転職に効いたのは、いちばん弱い紐帯ではなく、中くらいに弱い紐帯だった
弱いつながりが強い、というのは50年前の観察である。そして50年間、それは相関でしかなかった。2,000万人を実際に動かして測ってみると、いちばん効いたのは最も弱い紐帯でも最も強い紐帯でもなく、その中間だった。人脈という言葉が扱えていないのは、まさにこの中間である。
誰と誰のあいだに立っているか
前の単位で、友人からの影響は観察データが言うほど大きくないこと、そして人を配置しても本人は同類のなかへ潜ることを見た。ここまでは、相手一人ひとりの話だった。
この単位が扱うのは、相手ではなく配置である。あなたの友人たちが互いにどれくらい知り合いか。あなたはどの集団とどの集団のあいだに立っているか。そこに何が流れてくるか。設計という言葉を使うが、部品は人間なので、思いどおりにはならない。それでも、思いどおりにならない部分の輪郭くらいは分かってきている。
仕事をくれた相手に、よく会っていた人は6人に1人だった
出発点は1973年のグラノヴェッターの論文である。彼が報告したのは、人づてに仕事を見つけた人たちに「その相手と当時どれくらい会っていたか」を尋ねた結果だった。よく会っていたと答えたのは16.7%、ときどきが55.6%、めったに会わなかったが27.8%。回答者は54人と、いま読むとかなり小さい。
それでもこの数字が半世紀にわたって引用されてきたのは、直感を裏返したからだ。仕事の情報を持ってきたのは、毎日顔を合わせる親友ではなく、たまにしか会わない誰かだった。理屈も明快で、いつも一緒にいる相手は、あなたと同じ情報の池を泳いでいる。新しい情報は、その池の外から来るしかない。
ただし、これは観察である。仕事をくれた相手が弱い紐帯だったからといって、弱い紐帯を増やせば仕事が増えるとは限らない。この差は50年間、埋まらなかった。
2,000万人の実験:効いたのは、中くらいの弱さだった
埋めたのはラージクマール、サンジャック、ボジノフ、ブリニョルフソン、アラルが2022年にサイエンス誌で報告した研究である。
彼らが使ったのは、職業向けの交流サービスにある「知り合いかもしれない人」の推薦機能だった。この推薦アルゴリズムを無作為に振り分けて、ある集団には共通の知人が少ない相手——つまり弱い紐帯——を多めに、別の集団には少なめに出す。5年間、2,000万人を超える利用者を対象に、およそ20億本の新しい紐帯が生まれ、7,000万件を超える求職応募と60万件の新規就業が観測された。人間関係の実験としては、いまのところ最大級のものだ。
結果は、直感にも1973年の観察にも、そのままは一致しなかった。職が伝わる確率は、紐帯が弱くなるほど上がっていくのではない。上がっていって、途中で頭を打ち、いちばん弱いところではまた下がる。逆さのUである。もっとも職を運んだのは、中くらいに弱い紐帯だった。
もう一つ、測り方で結論が変わることも分かった。共通の知人の数で弱さを測ると逆U字になるが、やりとりの頻度で測ると、もっとも弱い紐帯が最大の効果を持ち、もっとも強い紐帯の効果はごく小さい。つまり「弱さ」は一つの量ではない。知り合いの重なりが薄いことと、連絡が少ないことは、別の話である。
実務的な読み替えはこうなる。まったくの他人を大量に増やしても効かない。毎日会う相手を増やしても効かない。効くのは、共通の知人が数人いる程度で、連絡は頻繁ではない相手だ。同窓、前職、趣味の集まり。あなたの連絡先のなかで、いちばん放置されている層である。
集団の隙間に立つ人ほど、良いアイデアを出した
配置の価値は、仕事の情報だけではない。バートが2004年に報告した研究は、米国の大手電機企業の供給網で働く管理職673人を対象に、455人から人間関係の回答を得ている。回答率は68%だった。
測ったのは、その人の相談相手どうしがどれくらい互いにつながっているか、という量である。相談相手が全員知り合いなら、その人の網は閉じている。互いに知らない複数の集団にまたがっているなら、その人は集団の隙間をまたいでいる。
結果はこうだ。集団の隙間をまたいでいる管理職ほど、提出したアイデアの価値が高く評価され、却下されにくく、報酬・評価・昇進のいずれでも有利だった。理由は本人の才能ではないとバートは言う。意見や行動は集団の内側で似通うので、複数の集団を行き来する人は、片方では当たり前になっている話をもう片方へ運べる。当人にとっては翻訳、相手にとっては発明に見える。
この含意は、友情の側から読むとやや冷たい。居心地のいい集団に長くいるほど、あなたの網は閉じていく。閉じた網は安心を供給するが、新しい情報は供給しない。
つながりの組成は、次の世代の所得と結びついている
もっと大きな縮尺の証拠もある。チェティらが2022年にネイチャー誌で発表した2本の論文は、米国の25歳から44歳のフェイスブック利用者7,220万人と、そのあいだの210億本の友人関係を解析した。
1本目が測ったのは、経済的つながり——低所得層の人が高所得層の人とどれくらい友人になっているか——である。この量と、その地域で育った子どもの上方移動、つまり貧しい家庭に生まれた子どもが大人になってどれくらい所得を得るかとの相関は、郡の単位で0.65だった。著者らの推計では、低所得の親のもとに生まれた子どもが、平均的な高所得家庭の子どもと同じくらい経済的つながりの豊かな郡で育った場合、成人後の所得は平均で20%高くなる。
ここで一つ、正直に断っておく必要がある。これは地域の統計であって、あなた個人についての因果ではない。友人の所得構成を変えれば自分の収入が2割上がる、という話ではまったくない。読み取れるのはもっと穏当なことだ——誰と誰がつながっているかという配置は、個人の努力とは別の層で、はっきりした結果と結びついている。
つながらない理由は、機会と選好で半々だった
2本目は、その先を分解した。なぜ低所得層の人は高所得層の友人が少ないのか。理由は二つに分かれる。そもそも出会っていないのか、出会っても友人にならないのか。
7,030万人のデータで分解すると、この二つはおおよそ半々だった。接触の機会の不足がおよそ半分、出会っても友人になりにくいという偏りが残り半分である。地域差の説明としては接触機会のほうが大きく、郵便番号のあいだの経済的つながりの差の73%は接触機会の差、16%は友人選びの偏りの差、11%はどこで友人ができるかの差だった。
面白いのは、この偏りが場所によって違うことだ。友人選びの偏りは宗教的な集まりでもっとも小さく、近隣でもっとも大きい。同じ人が同じように居合わせても、集まりの性質によって、そこから友人が生まれる確率が変わる。
個人の側に翻訳するとこうなる。新しい層とつながりたいなら、まず出会う場を変える。ただしそれで済むのは半分だけで、残り半分は、出会ったあとに自分が誰を選んでいるかの問題である。
数を数える話は、ここでは一行で済ませる
人脈の話には、必ず数の話がついてくる。上限は150人だという有名な数字である。
この棚では前に一度扱ったので繰り返さない。値切りの結論だけ借りておく。リンデンフォース、ヴァーテル、リンドが2021年に行った再計算では、推定の95%信頼区間は4〜520人まで広がった。区間がこれだけ広い以上、ひとつの数を特定するのは無益である、というのが著者たちの結論である。上限を150人に固定して交友関係を管理するのは、幅520人の物差しで採寸するようなものだ。
もう一つ、自分の網を数えるときに知っておくといい歪みがある。フェルドが1991年に示したことで、あなたの友人は平均して、あなたより友人が多い。これは統計上ほぼ必ずそうなる。友人が多い人は、多くの人の友人リストに載るので、数え上げのときに何度も現れるからだ。実際に使われた高校の交友データでは、146人のうち80人、55%が「自分の友人たちの平均より友人が少ない」側に落ちた。逆側は41人、28%である。
つまり、自分の交友関係が人より貧しく見えるのは、たいていの場合、算数のせいである。
時間・変化:紐帯は放置すると、別の種類の紐帯になる
前の単位までで見たとおり、接触が減れば情緒的な親しさは減衰する。ここに配置の話を重ねると、ひとつの動きが見える。強い紐帯は、放置されると弱い紐帯になる。そして弱い紐帯は、さらに放置されると、ただの記憶になる。
面白いのは、その途中の状態がもっとも役に立つという点だ。中くらいに弱い紐帯とは、かつて強かったものが薄くなった状態か、これから濃くなるかもしれない状態のどちらかである。つまり管理の対象は、いま濃い関係ではなく、薄くなりつつある関係のほうだ。年に一度の連絡は、感傷ではなく整備にあたる。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるのは、交友関係を人数で管理する発想である。数える対象を間違えると、増やす方向も間違える。もう一つは、居心地で相手を選び続けること。閉じた網は快適だが、入ってくる情報は減り続ける。
助けるのは、自分の連絡先を集団ごとに束ねてみることだ。同じ束のなかの人たちが互いに知り合いなら、その束は一つの情報源としか数えられない。束が3つしかないなら、あなたの情報源は3つである。次に、束と束のあいだに自分が立っている箇所を探す。そこが、あなたがいちばん交換価値を持っている場所だ。
標本の偏りも断っておく。ここで引いた大規模研究は、米国の特定のサービスの利用者に大きく依存しており、企業の研究は米国の1社の管理職を対象にしている。1973年の観察にいたっては54人で、しかも尋ねられたのは、実際に仕事にたどり着いた人だけである。同じように弱い紐帯を持っていて、何も運ばれてこなかった人は、この54人のなかに一人もいない。2,000万人の実験にしても、舞台は職業向けの交流サービスの上であり、そこに登録している人と、登録していない人では、そもそも紐帯の作られ方が違う。郡の単位で0.65という相関も、住んでいる場所ごとに集計された数字であって、あなたの連絡先の組成についての予測ではない。配置が効くという向きは繰り返し確認されているが、数値そのものを自分の環境に持ち込む必要はない。
最初の一歩は10分で終わる。連絡先を出会った文脈ごとの束に分け、束がいくつあるかを数える。そのうえで、束と束のあいだが切れている箇所を1つだけ特定し、そこに立てる相手の名前を書く。今日はそこまででいい。連絡は明日でも間に合う。
次の単位は、この棚の最後にあたる。ここまで積み上げてきた16の要素を、長い時間の側から見直す。
- Granovetter 1973(American Journal of Sociology 78:1360-1380):人づてに仕事を見つけた人のうち、その相手によく会っていたのは16.7%、ときどきが55.6%、めったに会わないが27.8%(N=54)。ただしこれは観察であり、弱い紐帯を増やせば仕事が増えるという因果ではない
- Rajkumar et al. 2022(Science):職業向け交流サービスの推薦アルゴリズムを無作為に振り分ける実験。5年・2,000万人超・約20億本の新規紐帯・7,000万件超の求職応募・60万件の新規就業を観測した
- 同実験の中心的な結果:職の伝わりやすさは紐帯の弱さに対して逆U字を描き、もっとも効いたのは中くらいに弱い紐帯だった。共通の知人の数で弱さを測ると逆U字、やりとりの頻度で測るともっとも弱い紐帯が最大——「弱さ」は一つの量ではない
- Burt 2004(American Journal of Sociology 110:349-399):米国大手電機企業の供給網の管理職673人のうち455人が回答(68%)。相談相手どうしのつながりが薄い人、つまり複数の集団の隙間をまたぐ人ほど、アイデアが高く評価され却下されにくく、報酬・評価・昇進で有利だった
- Chetty et al. 2022(Nature, Social capital I):25-44歳のフェイスブック利用者7,220万人・210億本の友人関係。低所得層と高所得層の友人関係の量と上方移動の郡単位の相関は0.65で、低所得家庭の子どもが平均的な高所得家庭並みの経済的つながりのある郡で育てば成人後の所得は平均20%高いと推計された。ただしこれは地域の統計であって個人の因果ではない
- Chetty et al. 2022(Nature, Social capital II、7,030万人):低所得層に高所得層の友人が少ない理由は、接触機会の不足がおよそ半分、出会っても友人になりにくい偏りが残り半分。郵便番号間の差では接触機会が73%、友人選びの偏りが16%、どこで友人ができるかが11%。偏りは宗教的な集まりで最小、近隣で最大
- 数を数える話は値切っておく。Lindenfors, Wartel & Lind 2021(Biology Letters 17:20210158)の再計算では、推定の95%信頼区間は4〜520人まで広がり、著者らはひとつの数を特定することは無益だと結論した。また Feld 1991(AJS 96:1464-1477)が示したとおり、あなたの友人は平均してあなたより友人が多い。高校の交友データでは146人中80人(55%)が自分の友人の平均より友人が少ない側に落ちた
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 弱いつながりが強いのだから、知り合いは多いほどいい | 2,000万人超を対象にした無作為の実験では、職の伝わりやすさは紐帯の弱さに対して逆U字を描いた。もっとも効いたのは中くらいに弱い紐帯で、いちばん弱いところではまた下がる。増やすべきは数ではなく、中間の層である |
| 自分は友人が少ないほうだ | 友人の多い人は多くの人の友人リストに載るので、数え上げると何度も現れる。その結果、ほとんどの人の友人は平均して本人より友人が多くなる。実データでは146人中80人(55%)が自分の友人の平均より少ない側に落ちた。見劣りの正体は、たいてい算数である |
| つながる相手を変えたければ、出会う場所を変えればいい | 7,030万人の分解では、接触機会の不足で説明できるのはおよそ半分だけだった。残り半分は、出会ったあとに誰を友人に選ぶかという偏りである。しかもこの偏りは、宗教的な集まりでもっとも小さく近隣でもっとも大きい。場の性質そのものが選び方を変える |
配置の話を突き詰めると、居心地のいい集団に長居するのは損だ、という結論に着地する。もちろん誰もそんな理由で友人を選ばない。年に一度しか連絡しない相手が、いちばん役に立つ層である——という事実も、あまり口にしないほうがいい類の知見だろう。せめてもの救いは、その層の整備にかかる費用が、1通の短い連絡だという点である。人脈という言葉が嫌いな人にも、これくらいなら耐えられる。
Q1. Granovetter(1973)では、人づてに仕事を見つけた人のうち、その相手によく会っていたのは____%、ときどきが____%、めったに会わなかったが____%だった(N = ____)。穴埋め
Q2. Rajkumar ら(2022)の大規模実験は、紐帯の弱さと職の伝わりやすさの関係についてどんな形を見つけたか。また、測り方によって結論がどう変わったか。一問一答
Q3. Burt(2004)が管理職673人(回答455人)で見つけたのはどれか。選択
Q4. Chetty ら(2022)の2本目の論文が示した、郵便番号のあいだの経済的つながりの差を説明する3要因を、寄与の大きい順に並べよ。(友人選びの偏り/どこで友人ができるか/接触の機会)並べ替え
Q5. Feld(1991)が示した「あなたの友人は平均してあなたより友人が多い」という現象の理由と、本文が挙げた実データの数字を答えよ。一問一答
連絡先を上から順に見て、思い浮かぶ相手を出会った文脈ごとの束に分ける(前職、いまの職場、学生時代、趣味、地域など)。同じ束の人たちが互いに知り合いなら、その束は一つの情報源として数える。束がいくつあるかを書く。次に、束と束を見比べて、あいだがまったくつながっていない組み合わせを1つ選ぶ。最後に、その切れ目に立てそうな相手——両方の束に少しだけ接している人、または共通の知人が数人いて半年以上連絡していない人——を1人だけ名前で挙げる。連絡は送らなくてよい。今日の作業は、地図を描くところまでで終わりである。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
あなたの実験(N=1)を始める → プロジェクトに追加(記録機能は準備中)
- Granovetter M.S. (1973) 'The Strength of Weak Ties', American Journal of Sociology 78(6):1360-1380 — smg.media.mit.edu
- Rajkumar K., Saint-Jacques G., Bojinov I., Brynjolfsson E., Aral S. (2022) 'A causal test of the strength of weak ties', Science 377(6612):1304-1310 — www.science.org
- Burt R.S. (2004) 'Structural Holes and Good Ideas', American Journal of Sociology 110(2):349-399 — snap.stanford.edu
- Chetty R., Jackson M.O., Kuchler T., Stroebel J. et al. (2022) 'Social capital I: measurement and associations with economic mobility', Nature 608:108-121 — www.nature.com
- Chetty R., Jackson M.O., Kuchler T., Stroebel J. et al. (2022) 'Social capital II: determinants of economic connectedness', Nature 608:122-134 — www.nature.com
- Lindenfors P., Wartel A., Lind J. (2021) 'Dunbar's number deconstructed', Biology Letters 17(5):20210158 — www.iffs.se
- Feld S.L. (1991) 'Why Your Friends Have More Friends Than You Do', American Journal of Sociology 96(6):1464-1477 — www.cs.umd.edu