「習慣化には66日」の66日は平均ではなく、18日から254日まで開いたばらつきの真ん中だった
習慣が身につくまで66日、という数字がある。原典に当たると、それは平均ではなく中央値で、範囲は18日から254日まで開いている。しかも観察が続いたのは84日までで、254日は曲線を延ばして得た値だ。254日目まで見た人は、1人もいない。
続く人は、意志が強いのではない
前の単位では、今日1日をどう使ったかを紙に残す話をした。残した紙が明日も同じ場所に置かれるようにする——ここが、その仕組みの話である。
続けている人に理由を聞くと、たいてい意志の話が返ってくる。ところが、身体活動について10件の研究・のべ3,899人を集めた2013年のメタ分析では、やろうと思った人のうち行動に至らなかったのが36%、至ったのが42%だった。つまり意図を持った人のおよそ46%が、そのまま行動につながっていない。やろうと思っていなかった人が行った割合は2%である。意図は、行動の手前でかなりの数を落とす。
だから軸はこうなる。続く人は意志が強いのではなく、続かなくても回る形にしてある。
66日という数字の中身
「習慣化には66日」という数字は、2010年に European Journal of Social Psychology へ出た研究に由来する。原典に当たると、中身はこうだ。
英国で96人を募集し、食べる・飲む・体を動かすといった単純な行動を1つずつ選んでもらった。例として挙がっているのは「昼食のときに果物を食べる」程度のものである。毎日同じ場面でそれを行い、その日にどれくらい自動的だったかを12週間——84日間——記録し続けた。十分なデータが集まったのは82人。
自動化の伸びに曲線を当てはめられたのは62人、当てはまりが良かったのは39人で、82人の48%にあたる。その39人について、自動化が頭打ちの95%に達するまでの日数は、中央値が66日、範囲は18日から254日だった。
ここで2つ、書き添えることがある。1つは、66日は平均ではなくばらつきの真ん中だということ。もう1つは、観察が続いたのは84日までであるということだ。254日という数字は、84日ぶんの記録に曲線を当てはめて、その先へ延ばして得られた値である。実際に254日目まで見た人はいない。
似た形の研究がもう1件ある。2021年に British Journal of Health Psychology へ出た無作為化比較試験は、192人を募って食に関する行動を1つ選ばせ、日常の決まった動作にひもづける条件と、時刻にひもづける条件に割り当てて84日間追った。解析できたのは135人。自動化も計画の実行も両条件で上がったが、条件のあいだに差は出なかった。習慣ができた人が頭打ちに達するまでの日数は、中央値59日である。
66日でも59日でもいい。持ち帰るのは日数ではなく、幅のほうだ。
探して見つからなかった——「21日で習慣になる」
もう1つの数字も探した。「21日続ければ習慣になる」。査読された研究のうち、この基準の由来を報告したものを探したが、一次情報にはたどり着けなかった。
探したのは3か所。習慣形成を扱う査読誌の総説と原著、この数字と習慣という語を組み合わせた学術検索、そして66日の研究を行った研究チームが後に書いた査読論文である。3つ目に、たどった跡があった。2012年に British Journal of General Practice へ出た論文が、こう書いている——この俗説は、形成外科の治療を受けた人がおよそ21日で新しい外見に心理的に順応した、という逸話的な証拠に由来するようだ。
つまり出どころは1960年代の一般書であって、査読された研究ではない。しかも元の話は、習慣が身につくまでの日数ではなく、変わった自分の姿に慣れるまでの日数である。同じ論文は、日々の反復にもとづく習慣形成についてはおよそ10週間を見込むのが役に立つかもしれない、と書き添えている。
意志の代わりに置くもの——もし〜ならば、の形
では、何を置くか。もしXが起きたら、Yをする。この形で先に決めておく手つきを実行意図と呼ぶ。目標そのものではなく、目標を持ったあとの「いつ・どこで・どうやって」を1文に固定する。
2006年に Advances in Experimental Social Psychology へ出たメタ分析は、94の独立した検定・のべ8,461人を集め、この形の効果を d で0.65(中から大)と報告した。目標に取りかかること、始めたものを妨害から守ること、見込みのない道から手を引くこと——効き方は複数の場面で確かめられている。
ただし、この数字をそのまま健康の場面へ持ち込めない。2011年に Appetite へ出たメタ分析は、食に関する行動に絞って23件を集め、全体の効果は d で0.43(95%区間 0.28から0.57)と報告した。内訳は、健康的な食べ方を増やす側が0.51、望まない食べ方を減らす側が0.29である。減らす側は、増やす側の半分ほどしかない。しかもこのレビュー自身が、増やす側の数字は、対照条件の置き方が最適でない研究によって膨らんでいる可能性があると断っている。
比べる相手を変えると効果は縮む。この棚が16回書いてきた形が、最後の単位でも同じように出る。
時間・変化:1日抜けた翌日に、何が起きるか
続かない最大の理由は、続かなかった日の扱いである。66日の研究は、そこも測っていた。1日実行しそこねた直後、自動化の得点は下がる。下がり幅は、その尺度で平均0.29点。統計的に意味のある差にはならず、1日の抜けによる長期的な損失は見られなかった。
時間の順に見ると、こうなる。始めた直後は、伸びがいちばん大きい。しばらくすると伸びが鈍り、そこから頭打ちまでが長い。やめる人が出るのは、たいてい伸びが鈍ったあたりである。そして1日抜けても、次の日に戻れば線はほぼそのまま続く。壊れるのは1日の抜けではなく、抜けたことを理由に、記録ごとやめてしまうときだ。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるものの筆頭は、日数を目標にすることである。66日も、21日も、10週間も、自分がどこにいるかを測る物差しにはならない。幅が18日から254日まで開いている数字を、自分の締切に使えない。第二の妨げは、続かなかった人を意志の弱さで説明することだ。当てはまりの良かったのが82人中39人だったという事実は、残りの43人の人格ではなく、単純な行動でさえ、進み方は一様ではないことを示している。
標本の偏りを断っておく。66日の研究は英国の96人、そのうち解析されたのは82人、曲線が当てはまったのは39人。2021年の試験も84日で135人である。行動はいずれも単純なもので、複雑な行動や、体調に波のある人、薬を飲んでいる人を対象にした検証はずっと少ない。そして、観察研究で見えた関連は、健康な人ほどその習慣を持てる、という逆向きを排除できない。続けられた人のデータだけが残る、という偏りも同じ形で効いている。
助けるのは、意志ではなく1行だ。最初の一歩は3分。続けたいと思っている行動を1つ選び、その直前に必ず起きている出来事を1件だけ書く。歯を磨く、鍵を置く、湯を沸かす——毎日ほぼ確実に起きるものならなんでもいい。行動のほうは、まだ決めなくてよい。先に決めるのは、きっかけの側である。
二つの空白に戻る
この棚は、16回同じ手つきをした。ある要素について、体の中で何が起きているかを書き、効くと確かめられた範囲を探し、その範囲の外で何が起きるかを書いた。16回とも、行き着いたのは同じ2つである。
一つめ。効くと確かめられた範囲は、たいてい売り文句よりずっと狭かった。比べる相手を変えるだけで、効果は目に見えて縮んだ。この単位でも同じことが起きている——0.65が、健康の場面に絞ると0.43になり、減らす側では0.29になり、そして増やす側の0.51にすら、対照条件の置き方という断りが付く。
二つめ。体は、自分では見えない。血圧も、炎症も、腸の中も、眠っている自分も、直接は見られない。見えないものについての報告は、後から作られる。
習慣の話は、この二つめが最も濃く出る場所である。続いた人に理由を聞けば、理由は返ってくる——意志が強かった、覚悟が決まった、あの本を読んだ。だが続いたという事実が先にあり、説明はその後で選ばれている。続かなかった人にも、理由は同じだけ用意できる。用意できることと、それが原因であることは別だ。
だからこの棚が最後に置くのは、決意ではなく、外に出しておける1行である。きっかけと、その直後にすることを、先に書いておく。書いてあれば、うまくいったときも、いかなかったときも、後から出てきた説明と突き合わせる相手がある。体は見えないままだ。だが、紙は見える。
- Lally, van Jaarsveld, Potts & Wardle 2010(European Journal of Social Psychology 40(6):998-1009)は英国で96人を募り、食べる・飲む・体を動かすといった単純な行動を1つ選ばせて84日間毎日記録させた。十分なデータが集まったのは82人、曲線を当てはめられたのは62人、当てはまりが良かったのは39人(82人の48%)である
- その39人について、自動化が頭打ちの95%に達するまでの日数は中央値66日、範囲は18日から254日だった。66日は平均ではなくばらつきの真ん中であり、観察は84日までなので254日は曲線からの外挿である
- 「21日で習慣になる」の由来を査読誌で探したが、一次情報にたどり着けなかった。研究チームが2012年に British Journal of General Practice へ出した論文は、この俗説が、形成外科の治療を受けた人がおよそ21日で新しい外見に心理的に順応したという逸話的な証拠に由来するようだと書き、日々の反復にもとづく習慣形成にはおよそ10週間を見込むのが役に立つかもしれないとしている
- Keller ら 2021(British Journal of Health Psychology 26(3):807-824)は192人を募り、食に関する行動を日常の決まった動作にひもづける条件と時刻にひもづける条件に無作為に割り当て84日間追った。解析は135人。自動化も計画の実行も両条件で上がったが条件間に差はなく、頭打ちまでの日数は中央値59日だった
- Gollwitzer & Sheeran 2006(Advances in Experimental Social Psychology 38:69-119)は「もしXが起きたらYをする」という形の効果について、94の独立した検定・のべ8,461人を集め、目標達成への効果を d で0.65(中から大)と報告した
- Adriaanse ら 2011(Appetite 56(1):183-193)は食に関する行動に絞って23件を集め、全体の効果を d で0.43(95%区間0.28から0.57)と報告した。健康的な食べ方を増やす側が0.51、望まない食べ方を減らす側が0.29で、増やす側の数字は対照条件の置き方が最適でない研究によって膨らんでいる可能性があると断られている
- Rhodes & de Bruijn 2013(British Journal of Health Psychology 18(2):296-309)は身体活動について10件・のべ3,899人を集め、やろうと思った人のうち行動に至らなかったのが36%、至ったのが42%、意図を持った人のおよそ46%が行動につながっていなかったと報告した。やろうと思っていなかった人が行った割合は2%である
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 習慣が身につくまでには66日かかる、と研究で分かっている | 原典に当たると、66日は平均ではなく中央値であり、範囲は18日から254日まで開いている。英国で96人を募り、十分なデータが集まったのは82人、自動化の伸びに曲線を当てはめられたのは62人、当てはまりが良かったのは39人(82人の48%)である。しかも観察が続いたのは84日までなので、254日という値は84日ぶんの記録に曲線を当てはめて先へ延ばした外挿であり、実際に254日目まで見た人はいない。2021年の無作為化比較試験では中央値59日だった。持ち帰るのは日数ではなく幅のほうである |
| 21日続ければ習慣になる、というのは古典的な研究の知見だ | 査読された研究でこの基準の由来を報告したものを、習慣形成を扱う査読誌の総説と原著、この数字と習慣という語を組み合わせた学術検索、66日の研究チームが後に書いた査読論文の3か所で探したが、一次情報にたどり着けなかった。たどれた跡は1つだけで、2012年に British Journal of General Practice へ出た論文が、この俗説は形成外科の治療を受けた人がおよそ21日で新しい外見に心理的に順応したという逸話的な証拠に由来するようだと書いている。出どころは1960年代の一般書であり、しかも元の話は習慣が身につく日数ではなく、変わった自分の姿に慣れるまでの日数である |
| 1日サボると、それまで積み上げた習慣が台無しになる | 66日の研究はそこも測っていた。1日実行しそこねた直後、自動化の得点は平均0.29点下がったが、統計的に意味のある差にはならず、1日の抜けによる長期的な損失は見られなかった。壊れるのは1日の抜けではなく、抜けたことを理由に記録ごとやめてしまうときである。なお、続けられなかった人を意志の弱さで説明しないこと——単純な行動でさえ、曲線が良く当てはまったのは82人中39人で、進み方は一様ではない |
習慣の本は、たいてい日数から始まる。21日、66日、10週間。どれも、読んだ人が自分の位置を測れそうな気持ちになる数字だ。原典に当たると、21日は査読誌に見当たらず、66日は18日から254日まで開いた幅の真ん中で、その254日を実際に見た人は1人もいない。それでも数字は残る。幅より数字のほうが、表紙に刷りやすいからである。この棚が16回書いてきたのは、その表紙の裏側だった。最後に持ち帰るものは1行でいい——きっかけと、その直後にすること。うまくいったら、あなたはきっと別の理由を思いつくだろう。思いついた理由と、先に書いた1行を、そのとき見比べてほしい。
Q1. 2010年の研究では、自動化が頭打ちの95%に達するまでの日数は中央値( ① )日、範囲は( ② )日から( ③ )日だった。ただし記録が続いたのは( ④ )日までである。穴埋め
Q2. 2010年の研究の解析対象について、正しいものはどれか。選択
Q3. 「もしXが起きたらYをする」という形の効果量について、本文が並べた数字として正しいものはどれか。選択
Q4. 「21日で習慣になる」について、本文が書いていることとして正しいものはどれか。選択
Q5. 1日実行しそこねたあと、本文が書いている順に並べ替えよ。A 次の日に戻れば、線はほぼそのまま続く/B 実行しそこねた日がある/C 翌日、自動化の得点が平均0.29点下がる(統計的に意味のある差にはならない)/D 抜けたことを理由に記録ごとやめると、そこで壊れる並べ替え
今日1回、3分。続けたいと思っている行動を1つ選ぶ(内容は問わない。今日はまだ実行しなくてよい)。次に、その行動の直前に必ず起きている出来事を1件だけ探して書く。条件は3つ——毎日ほぼ確実に起きること、自分が気づける形で起きること、時間帯が大きくはずれないこと。例として使えるのは、歯を磨く、鍵を置く、湯を沸かす、上着をかける、画面を閉じる、といった動作である。時刻そのものをきっかけにしてもよい(2021年の試験では、決まった動作にひもづけた場合と時刻にひもづけた場合で差は出ていない)。書く形は1行でよい——「もし( )が起きたら、( )をする」。最後に、そのきっかけが昨日も一昨日も起きていたかを思い出し、○か×を付ける。×なら、きっかけだけを別のものに書き換える。行動のほうは変えない。体を動かすことを条件にしなくてよいし、体重・体脂肪・カロリーは書かない。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
あなたの実験(N=1)を始める → プロジェクトに追加(記録機能は準備中)
- Lally P., van Jaarsveld C.H.M., Potts H.W.W., Wardle J. (2010) 'How are habits formed: Modelling habit formation in the real world', European Journal of Social Psychology 40(6):998-1009 — onlinelibrary.wiley.com
- Gardner B., Lally P., Wardle J. (2012) 'Making health habitual: the psychology of habit-formation and general practice', British Journal of General Practice 62(605):664-666 — bjgp.org
- Keller J., Kwasnicka D., Klaiber P., Sichert L., Lally P., Fleig L. (2021) 'Habit formation following routine-based versus time-based cue planning: A randomized controlled trial', British Journal of Health Psychology 26(3):807-824 — bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com
- Gollwitzer P.M., Sheeran P. (2006) 'Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-analysis of Effects and Processes', Advances in Experimental Social Psychology 38:69-119 — www.sciencedirect.com
- Adriaanse M.A., Vinkers C.D.W., De Ridder D.T.D., Hox J.J., De Wit J.B.F. (2011) 'Do implementation intentions help to eat a healthy diet? A systematic review and meta-analysis of the empirical evidence', Appetite 56(1):183-193 — www.sciencedirect.com
- Rhodes R.E., de Bruijn G.J. (2013) 'How big is the physical activity intention-behaviour gap? A meta-analysis using the action control framework', British Journal of Health Psychology 18(2):296-309 — bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com