似た相手を選んだのではない。選べる範囲が、最初からそう作られていた
気の合う友人ができると、長い時間が二人を似せていったのだと思いたくなる。実測はその逆を示す。似ていたのは初日で、そのあと何年一緒にいても、二人はほとんど似ていかない。あなたの交友関係が語っているのは、あなたの好みより、あなたが立っていた場所のほうだ。
目盛りの向きを、相手のほうへ変える
前の単位で較正したのは、相手が自分をどう見ているかを測る目盛りだった。狂いの向きは一つで、常に自分に不利な側へ倒れていた。ここからは、その目盛りを相手のほうへ向ける。誰と合うのか、という問いである。
ただし、この問いは見かけほど個人的ではない。相性の話をしているつもりで、実際には自分がどこに立っていたかの話をしていることが多い。順番に確認していく。
同類性という言葉が、実際に指しているもの
社会学には、この現象に古い名前がある。ホモフィリー、同類性——似た者どうしが結びつく傾向のことだ。マクファーソン、スミス・ロヴィン、クックが2001年にまとめた総説は、いまも出発点として使われている。
彼らの整理によれば、個人のネットワークは社会人口学的属性でも行動でも内面の特性でも均質である。そして、いちばん深い溝を作るのは人種と民族だった。以下、年齢、宗教、学歴、職業、性別が、だいたいこの順で続く。
もうひとつ重要な指摘がある。同類的な関係が生まれるのは、地理的な近接、家族、組織、そして社会システムの中で同じような位置を占めていること——この四つが作る文脈のなかだ、というものである。つまり、似た人と知り合うのは趣味の問題である前に、居場所の問題だ。
そして総説はもう一行付け足している。似ていない者どうしの紐帯は、解消される率が高い。生成の側だけでなく、消滅の側からも均質化は進む。友情に契約がないことの帰結が、ここにも顔を出している。
時間・変化:似ていったのではない。最初から似ていた
類似が関係を作るのか、関係が類似を作るのか。この問いに正面から答えたのが、バーンズ、クランドール、ギラス、プリーチャーが2017年に発表した研究だ。
手法が変わっている。キャンパスや街で実際に一緒にいるペアを、その場で捕まえてそれぞれに回答させる。研究室に呼んだ友人組ではなく、いま現に一緒に歩いている二人である。11の標本、合計1,523組が集まった。
結果の一つ目。測定した変数のうち86%で、ペア内の類似が統計的に有意だった。態度、信念、価値観、健康行動。似ているという話自体は、頑健に確認される。
結果の二つ目が本題だ。関係が長いペアほど似ている、という関係は出なかった。関係の長さが類似を予測するかを検定していくと、有意になったのは全検定の4.8%——偶然に期待される5%とほぼ同じである。長く一緒にいることは、二人を似せていなかった。
三つ目。今度は関係が始まる瞬間を捕まえにいく。授業の初回に見知らぬ学生どうしを会話させ、そのあとも自発的に関わり続けたペアと、それきりになったペアを比べた。続いたペアは、最初の測定の時点ですでに互いに似ていた(第2研究 t(58) = 3.78、p = .0004、第3研究 t(48) = 2.27、p = .03)。
選択の時点で、勝負はついている。
大きくて多様な場所にいる人ほど、友人は自分に似ている
ここからが、この棚で押さえておくべき逆説だ。バーンズ、ピケット、クランドールが2012年に報告した研究は、大きく多様な大学と、小さく均質な大学のペアを比べた。
直感は、多様な環境にいれば多様な友人ができる、と言う。データは反対を向いた。大きく多様なキャンパスのペアのほうが、態度・信念・健康行動において互いに強く似ていた。小さく均質な大学のペアのほうが、むしろ中身の違う相手と付き合っていた。
理屈は身も蓋もない。選択肢が多ければ、細かいところまで合う相手を探しにいける。選択肢が少なければ、目の前にいる人と付き合うしかない。環境の多様性が上がると、一つ一つの関係の中の多様性は下がる。
この逆説は、大人の生活にそのまま効いてくる。都市に出て選択肢が増えたのに交友の幅が狭くなったと感じるなら、それは感覚の問題ではなく構造の帰結である。
出やすさと入りやすさで、似ることの意味が変わる
では環境の何が効いているのか。バーンズ、リー、クランドールが2019年に発表した研究は、米国と韓国から1,603組を集め、関係流動性——関係を新しく作ったり終えたりする自由度——との対応を調べた。
全体としては、関係流動性が高いほどペアの類似は高かった。ただし国の内側で見ると符号が反転する。さらに分解すると、入りやすさの高さは類似の重視につながり、出やすさの高さは類似の軽視につながっていた。
決め手は実験のほうだ。不満な友人関係はいつでも終わらせられる、という信念を実験的に高めると、友人選びにおける類似の重要度が下がった。出口が確保されていると感じている人は、最初から合うかどうかを気にしなくなる。
ここに時間の軸が入る。学生時代の交友は、毎日同じ場所に強制的に集められる、出入りの自由度が低い環境で作られる。就労後の交友は、いつでも会わなくなれる環境で作られる。同じ人間でも、環境が変われば「合うかどうか」の重みが変わる。大人になってから相性にうるさくなったように感じるのは、あなたが偏屈になったからではなく、出口が近くなったからだ。
正反対が惹かれ合う、を値切る
相補性——足りないところを補い合う相手に惹かれる、という考え方には、長い人気がある。実証の側の成績は、その人気に見合っていない。
ヨウヨウ、スティルウェル、シュワルツ、コジンスキーが2017年に報告した研究は、性格の類似を自己申告ではなく行動から測った。理由がある。自己申告の性格評定は、その人が周囲の誰と比べているかに左右されるからだ——参照群効果という。似た環境にいる二人が、それぞれ自分の周囲と比べて回答すれば、実際は似ていても数字の上では似ていないことになる。
行動から推定し直すと、友人46,483組で相関は r = .12 から .31、恋愛関係1,101組で r = .20 から .47 になった。従来の研究が類似を見つけられなかったのは、類似がなかったからではなく、測り方の問題だったことになる。
より広い検算もある。ホーウィッツらが2023年に発表した研究は、22形質について199の研究を統合し、加えて英国の約8万組について133形質を調べた。もっとも古い研究は1903年にさかのぼる。結果は、形質の82%から89%でパートナー間に正の相関があり、負の相関——つまり正反対が結びつく方向——が出たのは3%だけだった。政治的価値観は .58、神経症傾向は .11 と、形質によって強さは大きく違う。
正反対は惹かれ合わない。惹かれ合っているように見えるとき、たいてい人は、似ている土台の上に乗った小さな違いを見ている。
ただし、類似のほうも値切っておく
ここで類似を万能の物差しにすると、今度はこちらが足をすくわれる。モントーヤ、ホートン、キルヒナーが2008年に発表したメタ分析は、313の実験・調査から460の効果量を統合した。
実際の類似と魅力の相関は r = .47、知覚された類似との相関は r = .39。ここまでは類似の勝ちに見える。問題はその内訳だ。
実際の類似が効いていたのは、相互作用がない場面と、短い相互作用の場面までだった。すでに成立している関係のなかでは、実際の類似の効果は有意にならなかった。一方、知覚された類似は三つの場面すべてで魅力を予測した。
読み方はこうだ。プロフィールを見比べている段階では、実際に似ていることが効く。付き合いが始まったあとで効いているのは、似ていると感じられていることのほうである。この二つは同じではない。
だから相性診断の類が当てにならないのは、質問項目が悪いからというより、測っているものが入口の段階でしか効かない変数だからだ。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるのは、相性を人柄の問題としてだけ語る癖だ。合う人がいない、という言い方は、たいてい自分がどこに立っているかの記述に翻訳できる。1,523組の実測が示したのは、あなたの交友関係の類似度が、あなたの選好より、あなたが通っている場所の大きさと多様性を反映しているという事実である。
もうひとつは、時間が二人を似せてくれるという期待。関係の長さと類似の関係を検定して有意になったのは4.8%、つまり偶然と区別できない水準だった。合わない相手と続ければ合ってくる、という前提は、少なくともこのデータには支持されていない。
標本の断りを一つ。ここで引いた研究の多くは米国の大学生と英国の中高年、それに韓国の一部を対象としており、測定は自己報告と行動ログである。向きは信用してよいが、日本の職場や地域の数字がそのまま同じになる保証はない。
もう一段だけ具体にしておく。この単位で数えたのは、キャンパスや街で現に一緒に歩いていた1,523組、米国と韓国の1,603組、性格を行動から推定した友人46,483組、英国の約8万組、そして313の実験・調査から取り出した460の効果量である。数だけ見れば壮観だが、内訳は寄っている。ペアを捕まえた研究の多くは大学の構内で行われており、そこを歩いているのは同じ年齢帯で、同じ入学試験を通り、同じ時間割で動いている人たちだ。母集団があらかじめ細く絞られている場所で測った類似度が、街全体の類似度と同じ値になるはずがない。同類性のいちばん深い溝が人種と民族だという順位も、米国の社会構造を前提にした順位である。日本で同じ順番になるとは限らない。英国の約8万組はパートナー、つまり配偶者や交際相手が中心で、友人ではない。形質の82%から89%で正の相関が出たという結果を、友人関係へそのまま横流しするのは乱暴だ。測り方も、自己申告の質問紙と行動から推定した値に分かれていて、この二つは同じものを測っていない。参照群効果の話が、まさにその食い違いの話だった。
助けるのは、選好ではなく環境を変数として扱うことだ。誰と合うかを考える前に、自分がいまどの母集団から相手を引いているのかを書き出す。母集団が変わらないかぎり、引かれるカードの種類も変わらない。
最初の一歩は10分。この1年で新しく話すようになった相手を5人挙げ、それぞれと出会った場所を書く。5人が何種類の場所に分かれているかを数える。種類が1つか2つなら、あなたが次に変えるべきは相手の選び方ではなく、場所のほうだ。
次の単位では、その場所を意図的に増やす話に進む。似ていない相手と関わることに、実際どれだけの効き目があるのかを検算する。
- McPherson, Smith-Lovin & Cook 2001(Annual Review of Sociology):個人ネットワークは属性・行動・内面のいずれでも均質で、最も深い溝は人種と民族。以下、年齢・宗教・学歴・職業・性別の順。同類的関係は地理的近接・家族・組織・社会システム上の同位置という四つの文脈で生まれ、似ていない紐帯は解消率が高い
- Bahns, Crandall, Gillath & Preacher 2017(JPSP):実際に一緒にいるペアを現地で捕まえた11標本・1,523組。測定変数の86%でペア内の類似が有意だった
- 同じ研究で、関係の長さが類似を予測するかを検定すると有意になったのは全検定の4.8%——偶然に期待される5%とほぼ同じ。長く一緒にいることは二人を似せていなかった
- 初回の会話後も関わり続けたペアは、最初の測定時点ですでに互いに似ていた(第2研究 t(58) = 3.78、p = .0004/第3研究 t(48) = 2.27、p = .03)。選択の時点で勝負はついている
- Bahns, Pickett & Crandall 2012:大きく多様なキャンパスのペアのほうが、小さく均質な大学のペアより態度・信念・健康行動で強く似ていた。環境の多様性が上がると、一つ一つの関係の中の多様性は下がる
- Bahns, Lee & Crandall 2019:米国と韓国の1,603組。関係流動性が高いほど類似は高い。不満な友人関係はいつでも終わらせられるという信念を実験的に高めると、友人選びで類似が重視されなくなった
- 相補性は支持されない。Youyou et al. 2017 は行動から測ると友人46,483組で r = .12〜.31、恋愛1,101組で r = .20〜.47。Horwitz et al. 2023 は22形質199研究+英国約8万組133形質で、82〜89%の形質が正の相関、負は3%だけ。ただし Montoya et al. 2008(313研究・460効果量)では、実際の類似(r = .47)が効くのは相互作用前と短時間の相互作用までで、既存の関係では有意にならず、効いていたのは知覚された類似(r = .39)だった
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 長く一緒にいれば、友人どうしは似てくる | 1,523組の実測で、関係の長さが類似を予測した検定は全体の4.8%——偶然に期待される水準と変わらなかった。似ているペアは、初回の会話の時点ですでに似ていた |
| 多様な環境にいれば、多様な友人ができる | 大きく多様なキャンパスのペアのほうが、小さく均質な大学のペアより互いによく似ていた。選択肢が増えると、人は細かいところまで合う相手を探しにいける。環境の多様性と関係内の多様性は逆に動く |
| 正反対の相手は惹かれ合い、足りないところを補い合う | 22形質・199研究と英国の約8万組を調べた検討では、82〜89%の形質で正の相関が出て、負の相関は3%だけだった。行動から性格を測り直すと、友人46,483組でも類似が確認される |
身も蓋もない結論を一つ。あなたの友人があなたに似ているのは、あなたに見る目があったからではなく、あなたが通っていた道が細かったからである。もっとも、これは悪い知らせばかりではない。人格を作り直すのは何年もかかるが、通う場所を変えるのは今週末でもできる。もちろん、新しい場所で見つけた相手も、たぶんあなたによく似ているだろう。人はどこへ行っても、同じ壁紙を選ぶ。
Q1. Bahnsら(2017)の1,523組の実測では、測定変数の____%でペア内の類似が有意だった一方、関係の長さが類似を予測した検定が有意になったのは全体の____%で、これは偶然に期待される____%とほぼ同じだった。穴埋め
Q2. Bahns, Pickett & Crandall(2012)が大きく多様な大学と小さく均質な大学を比べて見つけたことは何か。選択
Q3. Bahns, Lee & Crandall(2019)の実験操作は何を変え、その結果どうなったか。一問一答
Q4. 本文は「正反対が惹かれ合う」をどの数字で値切ったか。またYouyouら(2017)が指摘した測定上の問題は何か。一問一答
Q5. Montoyaら(2008)のメタ分析について、実際の類似が魅力を予測した場面を「効果が強い順」に並べ、最後に有意でなかった場面を置け。(短い相互作用/既存の関係/相互作用なし)並べ替え
この1年で新しく話すようになった相手を5人挙げる。各人の名前の横に、出会った場所を1つだけ書く(職場、同じ習い事、子どもの学校、オンラインの特定のコミュニティ、など具体的に)。書き終えたら、5人が何種類の場所に分かれているかを数える。最後に、その種類数の下に一行だけ、次の1か月で新しく足せる場所の候補を1つ書く。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
あなたの実験(N=1)を始める → プロジェクトに追加(記録機能は準備中)
- McPherson M., Smith-Lovin L., Cook J.M. (2001) 'Birds of a Feather: Homophily in Social Networks', Annual Review of Sociology 27:415-444 — www.annualreviews.org
- Bahns A.J., Crandall C.S., Gillath O., Preacher K.J. (2017) 'Similarity in relationships as niche construction: Choice, stability, and influence within dyads in a free choice environment', Journal of Personality and Social Psychology 112(2):329-355 — quantpsy.org
- Bahns A.J., Pickett K.M., Crandall C.S. (2012) 'Social ecology of similarity: Big schools, small schools and social relationships', Group Processes & Intergroup Relations 15(1):119-131 — journals.sagepub.com
- Bahns A.J., Lee J., Crandall C.S. (2019) 'Culture and Mobility Determine the Importance of Similarity in Friendship', Journal of Cross-Cultural Psychology 50(6):731-750 — journals.sagepub.com
- Youyou W., Stillwell D., Schwartz H.A., Kosinski M. (2017) 'Birds of a Feather Do Flock Together: Behavior-Based Personality-Assessment Method Reveals Personality Similarity Among Couples and Friends', Psychological Science 28(3):276-284 — www.repository.cam.ac.uk
- Horwitz T.B., Balbona J.V., Paulich K.N., Keller M.C. (2023) 'Evidence of correlations between human partners based on systematic reviews and meta-analyses of 22 traits and UK Biobank analysis of 133 traits', Nature Human Behaviour 7:1568-1583 — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Montoya R.M., Horton R.S., Kirchner J. (2008) 'Is actual similarity necessary for attraction? A meta-analysis of actual and perceived similarity', Journal of Social and Personal Relationships 25(6):889-922 — journals.sagepub.com