「積載率を上げれば効率が上がる」——だが、その積載率は何ベースか
積載率を上げれば効率が上がる、だから共同配送で満載にすればよい、と教わる。だがその積載率は、重量で測るか容積で測るかで別の数字になる。軽くて嵩張る荷は、容積では満杯でも重量では低い。共同配送の削減率も、うまく折り合えた組から聞いた話であることが多い。分母を言わない積載率は、良し悪しを判定できない。
前の単位では、一回の配送のルートをどう組むのかを扱った。ここでは、その一台に、どれだけ積めているのかを扱う。
前の単位と同じ見方が、ここでも効く。「積載率◯%改善」という数字も、どの分母で測ったのかを言わない限り、紙の上の合格点である。 数えた主体が、自分に都合のよい分母を選べてしまう——この棚が16回くり返す見方の、二つ目の顔がここに出る。
「積載率」は、一つの数ではない
まず用語をほどく。積載率とは、トラックの容量のうち、どれだけ荷を積めたかの割合のことだ。ところが、この「容量」の測り方が一つではない。重量で測るのか、容積(かさ)で測るのか、トンキロ(重さ×距離)で測るのか、便の数で測るのか、荷台の床面積で測るのか。 どれを分母に選ぶかで、同じ一台の同じ積み方が、別々の数字になる。
2006年に McKinnon と Ge が *International Journal of Physical Distribution & Logistics Management* 誌 36(5):391-410 で、トラックの空車走行をどう減らせるかを後ろ向きに分析した研究は、車両の稼働をどう測るかに複数のものさしがあることを整理している。空車率、実車率、重量ベースの積載率、容積ベースの積載率——これらは同じトラックについて、別々の値を返す。 「良くなった/悪くなった」という判断は、どのものさしを手に取ったかで、反転しうる。
いちばんわかりやすいのは、軽くて嵩張る荷物だ。 座布団や空き容器やスナック菓子のように、軽いのに場所を取る荷は、荷台が容積では満杯でも、重量では低い。逆に、水や本や金属のように重くて小さい荷は、重量で上限に達しても、荷台には隙間が残る。だから「積載率90%」と聞いても、それが重量の90%なのか容積の90%なのかで、荷台の見た目はまったく違う。分母を言わない積載率は、良し悪しを判定できない。
共同配送は、うまくいった組み合わせから聞いた話が多い
積載率を上げる王道として、よく共同配送——複数の荷主や事業者の荷物を1台にまとめて運ぶこと——が挙げられる。理屈は正しい。半端な荷を持ち寄れば、一台をより埋められる。だが、実証はもう少し込み入っている。
2007年に Cruijssen らが *Transportation Research Part E* 誌 43(2):129-142 で、物流の水平的協働(同じ立場の事業者どうしが横に手を組むこと)の機会と障壁を調べ、同年に Cruijssen・Dullaert・Fleuren が *Transportation Journal* 46(3):22-39 で文献を総括した。2013年には Verdonck らが *Transport Reviews* 誌 33(6):700-719 で運送会社の側から協働を整理し、2018年に Basso らが *International Transactions in Operational Research* 誌 26(3):775-793 で、実地に導入するときの障害と難しさを調べた。これらが繰り返し指摘するのは、計算上は2〜3割の削減が見込めても、現場では1割前後に縮むか、そもそも成立しないことがあるという点だ。
なぜ縮むのか。最大の障壁は、荷物の話ではなく、人と組織の間の話である。利益をどう分けるか(配分)、どこまで情報を見せ合うか(情報共有)、組む相手と荷姿や商習慣が合うか(適合)——ここが折り合わないと、満載の計算図は絵に描いた餅になる。そして、世に流通する共同配送の成功率や削減率は、うまく折り合えた組み合わせから聞いた話であることが多い。折り合えずに解散した組は、事例集には載らない。成功した組だけを数えれば、削減率は高く見える。
ここでも、書いておく。共同配送が悪いと言いたいのではない。 折り合えれば効く。ただ、「やれば必ず得」ではなく、配分・情報・適合という三つの折り合いのコストが先にある、というだけである。
公式の定義に、分母がはっきり書いてある
分母が数字を左右するという話は、抽象論ではない。国土交通省が公表している自動車輸送統計の用語解説には、積載効率の分母が明記されている——「自動車の輸送能力に対する、実際の輸送活動(トンキロ)の割合を表したものです。輸送トンキロ÷能力トンキロ×100」。つまり公式統計の積載効率は、トンキロ(重さ×距離)を分子・分母に置いた一つの定義であって、容積や便数の話ではない。同じ解説は実車率も定める——「自動車が走行した距離のうち、貨物(旅客)を輸送した距離の割合を表したもの。実車キロ÷走行キロ×100」。
大事なのは、公式がどれか一つの分母を選んで定義を固定していることだ。だから公的な数字どうしは比べられる。逆に言えば、分母を明示しない民間の「積載率◯%」は、公式のどの定義とも接続していないかもしれない。数字を受け取ったら、まず「これは何ベースか」を問う。それが、この単位の芯である。
時間・変化:2006年から今へ
順に置く。2006年、McKinnon と Ge が空車走行と稼働の測り方の多様性を分析する。2007年、Cruijssen らが水平的協働の機会と障壁を、二本の論文で示す。2013年、Verdonck らが運送会社視点で協働を整理し、2018年、Basso らが導入の障害を調べる。そして公式の側では、国交省が積載効率と実車率を、分母をはっきり決めて定義している。
この十数年で確からしくなったのは、「積載率を上げれば効率が上がる」という単純な因果ではない。 確からしくなったのは、積載率はどの分母で測るかで別物になり、共同配送の削減率は折り合えた組の生存者の証言に偏りやすい、という向きのほうである。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるものの筆頭は、分母を確かめずに積載率どうしを比べてしまうことである。重量ベースの90%と容積ベースの90%を並べて「同じくらい積めている」と読むと、荷姿の違う二台を取り違える。
標本の偏りも断っておく。共同配送の実証の多くは、まとまった量を扱う事業者どうしの協働から採られている。1日に数個を送る人や、荷姿が特殊な人が、同じ削減率を得られるとはかぎらない。
助けになるのは、自分が使っている(あるいは受け取っている)積載率が、何ベースの数字なのかを一つ書き出すという一手である。重量か、容積か、便数か。分母がわかれば、その数字が何を褒めていて何を見ていないかが、見当をつけられる。
最初の一歩は10分。直近に自分が出した便を一つ選び、左に「その便の積み方の実感——重さで埋まったのか、かさで埋まったのか、まだ隙間があったのか」を、右に「もし積載率という数字を付けるなら、それは重量・容積・便数のどの分母になりそうか」を書く。どちらが正しいかは書かない。分母が二つ以上ありうる箇所に、印を付けるだけである。 運送会社や取引先に聞く必要はない。印がゼロなら、それも一つの発見だ。
次の単位は 387「輸送コストを下げるには?」——積み方の次に、その運びにかかる費用が、分析で本当に下がるのかを、この土台の上に積み上げる。
- 積載率とはトラックの容量のうちどれだけ荷を積めたかの割合だが、容量の測り方が一つではない。重量・容積(かさ)・トンキロ(重さ×距離)・便の数・荷台の床面積のどれを分母に選ぶかで、同じ一台の同じ積み方が別々の数字になり、良し悪しの判断が反転しうる。分母を言わない積載率は良し悪しを判定できない
- 2006年にMcKinnonとGeがInternational Journal of Physical Distribution & Logistics Management誌36(5):391-410で、トラックの空車走行の削減を後ろ向きに分析し、空車率・実車率・重量ベース積載率・容積ベース積載率が同じトラックについて別々の値を返すことを整理した。車両稼働の測り方は複数あり、どのものさしを取るかで結論が変わる
- 軽くて嵩張る荷(座布団・空き容器・スナック菓子など)は荷台が容積では満杯でも重量では低く、重くて小さい荷(水・本・金属など)は重量で上限でも荷台に隙間が残る。だから積載率90%と聞いても重量の90%か容積の90%かで荷台の見た目はまったく違い、分母抜きでは判定できない
- 共同配送(複数の荷主・事業者の荷物を1台にまとめて運ぶこと)は理屈では積載率を上げるが、Cruijssenら2007(Transportation Research Part E誌43(2):129-142ほか)・Verdonckら2013・Bassoら2018が示すのは、計算上の2〜3割の削減が現場では1割前後に縮むか成立しないことがあるという実証である
- 共同配送の最大の障壁は荷物ではなく人と組織の折り合いにある——利益をどう分けるか(配分)、どこまで情報を見せ合うか(情報共有)、組む相手と荷姿や商習慣が合うか(適合)。流通する成功率や削減率は、うまく折り合えた組から聞いた話に偏り、解散した組は事例集に載らない。成功した組だけを数えれば削減率は高く見える
- 国土交通省の自動車輸送統計の用語解説は、積載効率を『自動車の輸送能力に対する、実際の輸送活動(トンキロ)の割合を表したものです。輸送トンキロ÷能力トンキロ×100』とトンキロ基準で定義し、実車率を『実車キロ÷走行キロ×100』と定める。公式はどれか一つの分母を選んで定義を固定しているため公式どうしは比べられる
- この十数年で確からしくなったのは、積載率を上げれば効率が上がるという単純な因果ではなく、積載率はどの分母で測るかで別物になり、共同配送の削減率は折り合えた組の生存者の証言に偏りやすいという向きである。数字を受け取ったら、まず『これは何ベースか』を問う
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 積載率を上げれば効率が上がる。だから積載率90%と聞けば、その一台はよく積めていると判断できる | 積載率は一つの数ではない。重量・容積(かさ)・トンキロ・便数・床面積のどれを分母に選ぶかで、同じ一台の同じ積み方が別々の値になる。2006年のMcKinnon&Ge(IJPDLM誌36(5):391-410)は車両稼働に複数のものさしがあることを整理した。軽くて嵩張る荷は容積では満杯でも重量では低い。分母を言わない積載率は、良し悪しを判定できない |
| 共同配送で他社と荷物をまとめれば、計算どおりに積載率が上がり2〜3割の削減が手に入る | Cruijssenら2007(×2)・Verdonckら2013・Bassoら2018が繰り返し示すのは、計算上の2〜3割の削減が現場では1割前後に縮むか、そもそも成立しないことがあるという点である。最大の障壁は荷物ではなく、利益配分・情報共有・パートナー適合という人と組織の折り合いにある。流通する削減率は、折り合えた組(生存者)から聞いた話に偏る |
| 積載率は客観的な数字なので、どの資料の積載率どうしでもそのまま比べられる | 国交省の自動車輸送統計は積載効率を『輸送トンキロ÷能力トンキロ×100』とトンキロ基準で一つに固定して定義している。公式どうしは比べられるが、分母を明示しない民間の『積載率◯%』は公式のどの定義とも接続していないかもしれない。数字を受け取ったら、まず『これは何ベースか』を問うのがこの単位の芯である |
皮肉なのは、積載率という数字が、いちばん客観的な顔をしていることである。パーセントで書かれ、小数点まで付いていると、誰が測っても同じ値が出るように見える。だが、その一桁は、重量で数えたのか、かさで数えたのか、便で数えたのかを、教えてくれない。満載の写真は、荷台が埋まったことは映すが、どの分母で埋まったのかは映さない。積載率が高く見えるとき、たいていそれは、いちばん埋まって見える分母を、まだ誰も裏返していないだけかもしれない。
Q1. 積載率は一つの数ではない。____・____(かさ)・トンキロ・便数のどれを ____ に選ぶかで、同じ一台の同じ積み方が別々の数字になる。穴埋め
Q2. 「軽くて嵩張る荷」を例に、積載率を分母抜きで語れないのはなぜかを説明せよ。一問一答
Q3. 共同配送の削減率について、Cruijssenら・Verdonckら・Bassoらの実証が繰り返し示したこととして正しいものはどれか。選択
Q4. 国土交通省の自動車輸送統計が積載効率をどう定義しているか、分母に何を置いているかに触れて答えよ。その定義が『分母を確かめる』という本単位の主張とどう結びつくかも述べよ。一問一答
Q5. この単位が扱った研究を、年の早い順に並べよ。(ア)Bassoらが協働の導入の障害と難しさを調べる(イ)McKinnonとGeが空車走行と稼働の測り方を分析する(ウ)Verdonckらが運送会社視点で協働を整理する(エ)Cruijssenらが水平的協働の機会と障壁を示す並べ替え
紙かメモアプリに今日の日付を書く。次に、直近に自分が出した便(宅配・発送・配達なんでもよい)を一つ選ぶ。ページを左右に分け、左に『その便の積み方の実感』——重さで埋まったのか、かさ(容積)で埋まったのか、まだ隙間があったのか、便の数は多かったか——を、思い出せる範囲で書く。右に、もしその便に『積載率』という数字を付けるとしたら、それは重量・容積・便数(台数)のどの分母になりそうかを書く。どちらが正しいかは書かない。分母が二つ以上ありうる(重量でも容積でも語れてしまう)箇所にだけ印を付ける。最後に、印の数を1つの数字で書き添える。運送会社や取引先に聞く必要はない。自分の便の記録だけで完結させる。外注に任せている場合も、自分が把握している範囲でそのまま書けばよい。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
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- McKinnon A.C., Ge Y. (2006) ‘The potential for reducing empty running by trucks: a retrospective analysis’, International Journal of Physical Distribution & Logistics Management 36(5):391-410 — doi.org
- Cruijssen F., Cools M., Dullaert W. (2007) ‘Horizontal cooperation in logistics: Opportunities and impediments’, Transportation Research Part E: Logistics and Transportation Review 43(2):129-142 — doi.org
- Cruijssen F., Dullaert W., Fleuren H. (2007) ‘Horizontal Cooperation in Transport and Logistics: A Literature Review’, Transportation Journal 46(3):22-39 — doi.org
- Basso F., D’Amours S., Rönnqvist M., Weintraub A. (2018) ‘A survey on obstacles and difficulties of practical implementation of horizontal collaboration in logistics’, International Transactions in Operational Research 26(3):775-793 — doi.org
- Verdonck L., Caris A., Ramaekers K., Janssens G.K. (2013) ‘Collaborative Logistics from the Perspective of Road Transportation Companies’, Transport Reviews 33(6):700-719 — doi.org
- 国土交通省『自動車輸送統計調査 用語の解説』(2026年8月閲覧) — www.mlit.go.jp