ありのままを受け入れる、は半分だけ正しい
家族の受容についての研究で、いちばん硬い発見はこうだ。拒絶されたと感じて育った人は、世界中どこでも同じ7つの傾向を示す。そしていちばん不都合な発見はこうだ。親が受容したと申告する量と、子が受容されたと感じる量は、別の変数である。研究が測ってきたのは、後者だけだ。
前の単位から:器の四つが終わり、構えの六つに入る
休息の単位で扱ったのは、家が回復の場になるかどうかは愛情ではなく、疲労の持ち込み方と心理的な切り替えの設計で決まる、という話だった。これで生活の器の四つ——経済、安全、衛生、休息——が揃ったことになる。ここからの六単位は、器の上に載るもの、つまり毎日の関わりの土台になる構えを扱う。
最初は受容である。器がどれだけ整っていても、関わりの基調が拒絶なら、家は設備の良い他人の宿になる。逆に言えば、この単位から先は、家の広さにも収入にも依存しない。構えは無料である。無料であることと簡単であることは、例によって別の話だが。
受容とは、温度の話である
人類学者のロナルド・ローナーは、1960年代から60年近く、一つの問いを追い続けた。愛されて育つことと拒絶されて育つことは、人をどう変えるのか。彼の親の受容と拒絶の理論は、のちに対人関係全般へ拡張されたが、核はシンプルで、あらゆる養育は温かさの次元という一本の連続体の上に置ける、というものだ。
一方の端が受容。言葉や行動で表現される温かさ、愛情、関心である。抱きしめる文化もあれば、弁当に好物を入れる文化もある。表現形は文化ごとに違っても、受け取る側が愛されていると感じるかどうかは共通に測れる。
もう一方の端が拒絶で、これには四つの顔がある。冷たさと無愛情。敵意と攻撃。無関心と無視。そして四つ目——未分化の拒絶と呼ばれる、いちばん見つけにくい顔だ。明確な冷たさも敵意も無視も指させないのに、本人は愛されていないと感じている状態を指す。家庭の中の拒絶は、殴る声で来るとは限らない。予定を忘れられ続けること、話が最後まで聞かれないこと、成果の時だけ温度が上がることでも来る。
この理論の設計で決定的なのは、測っているのが知覚された受容だという点だ。親が与えたつもりの量ではなく、本人が受け取ったと感じている量。この二つがずれるからこそ、研究の道具になる。
60年分の証拠は、方向については一致している
証拠の規模を並べる。ハレクとローナーが2002年に発表したメタ分析は43研究を統合し、知覚された受容と拒絶が心理的適応と関連するという予測が、調べた文化で例外なく成り立つことを示した。この結果を偶然で覆すには、効果ゼロの未発表研究が3,433本必要だと算出されている。
2012年の更新版は66研究・19,511人・5大陸22か国に広がった。関連はどの文化でも維持され、しかも児童では、父親の受容と適応の関連が母親のそれより強い場合があることが示された。受容の研究は長らく母親の研究だったから、これは静かに重い発見である。家庭で温度を担当するのは母親、という分業は、データの支持を失っている。
児童だけに絞った2013年のメタ分析は、30研究・12,087人・16か国で、母父それぞれの温かさが子の適応と関連することを標準化された質問紙で確認した。
では、拒絶されたと感じて育つと何が起きるのか。ローナーが2004年にまとめた受容と拒絶の症候群は、文化を問わず拒絶の知覚と同時に現れやすい7つの人格傾向を挙げる。敵意と攻撃性。依存、または防衛的な独立。負の自己評価。自己適格感の低さ。情緒的な応答のしにくさ。情緒の不安定さ。そして世界は信用ならない場所だという負の世界観である。
断っておくが、これらは相関研究の束であり、多くは自己報告に基づく。拒絶が7つを引き起こしたのか、別の要因が両方を作ったのかを、この設計だけでは切り分けられない。それでも、22か国で方向が揃う養育変数は他にほとんどない。方向は信じてよい数字である。
ありのままを受け入れれば子は育つ、の半分は正しくない
さて、ここからが値切りだ。受容の証拠が積み上がるほど、世間では一つの標語が育った。ありのままを受け入れさえすれば、人は健やかに育つ。この受容万能論は、二つの誤りの合成でできている。
誤りの一つ目は、受容と要求の混同である。発達心理学者のダイアナ・バウムリンドは1966年に、養育を三つの型に整理した。要求ばかりで温度が低い権威主義型。温度は高いが要求を放棄した許容型。そして温かさと明確な要求を両立させる権威型である。のちの研究者はこれを二本の軸に開いた。応答性の軸、つまり受容の温度と、要求の軸、つまり行動の基準をどれだけ求めるかは、独立に動かせる別の変数なのだ。ありのままを受け入れるという標語は、しばしば温度を上げる話ではなく要求を降ろす話として運用される。それはバウムリンドの座標では受容ではなく、許容型への滑落である。
誤りの二つ目は、効果量の誇張である。ピンクヴァルトが2017年に発表したメタ分析は、1,435研究を統合して養育と子の問題行動の関連を測った。結果はこうだ。温かさや権威型の養育と問題行動の負の関連は、ごく小さいか小さい。いちばん強い関連は、受容の側ではなく毒の側——厳しい統制と、罪悪感や愛情の出し入れで縛る心理的統制——にあった。しかも関連の多くは双方向で、子の問題行動が親の養育を硬化させる経路も同時に確認されている。温かければ育つ、のではない。冷たさと縛りが壊す、のほうが正確に近い。
つまり受容は、建物ではなく土台である。土台なしに建てた建物は傾くが、土台だけ眺めていても建物は建たない。受容の上に、応答があり、要求の交渉があり、この棚の残りの単位が載る。
受容は、行動の是認ではなく存在の承認である
実務に降ろすと、受容の技術は一つの区別に尽きる。存在への言葉と、行動への言葉を分けることだ。
あなたがいてくれてよかった、と、その行動は困る、は矛盾しない。むしろ受容が先に伝わっている関係ほど、行動の交渉は通りやすくなる。逆に、存在と行動を混ぜた批判——だからお前はだめなんだ——は、行動を直させたいのに存在を攻撃してしまう、家庭内で最も燃費の悪い言語形式である。
この区別は子育てに限らない。老いた親の物忘れを叱るとき、責めているのは行動か存在か。同居のパートナーの家事の流儀を直すとき、きょうだいの人生の選択に口を出すとき、宛先はどちらか。
時間・変化:受け取られた量だけが、積み立てられる
受容は一度の宣言では成立しない。知覚された受容は日々の小さな信号の累積で、しかも積み立ての通帳は相手側にある。成人を対象にした研究群が扱っているのは、思い出された受容——何十年も前の親の温度の記憶——が現在の適応と関連するという現象だ。つまり受容は、その場で消費されて終わらず、記憶として何十年も運用され続ける。
形は年齢で変わる。幼児期の受容は身体接触と即時の温かさで届く。思春期には接触が減り、承認と自律の尊重が主通貨になる。測られていないようで、温度は測られ続けている。成人どうし——老親と、配偶者と、離れて暮らすきょうだいと——の受容は、関心と記憶で届く。前に話したことを覚えているか。それが大人の抱擁である。
どの年齢でも変わらないのは、送った量ではなく届いた量だけが記帳されることだ。そして送金記録と着金記録は、照合しない限り一致しているかどうか分からない。
妨げるもの、助けるもの、最初の一歩
妨げるものの筆頭は、条件付きの温度である。成果が出た時だけ温かくなる家は、受容を報酬に変えてしまう。これは心理的統制の入り口で、ピンクヴァルトのメタ分析で最も悪い側に座っていた変数の親戚だ。二つ目は、言わなくても伝わっているという確信。知覚された受容だけが効く以上、伝わっているかは本人の中を覗くまで分からない。三つ目は、受容と我慢の混同である。不満を飲み込み続けるのは受容ではない。それは未分化の拒絶——指させる敵意はないのに冷えていく状態——の製造工程である。
標本の断りも置いておく。この分野の数字は自己報告の質問紙と横断デザインに大きく依存し、標本は歴史的に欧米・中流・母子の組に偏ってきた。2012年のメタ分析が22か国へ広げたのは前進だが、質問紙が測るのは記憶と知覚であって、家庭の実況中継ではない。方向は信用してよいが、数字を精密機器の目盛りのように扱わないこと。
助けるのは、順序である。行動の要求を伝える必要があるときは、存在への言葉を先に置く。順序を変えるだけで、同じ内容が別の宛先に届く。
最初の一歩は15分。家族を一人選び、紙を二列に分けて、変わってほしいことと、そのままでいてほしいことを書き分ける。多くの人は前者が先に埋まり、後者で手が止まる。その手が止まった時間こそ、この単位の診断結果である。書けたら、そのままでいてほしいことを一つ、本人に伝える。
次の単位は 038「応答」——受容が温度なら、応答は速度である。働きかけに気づき、読み取り、間に合うという一連の動作が、発達研究でどこまで効き、どこから効かないのか。r=.24という有名な数字を検分する。
- Rohnerの親の受容と拒絶の理論は、養育を温かさの次元という一本の連続体で捉える。拒絶には冷たさと無愛情・敵意と攻撃・無関心と無視・未分化の拒絶の4形態があり、測定対象は親の自己申告ではなく子が知覚した受容である(Rohner 2004, American Psychologist)
- Khaleque & Rohner 2002(Journal of Marriage and Family)は43研究のメタ分析で、知覚された受容と拒絶が心理的適応と例外なく関連することを示した。この結果を覆すには効果ゼロの未発表研究が3,433本必要と算出された
- Khaleque & Rohner 2012(Journal of Cross-Cultural Psychology)は66研究・19,511人・5大陸22か国に更新し、関連がどの文化でも維持されること、児童では父親の受容の効果が母親より強い場合があることを示した
- Khaleque 2013(Journal of Child and Family Studies)は児童に絞った30研究・12,087人・16か国のメタ分析で、母父それぞれの温かさが子の適応および人格傾向と関連することを標準化質問紙で確認した
- Rohnerの受容と拒絶の症候群では、拒絶の知覚は文化を問わず7つの傾向——敵意と攻撃性・依存または防衛的独立・負の自己評価・自己適格感の低さ・情緒的無応答性・情緒不安定・負の世界観——と同時に現れやすい
- Baumrind 1966(Child Development)の類型が示す通り、応答性(受容の温度)と要求(行動の基準)は独立の軸である。ありのまま論はしばしば要求を降ろす話として運用され、それは受容ではなく許容型への滑落になる
- Pinquart 2017(Developmental Psychology)の1,435研究のメタ分析では、温かさと問題行動の負の関連は小さく、最も強い関連は厳しい統制と心理的統制の側にあった。関連の多くは双方向で、子の行動が親の養育を硬化させる経路も確認された
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| ありのままを受け入れさえすれば、子どもも家族も健やかに育つ | 受容の温度と行動への要求は独立の軸で、要求を降ろすことは受容ではなく許容型への滑落になる。1,435研究のメタ分析では温かさ単独の効果は小さく、最も強く効くのは厳しい統制と心理的統制という毒の除去だった。受容は必要な土台だが、建物そのものではない |
| 受容するとは、相手の行動をすべて許すことだ | Baumrindの類型以来、温かさと明確な要求を両立させる養育が最も良い結果と関連してきた。存在への承認と行動への交渉は両立するどころか、受容が先に伝わっている関係ほど行動の要求は通りやすい |
| 自分は家族を受け入れているのだから、それは相手に伝わっている | 研究が測ってきたのは知覚された受容、つまり相手が受け取ったと感じた量だけである。送った量と届いた量は別の帳簿に記帳され、照合しなければずれは見えない。未分化の拒絶——指させる敵意がないのに愛されていないと感じる状態——はこのずれから生まれる |
受容をめぐるいちばんの皮肉は、帳簿の在り処である。親は送金記録で愛を測り、子は着金記録で愛を測る。二つの帳簿は監査されないまま何十年も別々に記帳され、研究に提出されるのは着金側だけだ。あんなに愛したのに、と、愛された覚えがない、が同じ食卓で両立するのは、どちらかが嘘をついているからではない。口座が最初から別だったからである。しかも通知は来ない。残高照会は、こちらから行くしかない。
Q1. Khaleque & Rohner の2012年のメタ分析は____研究・____人・5大陸____か国を統合し、知覚された親の受容と心理的適応の関連がすべての文化で確認された。児童では____の受容の効果が母親より強い場合があった。穴埋め
Q2. 本文で説明された、未分化の拒絶とはどのような状態か。選択
Q3. ありのまま論(受容万能論)が合成している二つの誤りを、本文が挙げた研究名とともに答えよ。一問一答
Q4. Rohnerの受容と拒絶の症候群が挙げる、拒絶の知覚と同時に現れやすい7つの傾向のうち5つ以上を挙げよ。一問一答
Q5. 本文の図解で、送った受容が届いた受容に変わるまでに通る経路を正しい順に並べよ。(相手の解釈/本人の表出(表現の形)/相手の知覚への記帳/タイミング)並べ替え
家族(同居していなくてもよい。親・きょうだい・パートナー・子)を一人選び、紙を二列に分けて、左に変わってほしいこと、右にそのままでいてほしいことを15分で書き分ける。右列が3つ未満で手が止まったら、その事実も記録する。書けたら右列から一つ選び、今日中に本人へ伝える(口頭でもメッセージでもよい)。家族と疎遠な場合の代替:過去に自分を受け入れてくれた人を一人思い出して同じ二列を作り、右列の一つを自分自身への言葉に書き換えて声に出す。
——とはいえ、その“正しい用法・用量”は、まだ誰も知らない。ここまでの研究に、あなたのデータは1件も入っていないからだ。平均は地図にすぎない。自分の“いい具合”は、試して探すしかない。
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- Rohner R.P. (2004) 'The Parental “Acceptance-Rejection Syndrome”: Universal Correlates of Perceived Rejection', American Psychologist 59(8):830-840 — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Khaleque A., Rohner R.P. (2002) 'Perceived Parental Acceptance-Rejection and Psychological Adjustment: A Meta-Analysis of Cross-Cultural and Intracultural Studies', Journal of Marriage and Family 64(1):54-64 — onlinelibrary.wiley.com
- Khaleque A., Rohner R.P. (2012) 'Pancultural Associations Between Perceived Parental Acceptance and Psychological Adjustment of Children and Adults: A Meta-Analytic Review of Worldwide Research', Journal of Cross-Cultural Psychology 43(5):784-800 — journals.sagepub.com
- Khaleque A. (2013) 'Perceived Parental Warmth, and Children's Psychological Adjustment, and Personality Dispositions: A Meta-analysis', Journal of Child and Family Studies 22(2):297-306 — link.springer.com
- Baumrind D. (1966) 'Effects of Authoritative Parental Control on Child Behavior', Child Development 37(4):887-907 — www.semanticscholar.org
- Pinquart M. (2017) 'Associations of Parenting Dimensions and Styles With Externalizing Problems of Children and Adolescents: An Updated Meta-Analysis', Developmental Psychology 53(5):873-932 — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov