ideas.wharton.upenn.edu
- Pettigrew T.F., Tropp L.R. (2008) 'How does intergroup contact reduce prejudice? Meta-analytic tests of three mediators', European Journal of Social Psychology 38(6):922-934 — onlinelibrary.wiley.com
- Paluck E.L., Green S.A., Green D.P. (2019) 'The contact hypothesis re-evaluated', Behavioural Public Policy 3(2):129-158 — www.cambridge.org
- Pettigrew T.F. (1997) 'Generalized Intergroup Contact Effects on Prejudice', Personality and Social Psychology Bulletin 23(2):173-185 — journals.sagepub.com
- Broockman D., Kalla J. (2016) 'Durably reducing transphobia: A field experiment on door-to-door canvassing', Science 352(6282):220-224 — www.scunning.com
- Bahns A.J., Springer L.S., The C. (2015) 'Fostering diverse friendships: The role of beliefs about the value of diversity', Group Processes & Intergroup Relations 18(4):475-488 — journals.sagepub.com