やり抜く力を測ると、たいてい前からあった性格が返ってくる
粘り強さを測る8つの質問がある。答えると点数が出て、その点数は成績とわずかに一緒に動く。ただし、同じ場所にはもっと古い名前がすでに立っていて、そちらを先に測ると、新しいほうの取り分はほとんど残らない。
学びが続くかどうかを一つの言葉で言い表そうとする試みは、何度もあった。ここ十数年でいちばん流通したのが、長期の目標に対する情熱と粘り強さ——やり抜く力である。熟達そのものと練習量の話は芸道の棚の持ち場なので、ここでは踏み込まない。この棚が引き受けるのは、「長く続ける傾向」がどう測られてきたかのほうである。
8つの質問が測っているもの
この概念を測る道具として広く使われているのは、米国で2009年に Journal of Personality Assessment へ出た8項目の短縮版だ。項目は二つの下位尺度に分かれる。興味の一貫性(4項目)——長年ひとつのことに関心を保てるか。努力の粘り強さ(4項目)——うまくいかない時期でも手を動かし続けられるか。開発した側の確認的因子分析では、この二つがともに上位の一因子に載る構造が支持された、と報告されている。
この論文が示した予測の証拠は、標本ごとに別である。成人1,554人では到達した教育年数と転職の少なさ、10代279人では評定平均と、逆向きにテレビの視聴時間、士官学校の候補生1,248人では在籍の継続、綴り字の全国大会の出場者190人では勝ち上がった段階。別々の集団に、別々の結果が並んでいる。
ここまでは、道具の説明として何もおかしくない。問題は、この4つが要約されるときに起きる。4つの標本と4つの結果が、1本の矢印に畳まれる。 畳まれたものは短いので、よく運ばれる。
値切り:一文に並んだ4つは、別々の研究だった
学習の設計資料には、こういう一文が載る。「Grit が West Point 離脱率・スペリングビー成績・GPA・教師定着率を予測」。
一文に4つ入っている。原典まで戻すと、出どころは一つではない。前の3つは、いま見た2009年の尺度開発論文の中の、別々の標本である。4つめの教師の定着だけは別の研究で、米国で2014年に Teachers College Record へ出たものだ。標本は154人と307人の2つ。そして、そこで測られたやり抜く力は質問紙の回答ではない。結果を知らされていない評価者が、履歴書に書かれた大学時代の活動と職歴から、7点の基準表で採点した値である。
測り方も、集団も、年も別のものが、一文のなかで横に並んでいる。並べて書けば、一つの力が4つの場面を予測したように読める。そう読めるように整えたのは、研究ではなく要約のほうである。
どのくらい一緒に動くのか
2022年に Journal of Educational Psychology へ出たメタ分析は、137件の研究・156の独立した標本・のべ28万5,331人を集めた。全体としての相関は r = .19。二つの側面に分けると、努力の粘り強さが .21、興味の一貫性が .08 である。個人主義的な文化と集団主義的な文化のあいだで、この関連に有意な差は出ていない。
この値は、集めた研究の数と人数のわりに動かない。標本を増やしても .19 のあたりに落ち着く、というのは、測り方が安定しているという意味であって、関連が強いという意味ではない。大きな標本は、小さい関連を正確に測るためにも使える。
ここで指標を取り違えないでおきたい。.19 は相関係数であって、効果量ではない。 二つが一緒に動く度合いであって、片方を動かしたら他方がどれだけ動くか、ではない。そして .08 のほうは、実質的にはほとんど何も言っていない値である。にもかかわらず、この概念の名前には、情熱のほうがしっかり残っている。
上乗せが、残るかどうか
もっと厳しい問いがある。すでに知られている性格の測定を先に入れたあと、この変数に説明力が残るか。ノルウェーで2021年に Social Psychological and Personality Science へ出た研究は、大学生1,394人を対象に、誠実性の測り方を2通り試した。短い尺度で測ると、やり抜く力にも誠実性にも小さな上乗せが残る。ところが包括的な尺度で誠実性を測ると、大学の成績への上乗せは残らず、高校の成績への上乗せは約4%にとどまった。誠実性の下位側面のほうは、これに対してはるかに大きな説明力を示している。
測り方を変えただけで結論が変わる、ということでもある。粗い物差しで先に測っておけば、あとから入れた変数の取り分は大きく見える。上乗せの大きさは、しばしば統制した側の精度で決まっている。
米国で2017年に Journal of Educational Psychology へ出た研究も、同じ向きだった。高校生と大学生を対象に、やり抜く力と自己制御・誠実性・関与を同時に測っている。後の評定を予測したのは努力の粘り強さのほうだけで、興味の一貫性は予測しなかった。そして、自己調整や関与を測る他の変数のほうが、評定の予測としては強かった。
二つの研究に共通しているのは、やり抜く力を否定していないことである。否定されているのは、それが新しい変数だという前提のほうだ。
二つを一つにまとめてよいのか
2018年に Educational Researcher へ出た論考は、蓄積した証拠を整理してこう書いている——粘り強さと長期目標への情熱を単一の構成概念にまとめて受け入れる理由は見当たらない。教育の場で成功や成果の特に良い予測子であるという主張にも、介入によって動かしやすいという主張にも、支持は見つからないとしている。
ここには正面からの食い違いがある。2009年の尺度開発論文では、二つの下位尺度が上位の一因子に載る構造が支持された、と報告されていた。2018年の論考は、その合成そのものを支持できないと書く。同じ8項目について、開発した側と検討した側で、結論が逆を向いている。 どちらを採るかを決めるのは読む側の仕事ではないが、少なくとも「決着した話」ではない。決着した話として引かれているところだけが、この単位で値切る対象である。
時間・変化:名前がついてから、何が起きたか
順番はほぼ一定である。まず名前がついた。次に短い尺度ができ、8項目で答えやすいので大量に測られた。次に教育の場の言葉になり、標語として配られるようになった。それから、既存の性格の測定を統制する研究が出て、上乗せの説明力が縮んだ。最後に、構成概念そのものを合成してよいのかという問いが返ってきた。
逆向きにはほとんど動かない。名前が外れることは、まず起きない。 だから新しい名前を見たときに最初に確かめるのは、効果の大きさではなく、その名前が指している場所に、すでに別の名前が立っていないかである。立っていたら、両方を同時に測った研究を探す。この分野では、たいてい誰かがもう測っている。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるものの筆頭は、この言葉を続かなかった理由の説明に使うことである。8項目が測っているのは過去数年の行動の要約であって、これから何ができるかの上限ではない。点数が低いことは判決ではないし、点数を押し上げること自体を目標にする根拠も、いまのところ薄い。
標本の偏りを断っておく。ここまでの証拠の大半は、欧米の大学生と、学校に通っている児童・生徒から採られている。働きながら学んでいる大人を対象にした研究は、ごく少ない。 効果は短い期間で測られたものが多く、数か月後まで追った研究はその一部である。そして——もともと学ぶ余裕のある人ほど、その学習法を試せる、という逆向きを排除できない。 続けられた人のデータだけが残る、という偏りも同じ向きに効く。
助けるのは、粘りの量を増やす方向ではなく、粘りが必要になる回数を減らす方向の手当てである。二つの側面のうち成績と関係していたのが努力のほうだった、という結果は、そう読み替えられる。情熱を調達する話ではなく、手が止まる場面を減らす話になる。
もうひとつ助けになるのは、数字を見たときに何の指標かを確かめるという一手である。この単位に出てきた数字は、相関係数(.19 や .08)と、上乗せの説明力(0% や約4%)で、種類が違う。混ぜて読むと、小さい話が大きく聞こえたり、その逆が起きたりする。
最初の一歩は5分。半年以上続いている学びと、3か月以内にやめた学びを1つずつ書き出し、やめたほうについて「何が起きて手が止まったか」を1行だけ書く。性格の話にしない。 止まった場面の話にする。
次の単位は 062「感情調整」——道具箱の隣の引き出しである。ここでは新しい名前が前からある変数とどれだけ重なるかを見たが、あちらでは、同じ結果を効果量とパーセンタイルのどちらで書くかによって、話の大きさが変わる。
- 米国・2009年に Journal of Personality Assessment へ出た8項目の短縮版は、興味の一貫性4項目と努力の粘り強さ4項目という二つの下位尺度からなる。開発した側の確認的因子分析では、この二つがともに上位の一因子に載る構造が支持されたと報告されている
- 同じ2009年の論文が示した予測の証拠は標本ごとに別で、成人1,554人・10代279人・士官学校の候補生1,248人・綴り字の全国大会の出場者190人という4つの集団に、別々の結果が並んでいる
- 「West Point 離脱率・スペリングビー成績・GPA・教師定着率を予測」という一文のうち、教師の定着だけは別の研究(米国・2014年 Teachers College Record、標本154人と307人)から来ており、そこでのやり抜く力は質問紙の回答ではなく、結果を知らされていない評価者が履歴書から7点の基準表で採点した値である
- 米国・2022年に Journal of Educational Psychology へ出たメタ分析は137件の研究・156の独立標本・のべ28万5,331人を集め、やり抜く力と学業成績の相関を r = .19 と報告した。努力の粘り強さは .21、興味の一貫性は .08 で、個人主義と集団主義の文化差に有意差は出ていない
- ノルウェー・2021年に Social Psychological and Personality Science へ出た研究(大学生1,394人)は、短い尺度で誠実性を測ると双方に小さな上乗せが残るが、包括的な尺度で誠実性を測ると、やり抜く力が大学の成績に上乗せする説明力は残らず、高校の成績への上乗せは約4%にとどまったと報告した
- 米国・2017年に Journal of Educational Psychology へ出た研究は、後の評定を予測したのは努力の粘り強さのほうだけで、興味の一貫性は予測せず、自己調整や関与を測る他の変数のほうが評定の予測として強かったと報告した
- 米国・2018年に Educational Researcher へ出た論考は、粘り強さと長期目標への情熱を単一の構成概念にまとめて受け入れる理由は見当たらないとし、教育の場での特に良い予測子であるという主張にも、介入で動かしやすいという主張にも支持は見つからないとしている
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| やり抜く力は、他の性格の測定とは別に成果を予測する、新しく見つかった要因である | 米国・2022年のメタ分析(137件・28万5,331人)で、やり抜く力と学業成績の相関は r = .19、興味の一貫性に限れば .08 だった。さらにノルウェー・2021年の研究(大学生1,394人)では、包括的な尺度で誠実性を先に測ると、大学の成績への上乗せは残らず、高校の成績への上乗せも約4%にとどまった。新しいのは名前のほうで、測っている場所にはすでに別の名前が立っていた可能性が高い |
| 尺度の点数が低ければ、続ける力が足りないということだ | 8項目が測っているのは過去数年の行動の要約であって、これから何ができるかの上限ではない。しかも成績と関係していたのは二つの下位尺度のうち努力の粘り強さのほうで、興味の一貫性のほうは .08 である。米国・2017年の研究では、後の評定の予測としては自己調整や関与を測る他の変数のほうが強かった |
| やり抜く力は介入で伸ばせることが確かめられている | 米国・2018年に Educational Researcher へ出た論考は、この概念が介入によって動かしやすいという主張にも、教育の場での特に良い予測子であるという主張にも、支持は見つからないと書いている。開発した側の2009年の論文が二つの下位尺度を一因子にまとめられると報告し、2018年の論考がその合成そのものを支持できないとしている——結論は逆を向いたままで、決着していない |
やり抜く力には、標語として理想的な性質がある。8問で測れる。数字が出る。そして低かった人には、次に何をすればよいかを言わなくて済む。皮肉なのは、この概念でいちばん粘り強く続いたのが、当の概念ではなく、その名前のほうだったことである。上乗せの説明力は、統制する物差しを精密にするたびに薄くなっていった。名前だけが、いまも履歴書の余白のあたりに残っている。
Q1. 米国・2022年のメタ分析(137件・のべ28万5,331人)は、やり抜く力の二つの下位尺度と学業成績の相関をそれぞれいくつと報告したか。下位尺度の名前とともに答えよ。一問一答
Q2. 「West Point 離脱率・スペリングビー成績・GPA・教師定着率を予測」という一文を原典まで戻したとき、正しいものはどれか。選択
Q3. ノルウェー・2021年の研究(大学生1,394人)が報告した、誠実性を統制したあとのやり抜く力の上乗せの説明力として正しいものはどれか。選択
Q4. 米国・2018年に Educational Researcher へ出た論考の主張として正しいものはどれか。選択
Q5. 本文がたどった「名前がついてから」の順番を、古い順に並べよ。(教育の場の言葉になり、標語として配られる/短い尺度ができ、大量に測られる/構成概念そのものを合成してよいのかという問いが返る/既存の性格の測定を統制する研究が出て、上乗せが縮む/名前がつく)並べ替え
紙かメモアプリを開く。半年以上続いている学びを1つ、3か月以内にやめた学びを1つ挙げ、名前だけを書く。次に、やめたほうについて「何が起きて手が止まったか」を1行だけ書く。書くのは出来事であって、性格ではない。時間が取れなくなった、必要が消えた、分からないところで詰まった、といった書き方にする。最後に、続いているほうについても同じ形で「何があるから止まらずに済んでいるか」を1行書く。学校に通っていない場合も、資格・語学・技術書・趣味の練習など、自分が続けようとしたもので同じように書ける。他人については書かない。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
あなたの実験(N=1)を始める → プロジェクトに追加(記録機能は準備中)
- Duckworth A.L., Quinn P.D. (2009) 'Development and Validation of the Short Grit Scale (Grit–S)', Journal of Personality Assessment 91(2):166-174 — www.tandfonline.com
- Robertson-Kraft C., Duckworth A.L. (2014) 'True Grit: Trait-Level Perseverance and Passion for Long-Term Goals Predicts Effectiveness and Retention Among Novice Teachers', Teachers College Record 116(3):1-27 — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Lam K.K.L., Zhou M. (2022) 'Grit and Academic Achievement: A Comparative Cross-Cultural Meta-Analysis', Journal of Educational Psychology 114(3):597-621 — eric.ed.gov
- Hagen F.S., Solem S. (2021) 'Academic Performance: The Role of Grit Compared to Short and Comprehensive Inventories of Conscientiousness', Social Psychological and Personality Science 12(5):667-675 — journals.sagepub.com
- Muenks K., Wigfield A., Yang J.S., O'Neal C.R. (2017) 'How True Is Grit? Assessing Its Relations to High School and College Students’ Personality Characteristics, Self-Regulation, Engagement, and Achievement', Journal of Educational Psychology 109(5):599-620 — eric.ed.gov
- Credé M. (2018) 'What Shall We Do About Grit? A Critical Review of What We Know and What We Don’t Know', Educational Researcher 47(9):606-611 — journals.sagepub.com